【飯塚事件のその後】再審請求10年の飯塚事件~「疑惑の死刑」責任者たちの今(4)
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やましい思いを隠し切れない人物も・・・
久間氏に対する死刑執行のもう1つの決裁文書「死刑執行について」に押印していたのは、法務省の矯正局と保護局の幹部だった次の6人だ。
・尾崎道明氏(矯正局長)
・大塲亮太郎氏(矯正局総務課長)
・富山聡氏(矯正局成人矯正課長)
・坂井文雄氏(保護局長)
・柿澤正夫氏(保護局総務課長)
・大矢裕氏(保護局総務課恩赦管理官)このうち、尾崎氏、大塲氏、坂井氏の3人も検察官だ。
尾崎氏は東大法学部出身。久間氏の死刑執行を決裁後、公安調査庁長官、高松高検検事長、大阪高検検事長を歴任し、2015年12月に定年退官している。現在は弁護士に転じ、東日本高速道路で社外監査役、かんぽ生命保険で社外取締役を務める。
尾崎氏が2社から受け取っている報酬を小津氏らと同様の方法で試算すると、東日本高速道路から年に約867万円(千円単位以下は四捨五入)、かんぽ生命から年に600万円だと推定される。
さらに尾崎氏は、世界各国に事務所を有する弁護士法人、瓜生・糸賀法律事務所の特別顧問も務めているので、同事務所の仕事でも相当な収入があると推測される。
もっとも、尾崎氏が社外取締役を務めるかんぽ生命は現在、過去5年だけで不適切な疑いのある契約が18万3,000件にのぼることが発覚し、信頼は地に落ちている。経営を監視する役割を担う社外取締役である尾崎氏もこの不祥事の責任を負うべき立場だ。
続いて、坂井氏。久間氏の死刑執行を決裁後、さいたま地検の検事正を務めたのを最後に2012年4月に辞職しており、検事長までは出世できなかった。ただ、坂井氏は慶大法学部出身で、26歳で司法試験に合格、29歳になる年に検事任官したという経歴だ。検察庁で検事長以上に出世する者の多くは、東大法学部出身者や、20代前半で司法試験に合格し、20代半ばで検事任官したような者であることに鑑みれば、坂井氏は十分な出世をはたしたといえる。
辞職後は弁護士にならず、麹町公証役場で公証人を務める。全国に約500人いる公証人は裁判官、検察官、法務省職員が天下り先として独占しているポストで、仕事が楽なのに、年収が2,000~3,000万円におよぶ者もザラだといわれる。
一方、大塲氏は早大法学部出身で、23歳で司法試験に合格、26歳で検事任官したという経歴。久間氏の死刑執行を決裁後は、法務省大臣官房施設課長や同秘書課長、津地検検事正、最高検公判部長を歴任した。
現在は59歳で、法務総合研究所長の地位にある。歴代の法務総合研究所長は、次の人事異動で高検の検事長になった例が多いので、大塲氏もそうなる可能性が高い。給与月額表には、法務総合研究所長の年収は記載されていないが、すでに検事正を務めているので、年収は「検事一号」の2,357万2,262円だと推測される。
尾崎氏、坂井氏、大塲氏にも特定記録郵便で久間氏の死刑執行は間違っていなかったと今も思うかを聞きたいと申し込み、電話した。
尾崎氏については、女性秘書から「海外に出張しており、9月末まで戻りません」と告げられ、入稿締め切りまでに回答を得られなかった。
坂井氏は本人が電話に出て、「具体的な事件の内容ですからね。しかも、現職ではございませんので、何か申し上げる立場ではございませんので、ご勘弁ください」と回答を断った。電話口での態度はおどおどしており、やましい思いを抱えていそうな印象を受けた。
大塲氏は、法務総合研究所総務企画部企画課の男性職員が「せっかくの取材の申し込みですが、『お断りさせていただきます』と大塲が申しております。取材を断る理由についても『差し控えさせていただきたい』というかたちです」と回答を拒んできた。
(つづく)
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