2024年12月01日( 日 )

メモリの覇者から半導体産業の王者を目指すサムスン(後)

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日韓ビジネスコンサルタント 劉 明鎬 氏

 メモリ分野で世界一になったサムスン電子は、2030年までに非メモリ分野でも世界一になって、名実ともに半導体産業の世界一になると宣言した。サムスン電子はファウンドリ事業でもTSMCについで世界2位につけている。

 ほかの企業が設計のみ行っているなかで、サムスン電子は設計と生産を同時にやっている。ほかの設計会社はサムスンがライバルなので、同じ条件であれば、サムスンではなく、台湾のTSMCに生産を委託しようとする。ファウンドリ事業の仕事の確保のためにも、サムスンは変動の激しくない非メモリ事業に進出し、ファウンドリ事業の育成と事業の安定化、事業規模の拡大を追求する必要があるわけだ。

 サムスン電子は非メモリ事業で世界一になるために、どのような戦略をもっているのだろうか。サムスン電子は非メモリ市場のなかでも、車載半導体に狙いを定めている。

 車載半導体の市場規模は2017年が345億ドルで、CPUなどと比較すると、市場規模はまだ小さい。しかし、今後、車載半導体市場は大きく成長することが予想されているし、実際に市場は急速に成長している。

 車載半導体にはスマホより、さらに高い技術力が求められる。また、数量も多く、付加価値が高いというメリットがある。

 幸いなことに車載半導体分野では、まだ絶対的優位に立つ会社が存在しない。サムスン電子では自動走行などの技術のほとんどを有している。今年の秋にはアウディに「エクシノスオート」という半導体を納品する予定である。

 サムスン電子は車載半導体市場進出への布石として、2017年3月にカーオーディオで世界一の企業であるハーマンインターナショナルという会社を80億ドルで買収している。ハーマン社がもっている技術力とグローバル自動車メーカーとの関係を活用するためである。

 サムスン電子は現在キャッシュで104兆ウォンを確保している。必要なら車載半導体で世界一の企業であるNXPなどを買収する可能性もある。もし、それが現実になれば、サムスン電子は車載半導体分野で地盤を強固にすることができる。

 サムスン電子は非メモリ分野で世界一になるために、車載半導体以外にも、次の3つの事業に力を入れている。その1つが、現在ソニーが世界一になっているイメージセンサー分野、それからファウンドリ事業、最後にスマホのCPUに当たるアプリケーションプロセッサー事業である。

 半導体は韓国の輸出全体の20%を占めている。韓国の産業のなかで半導体ほど、大事な産業はない。また、これまで韓国の産業のなかで、これほどまでに競争力をもった産業もなかった。

 半導体産業での競争力が韓国の命運を左右することになると言っても過言ではない。サムスン電子が非メモリ分野でも成功するかどうかは、そのような意味合いでも重要である。

 メモリ分野では中国が自国市場の強みを利用して挑戦してくることは間違いないし、非メモリ分野も既得権勢力との激しい競争になるのは目に見えている。

 今回の日本の対韓輸出規制もそのような動きの1つであるかもしれない。産業の競争力を左右する半導体産業におけるサムスン電子の挑戦と、それに対抗する勢力の戦いは壮絶なものになるだろう。今後どのような展開になるか興味津々である。

(了)

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