元気な高齢者に提供する「シニアマンション」 新たなライフスタイル事業を展開
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西日本鉄道(株)
西鉄グループではシニア向けビジネスとして従来の高齢者向け介護サービス施設とは一線を画した、元気な富裕層の高齢者をターゲットに、快適さと利便性を最大限に訴求した「シニアマンション」事業を展開している。
健常な富裕高齢者向けの住宅事業として
「サンカルナ」は西日本鉄道(株)グループの西鉄ケアサービス(株)が運営する介護付き有料老人ホーム。「高齢化社会が進むなか、医療・介護サービスや多様な過ごし方ができる施設へのニーズがますます高まっているなかで、安心・快適でゆとりのある、いきいきしたアクティブシニアライフの創造を目指す」として、高齢者向けのシニアマンション事業の拡大に取り組んでいる。
2003年に糟屋郡志免町に「サンカルナ博多の森」をオープンしたのを皮切りに、「サンカルナ」「サンカルナ テラス」の2つのブランドで現在6施設・計759室を運営している。高齢者向け住宅事業参入の経緯として、「鉄道事業に関連する沿線開発のなかで、長年進めている住宅事業からの派生と時代・時流への対応」「沿線開発したニュータウンに住んでいた人が高齢になった時に、その受け皿としての位置づけ」といい、住宅事業のノウハウを生かし、収益性が見込めると判断された場所に立地している。
特長としては、富裕層で健常な高齢者を対象とした「シニアマンション」を提案するという姿勢。「いわゆる高齢者介護を軸としたサービスではなく、できるだけ介護を必要としない、元気な高齢者をターゲットにした住宅事業の1つとして捉えており、分譲マンションに住むような感覚のライフスタイルを提案することで介護事業者との差別化を図っている」としている。
高齢者に優しい利便性ある設備
具体的なサービス内容を見ると、居室は風呂、キッチン、トイレがあるマンションタイプの間取りとなっており、面積は44~91m2で1LDKと2LDKの2種類。寝室やトイレ、浴室には緊急時の呼び出しコールのほか、一定時間人の動きがなければ、施設スタッフが居室にうかがう「生活リズムセンサー」を装備。バリアフリー構造でマンションに付加価値を備えた高齢者に優しいつくりとなっている。
また、将来的に介護が必要な状況になった場合は、介護用の居室もあり、住み替えることが可能で、有事における場合も、提携する医療機関もあり、往診などにも対応。共用スペースには、食堂を始め、大浴場、プライベートダイニング、AV・スタジオルーム、フィットネス、ゲストルーム、娯楽室(麻雀)、美容室など、充実した設備・サービスが整っている。
とくに重要としているのが食事面であり、フロア内の食堂については予約不要で入居者の家族や友人も一緒に食事をすることができ、メニューは、いわゆる介護食が中心ではなく、肉、丼物、刺身など日常生活と変わらない食事を提供している。
「減塩や栄養などのバランスを考えているが、味も良く、メニューも多種多彩。若年層が食べるような、食感の高いものを提供するよう心がけており、レストラン感覚で利用していただいている」という。現在、入居者の平均年齢は80代で、ハイクラスの快適さを提供できる高齢者向け施設として入居希望者が急増しているといい、全6施設は「ほぼ満室」だとしている。
久留米に九州最大の高齢者住居施設を建設
さらなる拡大に向け、西鉄は18年3月、新たに久留米市に投資総額約68億円をかけ、「サンカルナ久留米」を建設することを発表した。地上14階建てで延床面積2万5,534.50m2、一般居室272室、介護居室34室と、九州では最大の高齢者向け住居施設だという。ホテル並みのエントランスホールや食堂施設を設置し、天然温泉を備えている。
また、各種設備機器をインターネットにつなげる「IoT」を導入している。ソニーモバイルコミュニケーションズ(株)の専用機器「FAIT(ファイト)」を用い、日常的に睡眠時間や歩行数などを記録したデータ と、定期的にスポーツセンサーとタブレットを使って行う体力・認知機能測定データを合わせた結果を基に、 AI 技術を活用し、健康維持や認知症予防に関するアドバイスが提供できるという。
さらに、久留米大学や聖マリア病院による出張講座や、久留米大学主催のイベント入居者が参加するなど、地域連携によるサービスを提供していくという。一般居室の平均的な料金は、入居一時金が約2,400万円、管理費と食費を含めた月額費用は約13万円。今年4月に着工し、20年7月には入居を開始する予定だ。
同社は「入居される方は住み替え・買い替えで来られるので、不動産部門がその仲介サポートも行っており、その売却金で入居する循環型の様相ができつつある。たとえば西鉄グループの新築の一般戸建で住まわれている若年層の家族の方が30~40年経ち高齢になった時にサンカルナに住み替えるという、空いた戸建には新たな若年層の家族が入居するというかたちで、昨今の空き家問題なども解決や、シニア事業を通じたまちづくりの活性化にもつながるものと感じている」としている。
【小山 仁】
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