2024年12月22日( 日 )

メガソーラーに揺れる宇久島~着工目前、島民の声(2)

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 ある島民は事業者からの説明が不足している点を挙げ、「土地所有者の多くは高齢者だが、無知につけこんで目先のお金で釣った感じもする。事業者はきちんと説明しているのだろうか」「説明会に参加するたび、着工予定がコロコロ変わっている。『実のところはどうなのか』をきちんと島民に向けてわかるように説明してほしい」「事業に着工するといっておきながら、かれこれ5、6年が経過している。途中で事業者が変わっているようだが、その説明もない。島民に対して説明不足ではないか」という声も聞かれた。

 治安の悪化や災害に対する備えを懸念する声もある。「着工すれば1,000人超の人が島外から働きにやって来ると聞いている。島には高齢で1人身の家庭も多いので、防犯面が心配」「通学路の近くに作業員の宿舎ができるという話があるが、自治体の対応は間に合うのか」「地域によっては家に鍵をかけるという習慣が根付いていないところもある。島の駐在所にいる署員はたった2人。これで島の治安が守れるのか」「災害に対する備えは万全なんだろうか。以前、試験的に設置された風力発電の風車は、雷が原因でだめになったが…」などといった不安の声が聞かれた。

半ば「あきらめ」ともとれる声の真意

 島民に話をうかがうと、立場を問わず共通して聞こえてきたのが、半ばあきらめにも似た声。

 Aさんは「そもそも、この事業が行われるのかどうかも怪しいが、私も高齢で、もう長くは生きられないでしょうし、島の将来を考えられるような年齢ではないと思っている。もう、そんなことは考えずに、残りの余生を気楽に生きていきたい」と話す。Aさんに黒く覆われる島の図を見せたが、「パネルで島が黒くなるなんて思ったこともないし、考えたこともない。自分の子どもや孫世代は、もう島に帰ってくることはないし、この家も土地も私の代で終わりでしょうから、言葉は悪いが関係ないといえば関係ない」と話した。

 Bさんは「すでに歳を取っているし、跡継ぎ(子ども)がいないから土地を貸すことにした」というが、「土地の賃貸借期間が終わるころには、私を含め、この集落周辺の人は、ほとんどいなくなるだろう。先のことはわからない。その時はその時だ」とも述べた。

 宇久島に一時帰省中というCさんは、「島全体のことを考えると、島は島なりに自然がある故郷であってほしいとも思うが、島を訪れる度に知り合いが周りからいなくなっていくのが寂しい」と話す。「私のような普段島外に住んでいる人間が、島のことをあれこれいうのもどうかと…いい考えをもっている人がいれば、それに賛同していこうと思うが、今の自分にはその体力も知恵もない」とやや言葉を濁した。離れていても故郷を想う気持ちはあるが、その想いだけでは、もはやどうにもならないことを痛感しているのだろうか。その表情は幾分寂しげにも映った。

 Dさんは、「今でこそ、子どもや孫たちは帰省する度に『この島にきたら癒される』『元気になれる』と言ってくれている。しかし、私たちが亡くなったら島には来ないと思う。集落によっては一帯に樹木が生い茂り、車の通行もままならない状態。行政の管理も行き届いていないなかで、わざわざここまで来ようとは思わないのでは」と話した。Dさん自身は、自分が亡くなったら「墓じまい」をして、遺骨を島外に持ち運んでもらうことを望んでいるという。

 Eさんは「最初この話が出た時にもっと考えをしっかり持っておけばよかったとも思うのだが、今さら賛成・反対とはいえない」と話す。事業が進むことによって島の景観が失われることは確実だが、それでも構わないのか?という問いに対しても、「初めの段階できちんとしていれば、こうはならなかったかもしれない」と返答。記者が繰り返す質問に対して、他人事のように、「あの時こうしていれば」「初めからきちんとしていれば」と繰り返す様は、まるで「乗りかかった船だから」とでも言わんばかりだった。見方によっては、「あきらめ」ともとれる様子に言葉を失うしかなかった。

(つづく)
【長谷川 大輔】

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