日本文明の恥~関電疑獄事件
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1 世界の注目をあびる日本の原子力発電事業
歴史上、脅迫・恫喝で金品を強制的に「受領させた」例は世界中どこにもなく、今後も世界中のどこにも出現することはない。しかも、それが死人に口なし論で、証明不可能、証拠なしで公然と全国民に公表されたことも例がない。
このような不条理・非常識な事件が公共性の高い独占的電気事業者のまだ事業安全性について未知の部分が多い原子力発電事業に関して発生したことも、世界の人々の注目をあびている理由である。日本が世界に発信している原子力発電所に関する情報は本当に信頼してよいのか、とくに福島原発事故の汚染水の処理問題についての情報に信頼性はあるのか、と世界の人々は疑念を抱くだろう。日本文明の「恥さらし事件」であることは明らかである。
2 またも繰り返される騙しの論理―「不適切だが違法ではない」
この命題はマスコミで今なお盛んにコメントを発信する舛添要一元東京都知事の政治資金規正法違反嫌疑事件で世論が沸騰したとき、舛添氏が「第三者委員会もどき」で調査報告を依頼したヤメ検弁護士2名の考案したヤメ検弁護士御用達新案特許命題である。今回の事件においても調査報告書なるものが登場し、この命題が横行していることは、やはりヤメ検弁護士が周辺・背後にいることを推認させる。
この命題は法論理でいえば、滅茶苦茶な論理命題・日本語である。わかり易くいえば、「竹に木をつないだもの」である。従って、ヤメ検以外の法律家が使用した例を筆者は知らない。
違法判断は法的判断で、それは特定の法律要件が客観的に実在する事実に適用されるか否かの客観的判断・没価値判断であるが、適切性判断は、まったく個人によって多種多様の道徳観や価値観に基づく主観的判断・価値判断である。
今回の元助役の行動について、死人に口なし論であることはさておき、強制的に金品を受領させたことについていえば、ひとの嫌がることを無理にやれば、これは不適切ではなく、立派な強要罪という犯罪行為・違法行為である。
もちろん、その強制的行為の手段が脅迫であるから、その強制行為自体も違法であり、そのことで、被強要者に精神的苦痛が生じれば、民事法的にも不法行為が成立し、損害賠償責任を生じる。この全体をヤメ検論理は単に不適切と判断し、何の違法性もないと主張することになる。いかにヤメ検論理がごまかしの論法であるかは明白である。もっともこれは元助役の行為についての判断であるが、受領を強制された関電役員・重職者は、「受領が強制的に行われた、強いられた」ということが真実であれば、その受領はまったく不適切ではない。なぜ関電はみずから「不適切」というのか。
では、違法犯罪行為を容認して、結局は金品を受領した行為――それ自体があり得ない行為であるが――は結局、元助役の違法犯罪行為を幇助したことにならないか。そこで、考案されたのが、元助役の行為の目的が単なる自己顕示欲による示威行為という説である。ここまでくれば、元助役の行為すら何らの違法性が存在しない。もちろん違法性がない行為は不適切と評価することはできない。結局、関電は関係者当事者すべての行為が違法でないとの主張になっている。
原点に戻って、公共性の高い独占企業である電力会社が工事発注の受注者から社会的相当性をはるかに超える金品の受領を隠密に行っても何ら違法ではないという結論になる。社会的相当性をはるかに超える金品が長年にわたって、多数の役員重職者に提供されていた、という事実のみが重要で、提供者の個性・受領の経緯などまったく関係ない。
違法判断は、法律家にのみできる専門的で高度な判断ではない。普通の日本国民が、普通の日本語でかかれた法律要件と事実との相同性・合致性を判断するもので、実際、法律そのものが、「建前上」普通の国民である国会議員によって作成立法されたものである。
3 日本国民への批判
隣国などにおける日本国民・日本文明への批判の1つが、「日本人の歴史認識の誤り」である。これは日本人の知性にたいする批判であり、知性の低さを批判するものである。もちろん、日本人から見て、この批判は当を得ていない。しかし、この誤解を解くことは、批判者自体の知性のレベルに依存するため、極めて困難である。つまり、日本人は概ね、このような大局観をもって、隣国などの批判を理解し、対応している。
今この日本人の大局観さえ世界には通用しない「井の中の蛙」論となる恐れがある。関電疑獄事件のような、世界の知識人・良識から見たら到底理解できない暴論が堂々と流通し、何らの社会的是正も行われないのであれば、それはとりもなおさず、日本が文明後進国である証左であるから、隣国などの主張である「歴史認識の誤り」も真と理解されることになる。
関電疑獄事件の持つ意味の外延さえ国民が何も知らされないのであれば、やはり日本は文明後進国、三流国家との国際評価に甘んじざるを得ないであろう。報道関係者、学識経験者の責任は重大である。
【凡学一生(東京大学法学士)】
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