2024年11月13日( 水 )

【参院選2019】秋田へのイージス・アショア配備が争点の秋田選挙区~参院選最終日に安倍首相と菅官房長官がそろって応援演説

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 イージス・アショア配備が大きな争点となっている参院選秋田選挙区(改選1)で、安倍自民党が「最大限」とも言えるテコ入れをしている。選挙戦最終日の7月20日には、安倍首相が13日に続いて二回目の秋田入り、大票田の秋田市で中泉松司候補(自民公認・公明推薦)の応援演説を行うと、「令和おじさん」として人気急上昇の菅官房長官も県北の北秋田市と男鹿市でマイクを握ったのだ。政権トップとナンバー2が「全国一の激戦区」(地元国会議員)の秋田選挙区でそろい踏みをしたのだ。

安倍首相の二回目の応援演説(7月20日)

 一回目の秋田入りで安倍首相は県内3カ所で街宣、候補地の陸上自衛隊新屋演習場を抱える秋田市では「まずイージス・アショアについてお話をします」と切り出して次のように謝罪した。

 「イージス・アショアについては緊張感を欠いた不適切な対応がありました。極めて遺憾であり、言語道断であります。まず秋田県の皆さまに心からお詫びを申し上げたいと思います」

 そして安倍首相はこう続けた。
「私は日本の安全保障政策の責任者であります。国民の安全を守り、命を守り抜いていくためにはイージス・アショアがどうしても必要です。しかし安全保障政策を前に進めていく上においては、国民の皆様、地域の皆さまの理解がなければ、進めていくことは出来ません。まずは調査をやり直す。そして第三者と専門家を入れて徹底的に調査をしていくことをお約束を申し上げる次第です」。

 防衛省の調査報告書をめぐる角度計算ミスや職員の居眠りなどへの謝罪はするが、秋田へのイージス・アショア配備の方針には変わりはない意思表示をしたのだ。

最終日の20日には安倍首相と菅官房長官がそろって秋田入りするほどの全力投球をした。
ただし謝罪はしても、「陸上自衛隊新屋演習場」(秋田市)への配備計画推進の方針は変
わらず、安倍首相はイージス・アショア配備の必要性を強調。

 二回目の応援演説でも、イージス・アショアに関する説明は一回目と全く同じで、割いた時間も約1分間と変わりはなかった。そして17分間の大半をアベノミクスの自画自賛と野党批判に費したのだ。

 しかも首相演説は短い上に虚偽発言のオンパレードだった。安全保障政策を進めるには「地域の皆さまの理解」が不可欠と言いながら安倍政権は今年4月、イージス・アショア2基の購入契約を締結していた。秋田でも山口でも地域住民の理解が得られていない状態で見切り発車をしていた。「嘘八百」とはこのことだろう。

 「国民の安全を守り、命を守り抜いていくためにはイージス・アショアがどうしても必要」も虚偽発言の可能性が極めて高い。かつて4隻で現在は6隻のイージス艦を8隻にする倍増計画が進行中だった2017年11月、日米首脳会談でトランプ大統領の米国製兵器爆買要請を安倍首相は快諾、翌月にイージス・アショア購入が閣議決定された。イージス艦8隻で十分だったのに、対米追随の安倍首相のせいで莫大な日本国民の血税を米国に貢ぐと同時に、日本の国土の一部を有事の際に攻撃対象になる危険が基地にすることになったのは明らかなのだ。一連の購入経過を見れば、イージス・アショアは「米国益第一・日本国民二の次」の”安倍下僕外交(政治)”の産物であることは明らかなのだ。

 安倍首相の前にマイクを握った中泉氏もイージス・アショア軽視の姿勢は同じ。配備候補地の陸上自衛隊新屋演習場を抱える秋田市での街宣だったのに、約9分間の演説でージス・アショアについて全く語らなかったのだ。

 なお一回目の首相演説後に中泉氏に秋田へのイージス・アショア配備について聞くと、「白紙撤回や反対を言ったことはない」という安倍首相と同じ立場であった。

最終日に安倍首相と菅官房長官がそろっ
て秋田入りして自民党公認候補の応援演説
をした秋田選挙区で、イージス・アショア
配備反対の民意を背負って草の根選挙に徹
する寺田静候補。子育て中の母親で「自分
の息子だけでなく、秋田の子どもたちにイ
ージス・アショアのある未来を手渡したく
ない」と訴えた。

 「太平洋の盾 巨大な”イージス駆逐艦”としての日本列島」と題する米国シンクタンクの論文には、秋田配備はハワイの米軍基地を守るための米国防衛前線基地化で、米防衛予算節約になると書いてあった。そこで、秋田入りした安倍首相を直撃、素朴な疑問をぶつけてみた。一回目の大館市での応援演説後、安倍首相に「秋田が攻撃対象になっていいのですか、イージス・アショアで」と声をかけたが、こちらを一瞬振り向いたものの、すぐに顔を背けて無言のまま車に乗り込でいった。

 一方、野党統一候補の寺田静氏は一貫してイージス・アショア配備反対を訴えている。告示日の7月4日には、秋田市の事務所前で「私の子供を含めて秋田の子供たちにイージス・アショアのある未来を手渡したくない」という第一声をあげた。子育て中の母親でもある静氏は、本命県議固辞などで候補者選考が難航する中で白羽の矢が立ったが、悩んだ末に出馬を決断した。「専業主婦に国会議員が務まるのか」との批判を受けるんを逆手に取るかのように「主婦目線」「生活者目線」を強調。「私は国の視点に立った国会議員を目指していない。地方の声を伝えていく」と"国策追随型候補”への対抗心も露にしていた。

 そして配備候補地の住民と秋田県民との連携も呼びかけていた。「(配備候補地の)新屋地区は目の前に住宅、学校、福祉施設もあり、不安の声が上がっている」。

 静氏の義父は、寺田典城・元秋田県知事で、夫は寺田学衆院議員(立憲民主党会派)。地元名門政治家一家の候補が秋田への国策強行に反対する姿は、沖縄の名門政治家一家出身の翁長雄志・前沖縄県知事が「辺野古新基地阻止」を旗印に幅広い政治勢力を結集した姿と重なり合う。「中央対地方」「"国策追随型候補” 対 郷土を守る”草の根(県民党)候補”」という参院選秋田選挙区の構図は、辺野古新基地建設が争点の沖縄県知事選とよく似ているのだ。

 配備反対の民意を押しつぶそうとする安倍自民党が支援する"国策追随型候補”と"草の根候補”が最後まで横一線の激戦を展開する秋田選挙区の結果が注目される。

【ジャーナリスト/横田一】

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