2024年11月13日( 水 )

「ジョブ・リターン制度」に見る、採用制度多様化の社会的リスク

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 「ジョブ・リターン制度」をご存じでしょうか。結婚や出産、介護などが理由で退職した人材を再雇用する制度で、働く側はキャリアを生かした復職が、企業側は即戦力の確保が可能とされています。
しかし、「ジョブ・リターン」が社会に利益をもたらす良い制度かというと、いくつかの疑問が生じます。

 まず再雇用の促進は、退職者および退職検討者にとって、転職しやすい環境を生み出します。制度を導入することができるのは、余力の大きい大企業で、退職理由に縛りを設けない事例もあります。中小企業から大企業への復帰が容易になれば、人材難に苦悩する中小企業から、さらに人材が奪われることにつながります。
 次に、再雇用枠が大きくなることで、新規応募者の就職が不利になる可能性があります。企業側からすると、1から仕事を教える必要がある新規採用者よりも、確実に戦力となる元社員を望むのは必然です。
 また、条件を満たせば誰もが再雇用可能というわけではありません。退職前の能力や成績によって、採用不採用が生じます。有望な人材とそうでない人材とで、能力格差が顕著となるのです。

 働き方が多様化するうえで、採用手法も変化するのは必然的です。しかし、求職者の選択肢の増加・利便性向上には、デメリットもあります。たとえば、求人サイトの一括エントリーや履歴書の使いまわしにより、面接のドタキャンや無断欠席が急増し、問題となっているのです。
 出産・育児や介護などで、退職せざるをえなかった人材の再雇用が進むのは良いとして、安易に再雇用制度が増加すると、企業間での人材の入れ替わりが激しくなり、職場に混乱を来す恐れがあります。
 なにより、短期間であちらこちらを行き来していては、個人にとっても十分なスキルを構築する機会が喪失されてしまうでしょう。


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