【スクープ】金融機関に「夫の生命保険を奪われた」~預金が「溶けていく」謎を追う/鹿児島3金融機関との闘い(1)
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鹿児島県内の3つの金融機関で、預金記録が不正に操作されていた疑いが浮上している。被害を訴えた女性はすでに10年以上前から、3金融機関と法廷で闘っている。女性には身に覚えのない借用書などが交わされ、事故死した夫の保険金も気がついたときには喪失状態。借用書が偽造されたことを証明するための筆跡鑑定で署名は別人のものと認定されたにもかかわらず、裁判では敗訴。再審を求め、金融機関を相手に孤独な闘いが続いている。一方、金融機関は、「個人情報保護」を理由に取材に応じようとしない。
■隠蔽された?金融機関の不正
鹿児島市に本店を置く鹿児島相互信用金庫(以下、「そうしん」)は、2018年4月、過去17年間で顧客の預り金などを着服するなどの不正行為が計約1,600件あったと発表した。不正に扱われた額は約5億4,000万円にのぼり、解雇を含め144人の行員が懲戒処分を受けた。
長期にわたる巨額不正事件ということもあり、九州はもちろん全国ニュースになったのは記憶に新しい。この一件で、「そうしん」の信用は失墜。金融機関にとっては致命的とも思える巨額不正の発覚と大量処分を公にしたのは、「再起を図るために膿を出し切る」という意図があったと思われるが、一方でそうしんは、「この不正公表に私の事例は含まれていない、隠蔽されている」と語る女性の訴えを認めようとはしない。
被害を訴える鹿児島県在住のAさん(60代女性)は10年以上、1人でそうしんを含む3つの金融機関と闘っている。当時をAさんの証言と裁判資料から振り返る。
■預金者に無断で、「阪神・淡路大震災に寄付」
発端は1995年にAさんの夫が建設現場で事故にあい、亡くなったことに始まる。夫の死でAさんが受け取った保険金は約1億3千万円。まず、鹿児島信用金庫(以下、「かしん」)から「ぜひ預金をしてほしい」旨の勧誘があり、Aさんはこれまでの付き合いもあったことから了承した。
しかし生命保険を預けた後から、不可解なことがたて続けに起きるようになった。
まず、Aさんは保険金を預けることは認めたものの、その際に「口座種別を選んでくれ」とは言われなかったという。にもかかわらず保険金は、自由に出し入れはできないものの引き落としは可能な定期口座に預けられた。確認すると、当時の支店長に「支店の実績にしたいから」と強引に押し切られたという。
続いて起きたのが、身に覚えのない「引き落とし」。Aさんの夫は亡くなる前に自宅を建てることを計画していた。夫が亡くなると、Aさんが手続きしてもいないのに土地代と手付金が口座から引き落とされていた。
信じられないことはまだ続く。「阪神・淡路大震災への寄付」という名目で、300万円が特別口座に移されていたのだ。これもAさんが申し込んだ覚えはない。Aさんが支店に確認すると、「支店を助けるためにお願いします」と、信じがたい申し出があった――呆然としたAさんだが、結局これも押し切られるかたちで同意せざるをえなかった。「私の意志はどこにもなく、支店や職員の都合の良いように預金が扱われた」。
すでに、Aさんは自分が何に巻き込まれたのか、そして何が起きているのかわからなくなっていた。
(つづく)
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