九州企業の衰退・勃興 平成を振り返る(10)
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銀行が潰れる、老舗復活
銀行が潰れる時代
(1)日銀超低利金利が金融機関経営を圧迫させる
長崎県の人口は急減している。地域経済活動が縮小する。そうなると銀行業の成立が困難になる。よって銀行が合併・統合される。かつて長崎県で十八銀行、親和銀行、九州銀行が血まみれの激闘を展開していたことを知る人たちにとって隔世の感を抱く。誰1人金融業が成立不能になるとは想像していなかった。それだけ時代の激変で、金融機関が振るいにかけられているのだ。
さらにプレシャーを加えたのが黒田東彦日銀金融政策だ。「低金利いや実質ゼロ金利で景気浮揚をさせる。そのためには銀行の経営が多少、苦しくなっても仕方がない」と腹を括っている。たしかに低金利が住宅・不動産業に活気をもたらしたプラスの面があるのは事実である。平成31年3月期決算発表によって金融機関の経営状態の深刻さが明白となった。19年3月期悲惨な状況を参照してもらいたい。
ここで補足すると脳天気な西日本シティ銀行・久保田会長から2019年の経済の見通についてのレポートが送られてきた。こんなものを作成する暇があれば日本銀行へ「銀行潰しの金融政策」へ異議申し立ての意見書を練り上げて渡すべきである。どうであれ、いよいよ九州においては福岡フィナンシャルグループ、九州フィナンシャルグループ、西日本フィナンシャルホールディングスの3グループに絞られてきた。
(2)良筋の借り手がいない
各業種の激変推移をレポートしてきたが、地場の中小企業においても無借金企業が増えて銀行を必要としなくなったため、頭を下げる必要がなくなった。さらにAI(人工知能)化の進行で従来の銀行業務の変革が迫られている。人減らしが待ったなしだ。最近ではセブン銀行のATMを利用してコスト削減に踏みだす涙ぐましい努力もしている。さらにITの加速的な進化で異業種からの参入も具体的になりだした。まさしく四面楚歌。
4,000億円企業3社の活躍~7社会の機能不全
福岡地元「七社会」という財界団体が存在している。九州電力(株)、(株)福岡銀行、(株)西日本銀行、福岡シティ銀行、西日本鉄道(株)、西部ガス(株)、(株)九電工の7社である。この「七社会」が曲がりなりにも機能をはたしていたのは、平成初頭までであった。「頭が高く口は出すが何もできない(金も出さない)」体質が露呈されたのは福岡ドーム建設、福岡ダイエーホークス運営の時である。結果、ダイエー・中内オーナーの尽力で球団運営が現在(福岡ソフトバンクホークス)に至っているのである。
平成22年3月の東日本大震災で福島第一原発が崩壊の危機に瀕し、全国的に原発の稼働がストップした。その煽りを受けて九電の経営内容が悪化した。永年蓄積した自己資本が吹き飛ぶ寸前まで追い込まれた。ここから九電の求心力が弱まる。
さらに西日本銀行と福岡シティ銀行が統合したことで「7社会」の枠が1社余る事態となった。そこにJR九州が加わることになる。ただ「7社会」の体をなしているが、現在、定期的な組織活動は見かけられない。結束力に欠け、それぞれ自社優先の道を選択している。
3社の果敢な活躍
弊社ではこの3年間、JR九州・西鉄・九電工の3社の躍進ぶりを定期的にレポートしてきた。「どの企業が最初に年商4,000億円(連結)に達するか」と追い駆けたのである。奇しくもこの3月期において4,000億円に到達したのである。「七社会」からの軛から離れて「我が道を進む」ことに徹した成果といえる。
この3社の躍進の原動力に共通しているのは、「福岡、北部九州だけに頼っていたら未来はない。本業だけにかかわらずにあらゆるものへ挑戦する」という姿勢である。地元中核企業の果敢な挑戦には、中小企業の経営者たちは見習うところが大いにある。
(1)西日本鉄道
同社での国際物流事業本部の存在を知る人は珍しい。この事業部に所属している社員たちが数多く海外で活躍していることも、あまり認識されていない。この事業部の歴史が昭和24年に遡ることも知られていない。東京に事業本部があること、別働隊であることで福岡では無名である。この事業部がいよいよ世界に羽ばたこうとしている。70年近い実績がフル稼働するという機が熟したのだ。西鉄の増収路線が、3社のなかでは一番手堅い。
(2)九電工
この会社の場合、「親の九電には頼れない」という危機感から持ち前のセールス力が爆発した。「九州では限界がある」と見切って東京へ営業を集中。建設投資の流れとマッチして売上が急増。太陽光工事受注も手伝って業績急伸。株も高騰する始末。勝利の味を舐めると、傲慢さが生じる。仕事を取るには手段を選ばずとの姿勢が、賄賂による社員の逮捕事件に発展。社内の体質改善の実現が急務である。問題は東京オリンピック以降の受注減が囁かれる事態に、どう手を打つかだ。最終的にはM&Aを駆使して売上をかさ上げするしか方策はない。
(3)JR九州
念願の上場をはたして勢いづいているJR九州。民営化のスタート時期から「本業では飯が食えない。企業存続のためには儲ける、稼げるビジネスを見つけろ!!」と叱咤激励を受けて多角化に邁進してきた。駅ビル・商業施設ビジネスが大当たり。ただし、手持用地は使い尽くした。現状の牽引車は不動産・ホテル事業である。あとはM&A。この3月期の4,000億円突破の原動力は一昨年買収したキャタピラー九州(株)のおかげだ。そうなると後は不動産・ホテル事業を東京・関西へ拡大させていくこと、さらに海外進出への挑戦となる。今後のM&Aは、本体との波及効果を無視して増収目的が主流になるであろう。加えること、上場の宿命=海外投資家・大口株主との熾烈な交渉が待ち構えている。経営陣たちそのものが国際化で武装しなければならない。
4,000億円超の3社ともども、今後もなお一層の精進を図らないと上伸は難しいだろう。
(つづく)
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