2024年12月22日( 日 )

メガソーラーに揺れる宇久島~着工目前、島民の声(4)

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島の繁栄を望む声も

 その一方で、島の繁栄を望む声も。Lさんは島の自然に惹かれて島外から移住してきた1人。

 「誰も使用していない土地のみを使用するのであれば、まだ理解できますが、現在誰かが使用している土地にまでソーラーパネルを張りめぐらそうとしていることには疑問を感じますね。土地の所有者もそこら辺は考えて欲しいところですが」と冷静に話す。「宇久島は周りを海で囲まれ、きれいな浜辺もあり、自然にも恵まれている部分は強み。島民の皆さんにとっては当たり前の光景かもしれませんが、私のような島外出身の人間にとっては新鮮に映る。島民の皆さんは賛成・反対問わず、島の多くがパネルで覆いつくされ、貴重な自然が失われることの重大さを理解しているのでしょうか」と疑問を投げかけた。

 Lさんは、「島には直行便がある訳ですから、振興策としてもっと観光目的で島を訪れる人が増えるような仕組みがつくれればいいのですが・・・。私が初めて島を訪れた際に気になったのは、場所によっては道路の整備も追いついておらず、せっかく訪れた観光地も手入れが行き届いていなくて藪になっていたこと。はるばる遠くから訪れたのに、とても残念でもったいないと感じました。実際に移住してみても、周りに娯楽施設が豊富にあるわけではなく、もっと若者が集まれる場所があってもいいのにと思いました」と述べた。

 Lさんは続けて、「島民の皆さんは、そういうところをもっとよくしていこう、増やしていこうという視点には、なかなかたどり着かないものなのですかね。せっかく自分たちの想いを伝えても、『前もやったが駄目だった』となってしまっていることが多いような気がして…だからといって、このまま何もしなければ、島がソーラーパネルで覆われてしまう。そうなると、ますます人は来なくなってしまう。せめて何とか、今ある自然と共存するようなかたちにできないのかと思っています」と述べた。

島の将来ははたして

 およそ2日間かけて宇久島をめぐり、午後出港のフェリー「太古」で宇久島を後にした。船中で2日間に出会った島民それぞれの立場について想いを巡らせ、「島の将来を自分たちで決められない、島の人たち」の現状を憂えざるを得なかった。

 緑豊かな自然が残る「天然の島」と、ソーラーパネルで黒く覆われ、不気味に黒光りする「人工的な島」――近い将来の宇久島は、はたしてどちらの姿になるのか。そして、どちらがふさわしい未来の島の姿であろうか。そして次の世代は、どちらの島の姿を望むのであろうか――島の変わりゆく姿を今後も報じていきたいと思う。

(了)
【長谷川 大輔】

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