現場サービス拡充と異業種協業で挑む介護・生活支援の新展開|ウチヤマホールディングス
(株)ウチヤマホールディングス
(株)ウチヤマホールディングスは創業者内山文治前会長の志を受け継ぎながら、新体制のもとで次の成長段階へ踏み出している。介護を主力に、カラオケ、教育、買取など周辺事業を広げ、事業間シナジーのさらなる創出を進める。同グループの強みは、現場に根差した接遇力と、社会課題を事業機会へ転換する柔軟さにある。高齢化と人手不足が進むなか、介護DX、外国人材育成、シニア向けサービス、若年層需要の開拓を通じ、「幼青老の共生」を実装する経営が進んでいる。
介護DXで現場価値を向上
(株)ウチヤマホールディングス(HD)は、介護業界においてICT機器の導入とDXを積極的に推進する企業の1社である。積水化学工業(株)の見守りセンサー「アンシエル」、九州工業大学と共同開発したケア記録アプリ「FonLog」などを導入し、現場の業務効率化を進めてきた。
ただし、山本武博代表取締役社長がDXに求めるのは効率化そのものではない。「業務効率化はあくまでも手段であり、生み出された時間を入居者の喜びや過ごしやすさという、より深いサービスの提供へとつなげていくことに本当の意義がある」と強調する。テクノロジーを現場に持ち込む際も、メーカーの技術をより実用性の高いものへと磨き上げ、職員にとっても入居者にとっても真に役立つかたちを追求し続ける姿勢が同社の根幹にある。
その起点となる拠点として、昨年7月に次世代ケア研究ラボ「INOVEL BASE(イノベルベース)」(北九州市小倉北区)を開設した。介護業界におけるDXの推進および地域連携による課題解決を目的とした同施設では、ICT・福祉機器の導入支援や先進的なケアの研究・実証を行いながら、地域住民との接点も活かした取り組みを展開している。2040年問題を目前に控えた今、介護現場における深刻な人手不足と業務負担の増大という構造的課題に対して、新たなソリューションの開発を推進している。同グループではICT機器導入のノウハウをパッケージ化し、同業他社へのコンサルティングも行うなど、介護業界全体の持続可能性を高める取り組みとしても注目される。
業界全体の底上げという観点から、山本社長は(一社)全国介護付きホーム協会の常任理事として、小規模事業者でもテクノロジーを導入しやすい環境整備や介護従事者の処遇改善を政府に訴え続けている。
人材確保においても多面的な取り組みを重ねる。インドネシア人介護人材を積極的に活用し、リーダー候補の採用を通じて現場に馴染みやすい環境を整えると同時に、同業者への紹介実績も着実に積み上げている。一方、職員の定着という観点では、「離職防止プロジェクト」を推進しており、上長と入社後間もない職員との定期面談を通じて職場環境の改善に取り組んでいる。こうした地道な施策の積み重ねが、安定した介護サービスの提供を下支えしている。
施設づくりの面でも新たな取り組みが始まろうとしている。デザインの専門性を持つ職員の知見を生かし、認知症ケアに科学的根拠に基づく環境デザインを取り入れていく構想だ。認知症のほうが認識しやすいサインや、不安を感じにくい色彩設計など、空間そのものがケアの一部となる施設づくりを目指しており、入居者が「ここで良かった」と感じられる場所の実現に向けた取り組みとして期待される。
多角化と協業を加速
「コロッケ倶楽部」を展開するカラオケ事業では、幅広い客層の支持を得るべく、利用しやすさと体験価値の両立を図っている。飲食物の持ち込みを可能にすることで来店ハードルを下げる一方、有名店とのコラボキャンペーンをはじめフード・ドリンクメニューの充実により、専門店でしか味わえない体験を提供することで来店客数の増加につなげている。
その一環として、若年層に向けた「推し活」需要の取り込みにも取り組む。小倉駅近くの「あるあるCity店」では、青・赤・黒・ピンクの各色で部屋全体を統一した専用ルームを導入した。壁面をマグネット対応にして写真やポスターを傷つけずに飾れるほか、部屋の色に合わせたドリンクも提供するなど、利用者が思い思いの空間をつくり上げられる環境を整えている。
また、カラオケ店舗のスペースを活用し、「買取専門店 おたからや」のフランチャイズ展開を開始した。パートナー事業として位置づけるこの取り組みは、不動産コストを抑えながら、シニア層の生前整理ニーズにも応えるものだ。将来的には惣菜・食品の持ち帰り販売も検討しており、昼間にカラオケで過ごし夕食を買って帰るという生活動線をつくることは、シニアの外出機会や地域交流の拡大にもつながる。カラオケ店舗を「地域の居場所」へと進化させるこの発想は、介護事業との親和性も高い。
新規事業開発への取り組みも加速している。24年にバリュークリエイション部を設置したほか、傘下の(株)さわやか倶楽部がCIC(ケンブリッジ・イノベーション・センター) Fukuoka(福岡市中央区)に入居し、異業種や大学との協業の可能性を探っている。
同グループは今年、創業者である内山文治前代表取締役会長の逝去という大きな節目を迎えた。内山前会長が提唱した理念「幼青老の共生」は、子ども、若者、高齢者が支え合い生き生きと暮らせる社会を目指す考え方であり、同グループの事業展開の根幹をなしている。
不動産、カラオケ、飲食、介護、人材、教育へと広げてきた歩みは単なる多角化ではなく、その時々の社会課題を事業によって解決しようとする意志の連続である。山本社長のもと新体制で次の成長段階へと歩みを進める同グループが、今後どのような事業モデルを生み出していくか注目される。
【茅野雅弘】
<COMPANY INFORMATION>
代 表:山本武博
所在地:北九州市小倉北区熊本2-10-10
設 立:2006年10月
資本金:22億2,293万円
TEL:093-551-0002
URL:https://www.uchiyama-gr.jp








