2024年11月05日( 火 )

【読者投稿】西日本新聞「長崎IRに4,000億円投資」記事は本当か~地方のIR候補地で実現は困難

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 6月1日、西日本新聞に掲載された「『長崎IRに4,000億円投資』マリーナベイ元社長名乗り」記事について、IR事情に詳しい在京の読者から疑念を呈する投稿が届いた。以下、核心部分を抜粋して掲載する。

■IR開発の基本条件は、地元財界と大手デベロッパーによるコンソーシアム設立

 西日本新聞の記事では、「シンガポールのIR『マリーナベイ・サンズ(MBS)』運営会社元社長のウィリアム・ワイドナー氏らが率いる東京のIR企画会社が31日、建設・運営事業者に立候補する意向を示した」としているが、IR誘致の実情を知る者としては、「東京のIR運営会社」の部分に首を傾げざるをえない。率直に言って理屈に合わず胡散臭さすら感じてしまうのだ。

 「理屈」と言うのは、IR関連の基本条件は、Gaming Operator(GO)と地元財界、大手デベロッパー企業等が一緒になって開発準備母体(コンソーシアム)を設立することが必須になっていることと、つじつまが合わないということ。したがって、記事中で取材に応じている「東京のIR企画会社」の関係者がどういったポジションで発言しているのかが、まず理解できない。

 さらに、IR実施法で規定されているように、コンソーシアム運営開発企業は日本法人に限定されている。よって、事業会社のエクイティ(出資、資本)の大半を GOが持ったとしても、残りの30~40%は地元財界と日本企業が保有しなければならない(この取り決めこそ、国内のサラリーマン社長諸氏が怖がって正式に手を上げられない理由)。

 また、この日本側エクイティ持ち分は1社ではなく、地元と大手企業(おそらく、少なくとも10社以上)で構成される。東京のIR企業などでできるはずがないため、具体性も欠いている。社会的信用も必須であり、GO(ラスベガスサンズ、MGMなど)が同様の発言をするなら理屈に合うが、あまりにも解せない内容だ。

■地方のIR候補地が「無理」な事情

 IR開発案件において、日本側のエクイティ持ち分は多額・多数になるので、限られた海外GOとの組織組成を完了した後に「熾烈な公募争い」が起こるはずがない。開発準備母体の組織組成した所以外、管轄行政に申請することはまず不可能であり、地元財界が各GOに分かれてそれぞれ組織組成するなど、有り得ないと言っていい。

 要するに、安倍政権下の「小利口」な政治家と官僚が、一見公平に見られる法案として設計しているのだ。加計学園、森友学園問題に類似した構造とも言えるだろう。

 地元の長崎新聞が報道してる様に、すでに「地方の候補地では困難」と大多数が判断している。苫小牧も、すでに鈴木北海道知事がトーンダウンしており、安倍政権による施設制限法、中核施設の面積(大規模なMICE型)等の最低制限が障壁となって、これの採算性を調査する予算約2億円計上を無期延期した。

 長崎HTBも同様で、各報道機関は中村県知事以下の行政「前のめり」を強く批判してるのが現状といえる。また、安倍政権下における管轄行政、本庁関係者も、和歌山、長崎などの評価は苫小牧以下で、すでに答えは出てしまっている。今後、地方の候補地においてはより具体的な査察がなされ、各方面から批判される事になるだろう。

 九州においては北九州市が手を上げる可能性もあるが、実現する可能性はほとんどない。同市は末吉興一市長時代(1987~2007年)にも積極的な誘致活動を行った過去があり、関係者の視察に市が用意したヘリコプターを飛ばしたこともあった。しかし、米国関係者に「煙突が多く、汚い」として一蹴されていた。こうした環境は当時とさほど変わっていないため、評価が「大逆転」することはまずありえない。

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