2024年12月23日( 月 )

朝日新聞はどうする?!レーダー照射が喚起した対韓不信世論

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 敗戦以来、隣国(韓国)との付き合い方に悩んできた日本が、「やっぱり隣の家は当てにならない」と踏ん切りをつける瞬間になったようだ。韓国駆逐艦の火器レーダー照射問題は21日、防衛省がレーダー探知音を公開するとともに、「韓国側は事実と全く異なる主張を繰り返している」と判断して、韓国側との協議を打ち切った。

 今回の「レーダー照射問題」の核心的事実は、韓国政府の一連の対応が「友好国」と呼ぶにふさわしくない実態を露呈したということだ。
慰安婦や戦時労働者など昔のことはよく分からない現代日本人も、眼前の日本海上で繰り広げられた異例の事態には、双方の報道を検証しながら、客観的な判断を下すことができる。

 その判断結果は、韓国側の主張を「納得できない」とする回答が9割を超えた(FNN世論調査)ことで明瞭である。さらに第一野党・立憲民主党の枝野幸男代表も「明らかに我が方(日本)に理がある」(18日、鹿児島で記者団に)と述べた。政府与野党が一致した見解に立ったことになる。

 このような判断は、23日の主要紙社説でも明らかになった。
産経新聞「主張」が「韓国政府と軍は非を正直に認めて責任者を処分し、再発防止策を講じるべきだ」と主張したのは、同紙の路線からして当然だが、異例だったのは毎日新聞の社説である。

 見出しこそ「残念だが、冷却が必要だ」とおとなしいものの、その内容は韓国批判にかなり踏み込んでいる。強烈な文政権不信感を表明しているのである。

 「そもそも韓国艦は日本の排他的経済水域(EEZ)で何をしていたのか。軍艦がそこにいたのは不自然だ」
「データ照合を求めた日本側を『無礼』と断じるに至っては、冷静な協議は当面、期待できまい」
「文在寅政権は、本当に対北朝鮮の大義を日米と共有しているのか、心配になる」

 このような表現は、毎日新聞の社内世論を反映していると見られる。毎日新聞には読売新聞のような強烈なカリスマ(渡辺恒雄)支配もないし、朝日新聞のような伝統墨守の左翼思想もない。

 防衛省の「最終見解」は穏やかな表現ではあったが、内容的には隣国政府への強烈な不信表明だ。
「韓国側の対応ぶりや(略)主張が一貫しておらず信頼性にかける」
「客観的かつ中立的な事実認定が困難であるため、これ以上実務者協議を継続しても」無駄だという判断を表明したものである。
日本政府は不毛な実務協議はやめにして、国際的な情報戦略で、韓国に対処する方針のようだ。慰安婦問題などの失態から、ようやく大事な教訓を汲み取ったようである。

 レーダー照射問題の日韓主張を見聞しながら、日本国民が実感したのは、韓国政府はクロをシロと言いくるめるのだ、という冷厳な事実であった。眼前で起きた事象には、歴史問題と違い、国民1人ひとりの鑑識能力が働いたのだ。

 韓国側で、政府権力とメディアの「共犯関係」が露呈したのも、今回の特徴である。「日本の要求は無礼だ」。噴飯もののセリフは、韓国国防省の女性報道官・崔賢洙から発せられた。彼女は文在寅政権になって、「国民日報」記者から抜擢された人物だ。韓国では記者が政府官僚に豹変することが少なくない。「無礼だ」発言は、流石にやりすぎである。彼女は日韓メディア史に悪名を残すことになった。

 22日現在、レーダー照射問題で社説を掲載していない朝日新聞は、どういう社内事情があるのだろうか。これも、異例である。

 朝日新聞は、昨年12月27日の社説で、次のように論じていた。見出しは「日韓防衛摩擦 不毛な悪循環を避けよ」である。 
 
「日韓両政府が言い争いをしている」
「日韓で主張が食い違い、事実関係すら一致しないのはどうしたことか」
「一連の韓国軍の動きにもし、民族主義的な感情が影を落としているのなら看過できない」「大切なのは、常に意思疎通を深めて問題の発生を防ぐとともに、万一、ことが起きた際の対処法をしっかり取り決めておくことである」

 以上のような論調から、約1月間の論争を経て、朝日新聞がどういう判断を下したのか、読者とともに見守りたい。

<プロフィール>
下川 正晴(しもかわ・まさはる)

1949年鹿児島県生まれ。毎日新聞ソウル、バンコク支局長、論説委員、韓国外国語大学客員教授、大分県立芸術文化短大教授(マスメディア、現代韓国論)を歴任。現在、著述業(コリア、台湾、近現代日本史、映画など)。最新作は「忘却の引揚げ史〜泉靖一と二日市保養所」(弦書房、2017)。

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