奇跡のポップ・ヴァイオリニスト式町水晶、福岡初ライブ!
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ポップ・ヴァイオリニスト式町水晶(しきまち・みずき)氏が17日、福岡県太宰府市にあるジャズバー「Jazz工房Nishimura」でライブを行った。福岡初となるライブは、ピアニスト・橋本芳氏との初セッション。アドリブとは感じさせない、息の合った演奏が響き渡った。トークで笑いをとりながらも、奏でるメロディーでは、喜びや悲しみや怒りを表現し、観客を魅了する最高のエンターテインメントだった。
現在21歳の式町水晶氏は、障がいを抱えている。3歳のころに脳性麻痺(小脳低形成)と診断された。ヴァイオリンとの出会いはリハビリの一環だった。さらに5歳のときに網膜変性症・眼球運動失調・視神経乳頭陥凹拡大(緑内障)がみつかり、後に12歳で失明宣告を受けた。視野が狭くなり、いずれ見えなくなってしまうという将来を突き付けられたのだ。
式町氏はその事実をステージ上で明るく語っていた。いじめなどの苦しい過去を乗り越えて今、こうしてステージに立っている。そこには、さまざまな出会いがあった。応援してくれている老夫婦からは「本当の盲目とは目が見えなくなることではない。心の視野が狭くなって思いやることができなくなったり、孤独になっていくことが、本当の盲目である」ということを教わった。サイン会に訪れた男の子からは、キラキラと輝いた目で「みっくんみたいなヴァイオリニストになりたい」と言われ、胸が痛かった。闘争本能でしか頑張れない自分に気づき、ものすごく申し訳なく感じた。また、被災地でボランティア活動を行った際に、自分のちっぽけな性格を恥じたという。障がいをもっていない健常者を妬んでいた自分を反省し、尊敬してもらえる人になりたいと思えたことが、今の式町水晶氏をつくりあげた。
印象に残った言葉がある――「僕は、障がい者だから辛いだろうと思われる。障がいは辛いけれども、手帳(身体障がい者手帳)をもっているから、手助けをすぐに受けられる。でも、(障がいを)もってない人は、もっと辛いことがある。堪えないといけない、簡単に助けを求めることができず、逃げ場がない」と語ったのだ。その言葉には衝撃を受けた。それと同時に救われた気持ちになり、涙が出てきた。生きていくことは決して楽ではない、悩みのない人などいない、現実を受け入れて立ち向かっていく強さに心を打たれた。
身体にハンディキャップをもちながらも、健常者をいたわることのできる心や、ヴァイオリニストとしての能力をもち合わせる。個性を表現することで社会貢献する、使命感をもった式町水晶氏の活動は今度も広がっていく。
【松本 悠子】
【式町水晶 Mizuki Shikimachi PROFILE】
1996年北海道生まれ。8歳の時に世界的ヴァイオリン奏者"中澤きみ子氏"に師事。プロを志す。音楽性の幅を広げるため、10歳からポップスヴァイオリンを始め、幅広いフィールドで活躍中のヴァイオリニスト"中西俊博氏"に師事。現在も研鑚を積みながら、コンサート活動と楽曲制作に取り組む。とくにエレクトリックヴァイオリンによるエフェクターを駆使した独自のサウンドが評価されている。小・中学校や自治体、老人ホームや学習施設などでの講演・演奏会に多数出演。障がい者や健常者の垣根を越えて、地域社会や若者に夢や希望を少しでも送りたいという思いと、被災地の皆さまへの支援をとの思いで演奏活動を精力的に行っている。2018年に待望のメジャー・デビュー・アルバム、「孤独の戦士」をキングレコードより発売。
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