2019年の注目経営者、安田隆夫パンパシHDの創業会長兼最高顧問~食を軸にした「環太平洋の安売り王」になる!(前)
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(株)ドンキホーテホールディングスは2019年1月16日、臨時株主総会を開催し、(株)パン・パシフィック・インターナショナルホールディングスへの社名変更と、安田隆夫創業会長兼最高顧問の取締役復帰を決議した。効力は2月1日から。社名から「ドンキ」が消えた。狙いは何か。東南アジアに食を基軸にした「驚安の殿堂」を築くことにある。
シンガポールに移住
流通業界の「風雲児」と呼ばれる安田隆夫氏。商品をうず高く積み上げる「圧縮陳列」などの売り場づくりで知られるドンキホーテホールディングスの創業者だ。
安田氏は「かねてから65歳までに引退すると決めていた」として、15年6月に会長兼CEO(最高経営責任者)を退任。社長・大原孝治氏にCEO職も譲り、グループ会社のすべての取締役を退いた。
安田氏はシンガポールに移住。17年3月、シンガポールのセントーサ島の超高級一軒家を17億円で購入したと報じられた。名義はシンガポール人の妻だ。
米経済誌『フォーブス』の名物ランキング「日本長者番付」(2018年版)によると、安田氏の資産額は2,460億円で22位。引退後は、優雅な晩年をお過ごしと思いきや、隠居生活に甘んじるほど枯れてはいなかった。事業家の血が騒いだようだ。
ドンキがユニファミマと提携
ドンキホーテホールディングス(以下、ドンキと略)は17年8月、ユニー・ファミリーマートホールディングス(以下、ユニファミマと略)と資本業務提携。同年11月、ドンキが総合スーパー(GMS)のユニーに40%出資、ユニーを持ち分法適用会社にした。
ドンキは18年10月、ユニファミマが保有するユニーの全株を取得すると発表。残りの60%も引き受けて、完全子会社にする。一方、ユニファミマはTOB(株式公開買い付け)でドンキ株の最大20.17%を買い付け、持ち分法適用会社にする。
ユニファミマは11月7日から12月9日まで、ドンキ株を1株6,600円でTOBを実施した。だが、ドンキの株価は期間を通じて買い付け価格を上回り続けた。投資家は株式市場より安い価格で手放さなかった。ユニファミマによるドンキのM&A(合併・買収)は仕切り直しだ。
M&Aの仕掛人
ドンキがユニーを買収する見返りに、ドンキがユニファミマの傘下に入るというM&Aは、ドンキが提案したものだ。
ユニファミマにとっても渡りに船だった。親会社の伊藤忠商事は不振が続くGMSを切り離したがっていたからだ。ユニファミマはドンキにユニーを売却して再建を委ね、ユニファミマがドンキ株を最大20.17%握ることで合意した。ドンキによるユニーの買収総額は有利子負債を含め約1,800億円。ユニファミマ側は出資総額を2,119億円と計画していたが、TOBが不調に終わったことで、出資額が増える可能性がある。
この買収劇には仕掛け人がいる。
〈実は、今回の交渉で中心的な役割を担ったのは、代表権がなく取締役でもない「創業会長兼最高顧問」という肩書きの創業者、安田隆夫氏。交渉関係者は「ユニファミマの高柳浩二社長と安田氏の対話なくして実現しなかった」と話す。
(中略)
安田氏は長崎屋買収の際にも豪腕を発揮した。長崎屋の買収先に関してはシンガポールのファンド、CCMPキャピタル・アジアが買収することでほぼ合意していた。そこを長崎屋の大株主、キヨウデンの橋本浩会長(当時)への直接交渉などを通じ、「わずかな期間にひっくり返した」(関係者)。〉
(「日経MJ」2018年10月15日付)
新社名に「環太平洋」の意味を込めた
ドンキは19年2月1日に社名を「環太平洋」の意味を込めた「パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス」(以下、パンパシHDと略)に変更する。併せて、創業会長兼最高顧問の安田隆夫氏が非常勤取締役に就くことも決めた。
19年1月16日に開催した臨時株主総会で、パンパシHDへの社名変更と安田氏の取締役就任を正式に決議した。
安田氏は、経営引退後も、ドンキの海外展開を指揮していた。シンガポールに本社を置くドンキの海外事業持ち株会社パンパシHDのトップに就いていたのだ。
ドンキ本体をパンパシHDに社名を変更し、安田氏はドンキ本体に復帰する。ユニーの完全子会社と同時に、東南アジアなどの海外展開を進める構えだ。
アジア初「ドンドンドンキ」をオープン
パンパシHDは17年12月1日、シンガポールで旗艦店「DON DON DONKI(ドンドンドンキ)」をオープンした。アジア初の海外店だ。オープンに先立って報道陣に公開された。共同通信(17年11月29日付)はこう報じた。
〈ドンキホーテHDの創業者で2015年にシンガポールに移住、PPI(パン・パシフィック・インターナショナル)会長などを務める安田隆夫氏は「シンガポールで日本の商品の値段があまりに高いことにびっくりした」と指摘。品質の良い日本の品物を低価格で提供していきたいとアピールした。
旗艦店はシンガポール中心部の商業施設内に置かれ、広さは約1400m2。シンガポールで人気がある北海道産食品の販売コーナーや飲食スペースを設けた。〉
(つづく)
【森村 和男】
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