「抗疲労」市場 2020年に12兆円規模に(前)
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だるさや脱力感など、いつも「疲労感」と隣り合わせでいる現代人。街を歩けば癒し系サロンがあちこちで目に付き、ネットを見れば安眠枕やマッサージ機能つきクッションなど、さまざまな疲労回復グッズが売られている。
大阪産業創造館の試算では、「抗疲労・癒しビジネス」の市場規模は、2020年には12兆円になると見込んでいる。日本疲労学会によれば、疲労を自覚している人は、就労人口の約6割で、その半数は疲労感が半年以上続く慢性疲労だという。軽い疲れなら休養をとることで解消できるが、なかなかとれない疲れを放置すると過労状態や慢性疲労症候群に陥ってしまう可能性もあるので注意が必要だ。
指先で疲労・ストレスを簡単測定
「疲労感や倦怠感は、身体の異常を伝える重要なアラーム信号の1つです。見過ごすと大きな病気につながる危険があります」。こう話すのは、「疲労ストレス測定システム」を開発した(株)疲労科学研究所(大阪市淀川区)の倉恒邦比古社長。測定システムは、大阪市立大学や(株)村田製作所、(株)日立システムズとの共同開発で実現し、2014年度に医療機器の届出を行っている。
「疲労」の度合いはこれまで客観的な評価が難しかったが、同社の測定システムは「主観的な疲労問診」に「自律神経測定」を取り入れることで、具体的で精度の高い疲労検査を可能にした。主観的疲労問診は、20の設問に答える「自己診断疲労度チェック」で行う。「微熱がある」「寝ても疲れがとれない」といった身体的疲労と、「体調に不安がある」「働く意欲がおきない」などの精神的疲労をスコア化して、それぞれを-1安全ゾーン、-2要注意ゾーン、-3危険ゾーン、の3段階で示し評価するもの。
一方、自律神経測定は、両手の人差し指を測定器に入れ、センサーが脈波(PPG)と心電波(ECG)を同時に測定し、その結果から心拍変動を解析して疲労・ストレスの評価基準である自律神経のバランスと自律神経年齢を導き出すという仕組み。自律神経は交感神経・副交感神経から成り立っていることから、「バランス」と「活動量」の2面から評価する。この評価方法は日本疲労学会でも認知されているという。では、実際にどのような場所で利用されているのだろうか。倉恒社長に聞くと次のような答えが返ってきた。
「当社の測定器(VM302)は大学、病院、クリニック、企業の健康管理センターなどでご利用いただいておりますが、4年前に小型かつ安価で、簡便に使えるVM500を開発しました。神奈川県庁ME-BYOカルテの公募で集まった16社の社員525名の測定に80台を使用していただきました。業種ごとなどで働く方のビッグデータが収集でき、ストレスチェックとの相関も取ることができました。最近は、国土交通省の補助事業『過労運転防止に資する機器』に認定いただき、トラック、バス、タクシーのドライバーの疲労度測定にも利用いただいております」(倉恒社長)。
(つづく)
【取材・文・構成:吉村 敏】関連記事
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