2024年11月25日( 月 )

関電疑獄(3)~不条理な弁解の数々

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1 史上最大の疑獄事件

 本件疑獄事件は、国民全部を欺き、独占的大企業の電力会社が組織ぐるみで贈収賄事件をもみ消そうとした事件という意味で史上最大の疑獄事件である。

 ただし、この結論は、現時点では筆者の大胆な仮説にすぎないことをお断りしておく。

2 仮説によって証明されなければならない不条理

(1)発注者と受注者の力関係は発注者が上位であって、受注者が上位になることは経済原理上あり得ない。そのような不条理な関係が1回や2回どころか数年間にわたり、かつ多数回にわたり存在することはなお一層あり得ない。

(2)力関係から見て、弱者(受注者)が強者(発注者)に対して望まない行為を強要することは論理的にありえないが、かりに強要行為が存在した場合、被強要者はそれを法的に解決する能力をもつ。

 普通の一般人であっても、警察に強要罪として告訴するか弁護士に相談して適切な法的対応をして問題を解決する。関電には裁判官出身の弁護士や検察官出身の弁護士が通常は天下りして、社外取締役や監査役として複数存在する。それらの法的用心棒に相談し、解決しなかったことは、これまた不条理と断言できる。

(3)賄賂を受領しなければ、「ダンプカーを住居に突っ込ませる」とか「子女に危害を加える」とかの脅迫を受けた、と受領者は弁解する。これは理不尽な金銭要求者(通常は反社会的人間)の言動であって、普通の公務員である賄賂の提供者がいうセリフではない。普段から元助役と接触のあった受領者の弁解としては極めて不条理である。ここまで違法に強要されたのであれば、当然、警察に告訴すべき程度段階である。

 以上の(1)、(2)、(3)の不条理は元助役の死によって、確認することができない受領者の一方的「死人に口なし」論である。この論法によって多数の受領者の弁解が統一されている奇妙な事実であることが問題解決(仮説の導入)の1つの糸口である。

(4)元助役は長年、地方公務員として公務員生活を送り、無事定年退職した。一地方公務員に日本の独占的大企業の取締役や重職者を不当に威圧する力、無条件に服従させる力など存在しない。元助役と関電の役員・重職者との接点は原発立地に関する問題、関電が発注する原発関連工事契約が主なものであるが、仮にこれらの接点で不正・違法行為があれば、それは共犯関係となるのであって、一方的な力関係(上下の力関係)となることはない。

 この接点においても、通常は関電が優位的地位にあるのが一般である。それは基本的にすべての資金の提供者の地位にあるからである。

(5)不当な脅迫・強要によって、金品を受領しても、それが直ちに違法となることはないが何の目的もない行為を普通の正常人が行うこともないから、元助役の賄賂受領の強要は何らかの違法目的が存在すると、受領者側が思考することも、これまた当然である。

 本件ではその結論として、賄賂の強要は元助役の自己顕示欲に基づく示威行為と認識したことが、これまた、受領者20人の全員の認識と調査報告書はいう。誰1人として、不正の目的をもった金品の提供とは認識しなかったという。このような弁解や調査報告自体が不条理という他ない。賄賂の提供、それも強要的提供は、その賄賂に見合うだけの反対利益の要求期待かすでにそれに見合う不正受益の謝礼・対価と理解するのが条理である。

(6)返済時期の不条理
 受領を拒めば、関電の原子力発電業務に支障(妨害行為による)が出ると心配したから止むなく受領したとされる。仮に元助役が激高して、関電の原子力発電業務を妨害するとして、それは具体的にはどのようなことができるのか。

 しかも、受領した賄賂を返却した場合、それは単に受領拒否の時間的遅延にすぎないから、妨害発生は避けられない。その意味で、しかるべき返却時期まで受領を継続した、という弁解自体、背理・不条理の弁解である。

 原子力発電業務にかかる事柄で一助役である人物が妨害する行為など存在しない。存在しない妨害や支障を口実にした受領は不条理そのものである。

(つづく)
【凡学一生(東京大学法学士)】

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