2024年12月23日( 月 )

「国売る政治家になぜ声荒げないのか」と山本太郎、「反日」中傷に 帯広

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聴衆に語り掛ける山本氏(2019.9.27筆者撮影)
聴衆に語り掛ける山本氏(2019.9.27筆者撮影)

 「れいわ新選組」の山本太郎代表が27日、北海道帯広市内で今ツアー最後となる街頭記者会見を開き、最初に北海道を回った理由について「誤った政策によって衰退していく象徴」と説明するとともに、自身が時折「反日」呼ばわりされることに対し、「この国を切り売りしていくような政治家たちに対してどうして声を荒げないの」と反論した。

 18日に利尻島から始めた北海道ツアーは10日間をかけて稚内、網走、釧路、根室、札幌、旭川を回った。要望に応え、場所と日程を一部拡大したが、天候のため、礼文島と根室でのポスター張りが中止になった。

 最終日、JR帯広駅北口広場には約200人の市民が集まった。地元ボランティア約20人が設営やグッズ販売、ポスター配布、寄付受付などを手伝った。午後5時半から2時間20分超、山本氏が市民と言葉を交わした。

 冒頭、山本氏が北海道を最初のツアーに選んだ理由について説明した。「国会議員として6年間見た政策が地方創生につながったかと言ったら、寄与していない。もうかったのは東京のコンサルと、政治とつながった一部の業者だけ」と退けた。

山本氏(2019.9.27筆者撮影)
山本氏(2019.9.27筆者撮影)

 今ツアーの最中、ある自治体の市長から「小泉政権以降、地方交付税の約1割が削減された。民主党政権で戻ったが、安倍内閣でまた絞られている」とこぼされたことを明かし、「かなり厳しい状況。地方を盛り上げるなら、まず予算を。何を今さら東京五輪だ」と指弾すると、「そうだ」との歓声や指笛が起きた。

 安倍・自民党が「TPP(環太平洋経済連携協定)断固反対」との公約をほごにし、事実上の日米FTA(自由貿易協定)で「TPP以上のものを差し上げる道筋を付けている」ことを挙げ、「もうはっきり言って、この国に生きる人のことは目のなかに入っていない」と突き放した。

 「誤った政策によって衰退していく象徴はどこかと考えたら、北海道だと思う。この北海道から日本を変えようと、皆さまと約束しながらやっていきたいと、スタートの場所にした」と説明した。

 会場から、洗剤や柔軟剤などに含まれる香料から来る「香害」問題について意見を求められた。別の女性が住宅リフォームをきっかけに化学物質過敏症に苦しんでいる現状を報告。山本氏は、「調べる」と興味を示した。

 憲法改正について、山本氏の見解を求められた。山本氏は「安倍政権下では反対。自民党政権下でも反対」と表明。2012年に自民党が発表した憲法改革草案の中身に触れ、「憲法の意味をわかっていないから」と述べ、権力を縛るための憲法で国民を縛ろうとする姿勢を戒めた。

 2018年3月に自民党が挙げた改憲4項目について、「9条への自衛隊明記や合区の解消など3つはダミー。本丸は緊急事態条項」と看破。「これは独裁者にとって自由に使える魔法のつえ」とけん制した。

開始時の聴衆(2019.9.27筆者撮影)
開始時の聴衆(2019.9.27筆者撮影)

 一方、「ただし、憲法はまったくいじってはいけないとは思わない」として、集団的自衛権を認めた2015年の安保法に言及。「解釈による憲法違反詐欺を取り締まる文言を入れるべき。しかし、今は無理。憲法の重要さが国民にまだ理解されていない」との考えを示した。

 年金について「払う意味があるか」と20代の主婦から質問があった。山本氏は「年金は破綻しない。給付額が減るだけ」と断じた。現役世代が高齢者を支える賦課方式を前提とする現制度では、少子化を解決する以外ないとして、教育投資や公的住宅の確保、低収所得世帯への補てん(ほてん)の3つの政策を提案した。

 終盤、山本氏は「私がやりたいことは、死にたくなるような世の中をやめたいということ」と切り出した。毎年2万1,000人以上が自殺、50万人以上が自殺未遂し、10代から30代までの死因の1位が自殺であることを挙げ、「もう、壊れてる。狂ってる」と嘆いた。

 子どもの7人に1人、単身女性の3人に1人が貧困である一方、税の滞納の6割を消費税が占め、ほとんどが中小企業である実態を挙げ、「れいわ」が消費税廃止や時給1,500円「政府が補償」、奨学金チャラなどを訴えている理由を説明。次のように続けた。

 「こうやって街頭でしゃべっていると『反日』といわれることがある。『日本をおとしめているやつだろう』と。ちょっと待って。日本をおとしめるような政治を進めている人たちが国会のなかにいるのに、どうしてそっちに文句を言わないの」

 「たくさんの貧困、生活困窮を生み出し、中小企業の首を絞めている、まさにこの国を切り売りしているような、この国に生きる人たちの首を絞めるような政治家たちに対して、どうして声を荒げないの。どうしてメッセージを伝えないの」

 そのうえで山本氏は、「20年以上続くデフレの原因、経済政策の間違い。デフレのときに増税するばかがどこにいるんですか」と憤った。

 「財政再建、財政規律の議論が必要というなら、ちゃんとこの国の景気を立て直してからにしてくれますか。数々の貧困や生活困窮があるなかで、増税をしたら人、死にますよ」

 実際、消費税を3%から5%に引き上げた翌1998年、自殺者数が激増していて、失業率と自殺者数は相似形を成す。

日銀資産循環統計からのグラフ(2019.9.27筆者撮影)

 山本氏は日銀資産循環統計をグラフに示し、政府の赤字が国民の所得増と相関関係にあることを解説。国債のさらなる発行による財政破綻の懸念に対しては、財務省が2002年にムーディーズやS&Pなど格付け会社に出した「自国通貨建て国債のデフォルトは考えられない」「ハイパーインフレの懸念はゼロに等しい」などの反論を紹介した。

 帯広市内に住む60代の夫婦は初めて山本氏の演説を聞いた。印象について妻は、「まともな人だ。長く生きてきた人間として恥ずかしい。こういう人をちゃんと(国会に)出してあげられない。くだらない人間ばかり国会議員にしていることが」と吐露した。

 今後の期待について夫は、「トンデモ法をとにかく全部なくす。特定秘密保護法のときから怒り心頭に発している」と述べ、同法やTPP協定、PFI法、水道法、カジノ法などの破棄・廃止を切望した。

<プロフィール>
高橋 清隆(たかはし・きよたか)  

 1964年新潟県生まれ。金沢大学大学院経済学研究科修士課程修了。『週刊金曜日』『ZAITEN』『月刊THEMIS(テーミス)』などに記事を掲載。著書に『偽装報道を見抜け!』(ナビ出版)、『亀井静香が吠える』(K&Kプレス)、『亀井静香—最後の戦いだ。』(同)、『新聞に載らなかったトンデモ投稿』(パブラボ)。ブログ『高橋清隆の文書館』。

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