九州企業の衰退・勃興 平成を振り返る(3)
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平成の30年間を振り返るに筆者も記者として反省することが数多くある。その筆頭が福岡空港を埋立新空港にするという動きが強まる時期に反対キャンペーンを繰り広げたことである。もし新宮沖合にでも24時間運用の新空港がオープンしていたら、都市福岡の発展は様変わりしていたであろう。己が無知なあまり、世界の趨勢を理解できず、その後の旅客・空の貨物量の急増を予測できずに反対運動に加担したことが恥ずかしく、穴があれば入りたい心境だ。もし、2滑走路、24時間営業の国際空港が平成10年ごろに開設していたら、都市福岡は国際都市としてさらなる飛躍を遂げていたことは間違いない。
21の会が旗振り人
昭和の終わりから平成3年頃まで、若手経営者集団=「21の会」が「新宮沖合に新空港建設」と叫んでいた。徳のない人が指導者だったので、なかなか賛同の輪が広がらなかったことも失敗の要因の1つであった。そして何よりも現空港の距離の近さ・利便性が福岡市民の頭に沁み込んでおり、「何をいまさら!!移転する必要があるか」という潜在的な圧力があり、運動は広がらなかった。
筆者はサラリーマン時代、平成元年9月に「九経エコノス」という経済月刊誌の発行に漕ぎつけた。新参者はまず、目新しいキャンペーン特集を打ち出すことが宿命づけられる。筆者は浅はかな根拠に基づいて反対論を展開した。(1)利便な場所にある空港をなぜ、移転させる必要があるのか!(2)当時、積算されていた「4000~5,000億円にものぼる工事代金の無駄使いをする価値があるのか」等々である。今となれば筆者の先見性の無さに呆れるばかりである。
上海浦東国際空港の誕生・発展に驚く
記者としての先見性の脆弱さを認識したので、何か一本、専門性を養成しようと思い「上海の発展に接すること」を決意した。まずは平成2年9月に福岡で浦東開発のシンポジウムを開催したことを皮切りに上海視察などを10回ほど企画した。また、上海に60回以上赴き、そこで上海の変貌を目の当たりにした。この実績は福岡でも自負できると思う。また数多くのレポートも作成した。
自転車通勤の都市上海が、一夜にして地下鉄網が整備され、都市高速道路も完成する様を目撃した。
夜中のホテルで睡眠薬がわりとなった「チンチンカン」という工事音を聞いた。昼夜問わず、24時間工事を続ければ、自ずと完成スピードはあがる。浦東地区は国際都市上海のブランド力底上げに大きく貢献した。
あとで触れる虹橋空港の地下に新幹線ターミナルが建設されたので、社員全員で視察にでかけた。新上海港にも驚いた。揚子江の河口から40km離れた島々を港湾に仕立てており、その港湾の広さは6000㏊におよぶ。40km近い橋で新上海港と連結している光景には唖然とさせられた。
そういう国際都市上海の変貌に接するなかで、上海浦東国際空港建設プロジェクトを耳にしたのが平成元年のことである。もともと、上海中心部に虹橋空港があった。この空港を国内線専用にして国際空港用として上海浦東国際空港の建設が始まり、平成11年にオープンした。上海浦東国際空港を利用したことがある人は桁違いの広さゆえに驚愕する。この空港は現在、6滑走路用の工事が進行している。いかに需要が膨張しているかの証明である。
2滑走路が稼働しても手詰まりになるのは明白
国際都市・上海の変貌・大躍進を目の当たりにし、ようやく筆者もダイナミックな視点で捉える能力が高まり始め、「いやー、福岡空港を埋立して新空港にすべきであった」と後悔の念が強まってきた。
新千歳空港は広大なので、潜在能力が高い。空港の売上比較では千歳空港が福岡空港の倍である。貨物郵送力に関してもいくらでも対応できる能力がある。市場はさらに拡大していくであろうが、福岡空港の伸びしろは皆無だ。
2滑走路の稼働ができたとしても便数は30%アップするのみ。離発着の軌道を伸ばす=たとえば南側から降りる場合、久留米市周辺から下降体制をとれば50%増しが可能であると言われている。
メインテーマは福岡空港から羽田空港までの実質所要時間が、いくらかかるかである。現在、発着体制から羽田空港のタラップに降りるまでに最低2時間を要する。20年前は1時間半で済んでいた。こうなると「中洲・天神から空港まで地下鉄で20分」というふれこみも有難みが薄れる。
福岡空港の運営は民間企業が行うことになったので、採算性を強く求めるための投資は行われるであろう。それでも現在の利用者数である4,000万人が、6,000万人に増加した場合、利用者を満足させるのは至難の業であろう。国際便は北九州空港と棲み分けという方策も検討の余地がある。
どうであれ、世界の平和が続く限り、海外からの訪問客は増大する一方である。その見通しの下で「馬鹿な埋立空港反対」を唱えたことについては反省しきりである。24時間使用可能な国際空港が開設していたら、都市福岡という大局的な視座で、現在の福岡空港敷地および待機用地が活用できた。そうなると、さらに魅力あるまちづくりが可能となっていたであろう。
(つづく)
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