石油から水へ:新たな富を生む『水力(ウォーター・パワー)』(前編)
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NetIB-Newsでは、「未来トレンド分析シリーズ」の連載でもお馴染みの国際政治経済学者の浜田和幸氏のメルマガ「浜田和幸の世界最新トレンドとビジネスチャンス」から、一部を抜粋して紹介する。今回は、2019年2月15日付の記事を紹介する。
わが国が直面する現下の水問題としては、次の三点が挙げられる。第一に、水に関しては、世界に冠たる技術大国であるにもかかわらず、国際競争力がまったくないこと。第二に、食糧自給率の低下と相まって、海外からの食糧輸入が増え、結果的に「バーチャル・ウォーター(間接水)」を大量に輸入していること。第三に、急成長をとげる中国における水の不足と汚染が日本に悪影響を及ぼしていることである。日中間の尖閣諸島問題も水をはじめとする資源争奪戦の前哨戦という側面が否定できない。日本は水資源の豊富な国で、これまで政府も国民も水問題についてあまり深刻に考えてこなかった。その必要がなかったわけで、実にラッキーであったといえよう。しかし、世界的な水不足が顕在化してきた今日、水問題に対して他人事のように振る舞うことは、もうできない。世界に目を向ければ、10億人以上が安全な水が手に入らない日常生活を余儀なくされているからだ。
さらには、トイレなど排水処理が適切な衛生状態にない地域の住民は26億人に達する。とすれば、日本は世界的課題となっている水問題にどう向き合い、どのように解決への道筋を見出すべきであろうか。「ピンチをチャンスに変える」には、どのような方策が考えられるのか。今こそ、水と真正面から向き合うときである。
まず、第一の水ビジネスに関し、日本に国際競争力がないことについて考えてみたい。これまで日本の水関連企業は汚水の浄化、節水やリサイクルの技術、海水の淡水化に欠かせないRO膜の技術などで、世界の技術開発をリードしてきた。たとえば、水源地のないシンガポールにとって、海水の淡水化や家庭、工場の排水の再利用に不可欠な浄化システムはほとんど日本発の技術でまかなってきた。中近東や北アフリカでも、日本の水技術は高く評価されている。日本が天然ガスを輸入するカタールにおいては海水の淡水化プロジェクトは日本企業の独断場となって久しい。
しかし、欧米の水メジャーが仕掛ける大規模な水ビジネスの中で、日本は単なるパーツの提供、納入業者の地位に甘んじてきた。言い換えれば、最も儲かる水道事業の管理、運営の部分はことごとく世界の三大水メジャーに押さえられてきたわけだ。
実は、水をめぐる世界的なビジネスの流れを受け、日本でもようやく欧米の水メジャーに対抗すべく、官民が力を合わせ、水事業ファンドを立ち上げる準備が始まった。具体的には、経済産業省が、国際協力銀行(JBIC)や野村ホールディングスに呼びかけ、この分野でノウハウを持つオーストラリアの投資ファンドとともに、水事業に特化したファンドを進行中である。最大1,000億円規模の資金を調達し、日本の水企業の海外事業展開を支援する段取りだ。
※続きは2月15日のメルマガ版「石油から水へ:新たな富を生む“水力(ウォーター・パワー)”(前編)」で。
著者:浜田和幸
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