【特別レポート】黒く塗りつぶされる島~逮捕者2人、死者1人を出したメガソーラー事業で揺れる宇久島(1)
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佐世保市沖に浮かぶ小島、宇久島。壇ノ浦の闘いに敗れた平家盛(平清盛の弟)が落ち延びたという平家伝説の地に2014年6月、大規模な太陽光発電(メガソーラー)事業計画が発表された。しかし、いっこうに進まない計画をめぐって市議が贈賄事件で逮捕され、昨年は事業担当者が島で亡くなったうえに同僚が傷害致死罪で逮捕されるという異例の展開をみせている。さらに取材の過程でわかったのは、島をほとんど覆いつくすパネルの群れが生み出す「海上の黒い要塞」の異様さだ。島民もほとんど知らされていないというメガソーラー事業の全容に迫った。
佐世保市宇久島で進む、日本最大のメガソーラー計画2014年6月12日、ある大規模プロジェクトの概要が発表された。総事業費約2,000億円(2018年1月時点)が見込まれる巨費が投じられる舞台となるのは、長崎県の佐世保市沖に浮かぶ人口約2,500人の小島、宇久島。島の面積の4分の1にあたる約630万m2を借り上げ、「日本最大」を謳う太陽光発電(メガソーラー)事業を進めるというのだ。
事業は、ドイツを本拠地とするフォトボルト・デベロップメント・パートナーズ社(以下、フォトボルト社)と、太陽光パネル生産で国内2位の京セラ(本社:京都市伏見区)、電気設備大手の九電工(本社:福岡市南区)、オリックス(本社:東京都港区)、みずほ銀行(本社:東京都千代田区)の5社によって結ばれた基本合意に基づいて進められ、2015年度の着工、2017年以降の操業開始を目指すと発表された。
基本合意書によると、宇久島で計画されている事業は世界最大(2014年6月12日時点)となる最大出力430MWの営農型太陽光発電事業で、「地球環境保護への貢献、また離島である宇久島の経済活性化を図り、島の再生を目的に計画しているメガソーラープロジェクト」(基本合意発表資料より)だという。
「営農型」は、農地の一時転用で土地を借り上げてソーラーパネルを設置する方法で、パイプなどで枠組みを組んで太陽光パネルを高い場所に設置し、パネルの下に家畜が出入りできるようにして放牧を可能にするもの。総事業費は当初約1,500億円を見込み、事業用地として借り上げる面積は合計で約630万m2にもおよぶ。これは東京ドームの約134個分にあたり、島のおよそ4分の1にあたる面積に太陽光パネルが設置されることになる。
発表資料では、年間の発電電力量は約50万MWh(メガワットアワー)、一般家庭約13万8,800世帯分(1世帯あたり3,600kWhで計算)の年間消費電力を見込み、年間で25万2,200tのCO₂を削減する計画だ。フォトボルト社は2016年5月時点で、宇久島のほか岩手県遠野市や秋田県由利本庄市など国内7カ所でメガソーラープロジェクトを計画していることを発表しており、合計1,913MWのスーパーメガソーラープロジェクトを同時進行させていた。
宇久島のメガソーラー事業は、ソーラーパネルを設置する事業用地交渉を宇久島メガソーラーパークサービス(株)(UMSPS/本社:佐世保市宇久町平、社長:赤木順二/以下、宇久島メガソーラー社)が行う。宇久島メガソーラー社は島内の農地や耕作放棄地を借り受け、発電事業の特別目的会社(SPC)であるテラソール合同会社に転貸し、テラソール社は借り受けた用地にパネルを貼って太陽光発電所を建設する計画だ。基本合意では、宇久島メガソーラー社がテラソール社から受け取る営農支援金をベースに、宇久島の主要産業である畜産業を営む農家に農作業を委託し、農業と発電事業の両面から宇久島の地域振興を支えることを謳っている。
京セラは太陽電池モジュール(組み立て部品など)のすべてを供給したうえで、九電工と共同で施工と設置後の保守・管理を担当する。みずほ銀行は、事業SPCであるテラソール社が主体となって資金調達を行うプロジェクトファイナンスのスキーム検討を担当し、計画発表時点では、京セラと九電工、オリックスの3社が、テラソール社への出資を検討しているとしていた。
(つづく)
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