岐路に立っているテスラ(前)
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日韓ビジネスコンサルタント 劉 明鎬 氏
電気自動車時代を切り拓くイノベーション企業として世界の注目が集まっていたテスラが、現在、危機的状況に立たされている。テスラは今年1月に全従業員の7%に当たる3,000名の人員削減を発表した。
テスラの株価は今年4月8日基準で273.20ドルだったが、その株価は昨年12月の株価である376ドルに比べると、27.3%下落したことになる。それに、時価総額は4分1も減少しているし、社債の価格もムーディーズが格付けをB3に落としたことなどにより下がり続けている。さらに、保有現金は減り続いていて、現金が底をつくおそれがあると噂されている。
ほかの自動車メーカーが数百憶ドルの現金を保有しているのに比べると、テスラの経営状態は不安定だと言わざるを得ない。経営環境も量的緩和時期とは違って、資金調達がだんだん厳しくなっている。このような状況に陥った原因には複数の要因があるが、そのなかでも一番根本的な原因はテスラが抱えている自動車産業の根幹である大量生産の問題であろう。
テスラは創業以来、14年間赤字を計上してきたが、それでも投資家はテスラに対して相変わらず希望を託していた。テスラは18年7〜9月期に最終利益3億1,150万ドルを計上し、8四半期ぶりに黒字転換を実現した。一時的ではあるが、この時はテスラにまだ希望があるようにも見えていた。
テスラは2003年にシリコンバレーに創業された会社で、その将来性に対して最も注目が集まった企業の1つだ。また、電気自動車のコアであるバッテリーに数々の革新を引き起こしたことでも大変有名である。
テスラの最高経営責任者であるイーロン・マスクはインターネット決済企業であるペイパル、宇宙開発のスペースX、太陽光発電のソーラーシティなどを創業した人物で、世界で最も影響力のある経営者の1人でもある。
テスラは地球上で「一番早い電気自動車スポーツカー」を標ぼうしたロードスターをはじめ、高級セダン「モデルS」、 SUV車両である「モデルX」などを矢継ぎ早に市場に投入し、電気自動車産業をリードする革新企業というイメージを獲得した。また米ネバダ州の砂漠に巨大なリチウムイオン電池工場を建設し、日本のパナソニックと共同経営もしている。ところが、絶好調であるかのように見えていたテスラに異変が起こっている。テスラは創業以来最大の危機に直面し、その対応次第で企業の命運が分かれるような状況になっている。
何がテスラを危機的状況に追い込んでいるのか。テスラの問題の発端は、同社初の量産車種である「モデル3」である。
一部のお金持ちだけが電気自動車を買えるのではなく、電気自動車の大衆化を図るため、テスラは準中型車種である「モデル3」の出荷計画を2016年に発表することになる。すると、その反応はすさまじく、発表から二日間で25万台の予約が殺到した。しかし、17年には1週間に5千台の生産体制を、それから18年には1週間に1万台の生産体制を構築すると発表はしたものの、その後テスラは予約に生産が追いつかない状況が続き、それが企業成長の大きなネックとなっている。
(つづく)
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