忍び寄る中国の経済危機(後)
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日韓ビジネスコンサルタント 劉 明鎬 氏
不動産バブルはどのような状況だろうか。中国の都市化はほかの国と少し異なるところがある。ほかの国でも例外なく都市化は進んでいるが、農村から都市に人が集まると、それに合わせて都市を開発していた。しかし、中国は別のアプローチを選択した。
1990年以前は農地であった浦東地区に高層ビルを建てると人々が集まってきた。中国はこれをきっかけに、「中国は人口が多いので、先に都市を建設しておくと、人が集まるだろう」と錯覚するようになった。中国の新都市建設計画を合計すると、すでに34億人が住めるような都市が建設されているという。
中国の内蒙古にある康巴仕(カンパシ)という新都市を例に挙げよう。中国は康巴仕を100万人規模の都市として建設したが、ほとんど住む人がおらず、「幽霊都市」となっている。中国にはこのような幽霊都市が30カ所に上ると推測されている。
なぜ、このようなむやみにも思える新都市開発が進められているかというと、都市開発に成功すると、地方自治体に莫大な利益がもたらされるからだ。地方自治体は農民から二束三文で土地を収用し、建設会社に高く売ることによって利益が発生していた。2007年から2015年までの7年間で、このような土地販売によって得た収益は22兆元に上るという。また、不動産開発は腐敗した公務員にとって収益が発生する絶好の機会でもあり、こうした不動産開発によって中国の経済が発展してきたといっても過言ではない。
しかし、中国政府の経済の支えでもある不動産価格は2016年には上昇が止まり、2018年から価格が下降に転じている。不動産バブルがはじけると、地方自治体をはじめ、銀行、建設会社などが軒並み問題に直面することになる。
不動産価格の下落により、中国経済の問題が徐々に浮き彫りにされつつある。とくに、中国の不動産開発会社は破産の危機に見舞われている。これまでは海外からの負債で開発を進めてきたが、不動産価格の下落により、資金繰りに追われて、危機に瀕しているからだ。中国の不動産開発会社の負債合計は3,500億ドルだが、その内965億ドルは今年返済しないといけない。
最後に、中国のゾンビ企業について述べていこう。2018年以降、中国の成長率が下がることによって、ゾンビ企業が大幅に増えているとされ、大きな問題となっている。
ゾンビ企業がなぜ問題かというと、競争力のない企業が市場から消えずに生き残って、生存のために価格を下げたりすると、ほかの企業もだめにして、さらにゾンビ企業を増やす恐れがあるからだ。
中国は国営企業が多く、市場原理よりも政府の支援によって維持している企業が多いので、政府の補助金をなくしてしまうと、赤字に転落する企業はもっと多くなるだろう。中国は鉄鋼、造船、化学など21の業種で、過剰生産に悩まされている。ゾンビ企業の悪影響の端的な例である。
統計によると、中国の企業の20%ほどがゾンビ企業であるとされているが、その統計すら信用できない。中国の企業負債はGDP対比160%。米国70%、ドイツは50%なので、いかに中国の企業負債が多いのかがわかる。借金をして不動産開発を行い、成長してきた中国経済だが、それに限界が見え始めている。中国の経済危機は現実化しそうだ。
(了)
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