香港、マカオ、深圳 視察報告 「世界一港湾都市」奪取計画の現在地(後)
2019年8月19日 09:50



香港自治行政への「浸食」
香港国際空港のマカオ行きバスターミナルは大陸(珠海市)方面行の団体客が溢れ、長時間の待機を余儀なくされた。この際、我々日本人には何も言わない職員が、中国人団体客に対してわずかな列の乱れでも声を荒げて整列を促す場面があった。
10年ほど香港に在住する日本人は「あり得る」と指摘する。同氏は移住当初、大陸なまりで話していたことから何度も冷たくあしらわれたという。その後、自身が日本人と判明すると口調が柔らかくなり親密になったという。香港と中国や近隣都市との関係に変化が生じている。中国GDPの多くを担っていた香港は深圳ら大陸側の急成長により存在感が低下した。また、大陸からの移民や経済進出は不動産高騰の一因となっており、マンション価格の高騰を招いている。香港人や在留日本人は経済の活性化を喜ぶ一方で「政治面だけでなく、生活コストが上がったことに不快感をもっている」と口をそろえる。
政治・行政面でも明らかに中国政府の影響力が高まっている。深圳(福田駅)から香港(西九龍駅)までは延伸した高速鉄道を利用した。中国側の出国手続きと香港への入国手続きが香港側の駅で同時になされていたのだ。中国政府は向こう50年間の「1国2制度」の維持を示すが、中国政府により新設された行政機関による香港自治行政への「浸食」は既成事実化されている。
中国政府への反発や経済面での存在感低下があるとはいえ、海外と中国を結ぶ要衝には違いない。今後、香港・マカオ・広東省深圳市の3都市は政治体制の壁はあるものの、特徴や役割の棲み分けや役割分担で規模的にも機能的にも世界No.1の港湾都市エリアを実現しそうな気配だ。

(了)
【鹿島 譲二】
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