2024年12月22日( 日 )

メガソーラーに揺れる宇久島~着工目前、島民の声(3)

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島の将来を憂う声は

 Fさんは黒く塗りつぶされた島の全体図を見て、「こんなに黒くなってしまうんですか?」と驚きの表情を見せた。自身は土地を所有していないため、賛成・反対という明確な立場を採ることはできないというが、「だからと言って、このまま島が寂れていくのは…何かしら島が維持できればいいですが、ソーラーパネルが設置されたとしても、その後の島がどうなってしまうのか、想像もつかない」と話した。

 Gさんはどちらともいえない立場ながらも、将来的に島の自然が破壊されることを危惧している。「土地をもっている人からすれば、普段使わない土地を貸してお金がもらえるのは経済的にも助かることはわかる」と一定の理解を示したうえで、「事業者に対して言いたいのが、『そんなに多くの土地が必要なのか?』ということ。昨今、太陽光の買取価格が下がりつつあるなかで、宇久島メガソーラー事業は本当に必要なのか。このままだと将来的な負担が月々の電気料金に上乗せされ、のしかかるのは確実」と話した。また、ソーラーパネルに近い地域では周辺の温度が上がるという点にもふれ、「土地の所有者の気持ちもわかるが、やはり環境への影響は避けられない。本来手を加えるべきではないところにまで手を広げてしまうことについては、声を挙げるべきではないか」と語気を強めた。

 Hさんは事業そのものに懐疑的な姿勢を示し、「島民ではなく、事業者が潤うだけ」と警鐘を鳴らす。「今、電力が余っていると言われているにも関わらず、この事業を無理して進める必要があるのか。事業者や賛成の立場の人間は『島の活性化のため』というが、結局はお金。結果的に島の自然を壊し、失われた自然は簡単には元に戻らないのに、彼らにとっては失われる自然よりも目先のお金のほうが大事なんでしょう」と語った。

 そのうえで、「反対の立場をとる人も、単に自然破壊という表面的な部分だけではなく、仕組みを知ることが大事。たとえば電気料金の仕組みから考えて、この事業を行うことで将来的な電気料金の負担が今より確実に増えるであろうことも知っておくべきだ」と話した。

 Iさんは土地を貸し出している手前、表向きは賛成としているが、「事業者が初めて説明にきてから6年近く経つが、工事がなかなか始まらないので、今は事業が進んだ方がいいのか、進まない方がいいのか、よくわからなくなっている」と話し、内心は複雑な心境であることを吐露した。

 「土地を貸して実際にお金も受け取っているので、表立って『反対』とはいえないのだが…ただ、ネットで調べてみても、普通6年も経てば大概の事業は完成しているのに、宇久島はまだ着工予定のまま。昨年も着工予定、今年も4月着工予定が9月に延びて…と毎年繰り返されている状態で、ここまできてしまうと、もう事業者からのお金は当てにしていない。むしろ事業に出資した各社が、この状況をよくも黙って見ていられるな、とも思っている」と話した。

 Jさんは普段使っていない土地を使用する分については問題ないとしながらも、自分たちの生活に関わる土地にまで事業者からソーラーパネル設置の話が出ていることに苦言を呈する。

 「島には畜産業に従事している島民も多くいます。中には人から土地を借りて牧草を育てている人もいますが、今問題になっているのが、これまで土地を貸してもらっていた人から『パネルを設置するので土地はもう貸せない』と言われてしまっていることです。畜産農家からすれば、自分たちの生活に関わる部分なので、土地を使えないのは困るのですが、これまで無償で使わせてもらっていた手前、あまり強くはいえないようで…」。

 また、島内にある「郷有地」(各地区が独自の取り決めの元で所有している土地)についても触れ、「郷有地をめぐって、地区内で揉めているという声が聞かれます。郷有地は基本的に地区内のもの。それ以外には貸さないという取り決めがされているはずなのですが」と話し、事業者による金銭交渉によって島民同士の信頼関係が崩れ、島内の調和が乱れてしまう可能性を示唆した。

 Kさんは島民のなかで、こうしたさまざまな意見が出ていることを踏まえながら、今後メガソーラー事業がどうやって進んでいくのか、その結果、島の将来がどうなるのかについて、その全容を知る島民が誰もいないことを危惧している。

 「事業が一通り終わった後、島に何が残るのかを考えた時、真っ先に思い浮かぶのは、ソーラーパネルで黒く覆われた島と、ソーラーパネルを現地で管理監督する仕事に従事する人。管理監督といっても、仕事の中身はソーラーパネル周辺の樹木や雑草などの伐採作業。自然もない、人もいない島に何の魅力を感じるだろうか。もし、これが現実となるなら、わざわざ宇久島で仕事をしたい、宇久島に帰りたいと思えるだろうか。結局のところ、どんなに手を加えたところで、遅かれ早かれ、島から人はいなくなるという大きな流れは変わらないと思っている。島の将来を考えると寂しいが、何をやっても結果が変わらないのであれば、もう島の振興だ、メガソーラー事業だのと言ってあれこれ手を加えず、このまま静かに島の行く末を見守って欲しいとも思う」と話し、生まれ育った島の将来を憂いながらも、島に待ち構える運命と、やがて訪れるであろう島の将来を語った。

(つづく)
【長谷川 大輔】

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