2024年12月23日( 月 )

ラグビーW杯が九州に、福岡にやってくる 福岡開催推進委員会事務局の広報手法~「ラグ村ラグ江」

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■脱力系ユルキャラでW杯の情報発信

 ラグビーワ-ルドカップ(以下、RWC)の開催が近づいてきました。さまざまな情報発信が行われている中、ぜひ、見てほしいのが「福岡発脱力系ラグビー漫画 ラグ村ラグ江」のHP(福岡市市民局スポーツ推進部スポーツ事業課)。この漫画、じつはRWC2019福岡開催推進委員会事務局に在籍する吉村衣恵(よしむら・きぬえ)さんによるもの。

 「ラグビーのラの字もなかった普通のOL」という本人。そんな人だからこそ伝えることができるラグビーの魅力と、この漫画の効果について、ご本人と上司の方に聞いてみました。

ラグ村ラグ江さん
ノリノリで取材に応じる、吉村衣恵さん

 

Q1.そもそも、なぜ、この「ラグ村ラグ江」の漫画を始めたのですか?

 吉村 RWC開催が決定して1年が経ったころ(市役所のスポーツ推進課在籍中)、ラグビーが「おじさんたちのスポーツ」という印象だったため、若い女性にアプローチするにはどうしたらいいかということで、比較的若い女性だけでの話し合いが開催されました。そして、福岡市のHPにラグビーの情報が何もなかったため、まず、ここを充実させていこうということになりました。

 ただ、文字だけだと寂しいので、アイキャッチとして何らかのキャラクターが欲しいということで「ラグ村ラグ江」が生まれました。でも、突然「ラグ村ラグ江」が出てきてもわからないため、その紹介のために「マンガ」を描きました。それが、仲間うちでの評判がなかなかよくて、広報での評判も良かったのです。子どものフェイスペインティングなども候補にあがりましたが、絵のほうが自由度は高いと思って漫画を描いてみたのです。正直、フェイスペインティングはやだなとも思いました(笑)。

 スタートしてみると、ラグビーファンの男性からも「面白いことやっているね」と声をかけていただいて。手ごたえを感じたというよりも、ちょっと続けてみようということで続けてきました。

Q2.最初は、まったくラグビーを知らなかったということですが、ラグビーというスポーツ自体の印象はどうでしたか?

 吉村 何も知らないときは、「ただぶつかり合うだけの、野蛮なスポーツ」という印象でした。今は、随分イメージが変わりました。仕事のおかげで、ラグビーの選手と接することも増えて、人間性もすばらしいし、プレーも「ただぶつかっている」というわけではなくて、空間をつくるため、ボールを前に進めるため緻密な計算のもとにぶつかっていることがわかりました。とても見ごたえのある魅力的なスポーツだと思っています。

 選手同士も積極的にコミュニケーションを取りながら試合をしているので、それも特徴的ですばらしいと思います。福岡、北九州は球技専用スタジアムで試合があり、非常に近い距離で観戦できるので迫力もありますしね。

 広報の仕事として、じつはネットラジオでの中継にも挑戦したのです。福岡県ラグビー協会のスタッフに解説してもらいながら、実際の試合を中継したことがあります。協会のお2人に解説してもらいながら、中央に「ラグ村ラグ江」こと吉村衣恵という豪華な布陣での中継でした(笑)。しかも、スタジアムの一番いい場所、観客席中央の一番上から。楽しかったですね。あのような解説があったら伝わるのだろうなと思いました。でも、そこまでしないとなかなか伝わらないという難しいスポーツだなとも改めて思いました。

 トライの迫力あるシーンを見たいので、これまではゴール近くに座っていたのですが、その場所に座ってみて初めて「陣取りゲーム」という意味が腑に落ちました。でも、事前周知がほとんどされていなかったので、数十人しか聞いていないという結果にはなりましたが……。

Q3.初めてラグビーの試合を見に行った時の感想はどうでしたか?

 吉村 市役所に着任してすぐ、2016年4月に春日公園でのラグビーフェスティバル(中学生、高校生、大学生の試合)を見に行きましたが、その時は、大学生の試合まで見続けることができませんでした。眺めるだけで眠たくなってしまって……限界でした。

Q4.「ラグ村ラグ江」を連載されて、最近の反応はどうですか?

 吉村 女性、男性別での反応は、さほどわからないのですが、試合会場で声をかけられることは多くなりました。先日、全国のラグビー開催自治体のPRということで東京に出張に行ったのですが、「もしかしたら、ラグ江さんですか?」と女性に声をかけられました。

 漫画を連載開始して、トップリーグ会場で先着5名に「ラグ村ラグ江」のキーホルダープレゼントも実施しました。コアなラグビーファンの方にも認知してもらうことができて、その方にブログで発信してもらったりもしました。嬉しいですね。

■注目選手は、福岡出身の流大選手と、福岡堅樹選手!

Q5.吉村さんの注目選手は?

 吉村 流大(ながれ・ゆたか)選手と、福岡堅樹(ふくおか・けんき)選手です。先日のパシフィックネーションズカップ(対フィジー戦/格上の相手にJapanの勝利!福岡選手もトライを獲得!)は、よかったです。博多のハードロックカフェでパブリックビューイングをやっていました。会場がいっぱいになるくらいお客さんもいらっしゃって、盛り上がっていました。

 RWCの試合は、福岡では日本戦の試合はないのですが、パブリックビューイングを実施します。9/20~9/22、9/26~9/28、10/2~10/5、10/12~13 博多駅の特設会場となります。

Q6.(上司の方へ)ラグ村ラグ江の漫画を始めるというのは、行政としてかなり大胆な戦略だと思いますが、決定した要因、そして実行した手ごたえはいかがですか?

 上司 「漫画で伝える」ということは、有効な手段の1つだと思いましたし、彼女の特技も生かせます。伝えたい内容も、漫画のなかでその都度しっかり伝えることができます。これまでラグビーに接していない方にアプローチするためにも、「ユルい」キャラクターというのは、非常に有効だと感じています。ラグビーを知らなかった本人の成長もそのままに見てもらうことができるのではないかなと思います。

 漫画を描く作業自体も、約1時間で仕上げてくれますし、方向性についてもきちんと確認しています。たとえば、RWCでは海外から福岡に来る方も多いので、福岡市の施策として「キャッシュレス」の話を盛り込んでほしいといった要望も出てきましたので、屋台でキャッシュレスを使うという展開もありました。

Q7.それでは、最後になりますが、「ラグ村ラグ江」さん、PRをどうぞ。

 吉村 ぜひ、スタジアムに来ていただいて、世界最高峰の戦いを味わってほしいです。それがかなわない方にはパブリックビューイングも準備していますので、足を運んで、皆で世界大会の盛り上がりを楽しんでほしいです。

 福岡以外の方はこれをきっかけに、福岡のいろいろな観光スポットにも足を運んで福岡を好きになってほしいです。RWCは一生に一度のお祭りなので、一緒に楽しみましょう。

(まとめ・構成/井上 剛)

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