【特別レポート】黒く塗りつぶされる島~逮捕者2人、死者1人を出したメガソーラー事業で揺れる宇久島(3)
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佐世保市沖に浮かぶ小島、宇久島。壇ノ浦の闘いに敗れた平家盛(平清盛の弟)が落ち延びたという平家伝説の地に2014年6月、大規模な太陽光発電(メガソーラー)事業計画が発表された。しかし、いっこうに進まない計画をめぐって市議が贈賄事件で逮捕され、昨年は事業担当者が島で亡くなったうえに同僚が傷害致死罪で逮捕されるという異例の展開をみせている。さらに取材の過程でわかったのは、島をほとんど覆いつくすパネルの群れが生み出す「海上の黒い要塞」の異様さだ。島民もほとんど知らされていないというメガソーラー事業の全容に迫った。
黒く塗りつぶされる島
特別取材班は、宇久島でのメガソーラー事業について取材を進めるなかで、数枚の衝撃的な画像を入手した。メガソーラー事業が太陽光パネルを設置する予定地としている土地の場所と、パネルの面積をコンピューターグラフィックで地図上に詳細に反映させた画像で、画像からはまさに島が黒く塗りつぶされた様子が見てとれる。宇久島のほぼ中央にある城ケ岳を取り巻くように、平地のほとんどが黒く塗りつぶされ、宇久島の南西に連なる属島・寺島(面積約1km2)に至っては、保護林地域を除くほぼすべての土地に太陽光パネルが設置される異様な光景となっている。住宅地を取り囲むように黒いパネルが林立する様子も見てとれるが、はたして事業が実現した後、この島で人間が暮らすことなどできるのだろうか。
じつは、島が黒く塗りつぶされる計画について知る住民はほとんどいない。九電工などが事業説明会で示した完成予想図は今回入手した画像ほど詳細ではないうえに、なにより島民が計画の全体像について知る機会がないのだ。つまり、地権者は計画予定地のうち、細分化された自分の土地についてパネル設置の説明を受けるだけで、事業の全体像の説明を受けるわけではない。地権者それぞれはジグソーパズルのワンピースだけを見せられただけで、パズルが完成した暁の「海上の黒い要塞」の絵を見せられて契約したわけではないのだ。
相続などで宇久島の土地を入手した、島を訪れたことのない島外に住む地権者が多いことも話を複雑にしている。
「島外の地権者にとってみれば宇久島の土地は遠い存在で、太陽光発電事業に貸すことでお金が入るのならば、万々歳なのでしょう。しかし、実際に暮らしている島民からすればメガソーラー事業は生活そのものが失われることを意味します。子どもの頃から親しんだ自然は失われるし、パネルの照り返しで気温が上昇すれば畜産など島の農業がどうなるかわからない。大規模な環境アセスメントを実施したうえで、島民全員に計画の全容を伝えて、事業の是非を問うべきです」
そう語るのは、島外での生活を経て帰郷した島民K氏。いったん島を離れたからこそ実感する、「島がもつ財産=自然」が失われてはならない、と訴える。
(つづく)
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