2024年12月22日( 日 )

殺人マンション裁判の顛末~毀損された強度・資産価値を適正な状態に戻せ!(3)

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日本を代表する大手K建設 殺人マンションの顛末

久留米市を被告として提訴

 ――久留米の欠陥マンションについては、久留米市を被告とした裁判も提訴されていました。

 仲盛 久留米の欠陥マンションの裁判では、ゼネコンと設計事務所を被告とした損害賠償請求と並行して、建築確認で審査ミスをした久留米市に建物除却命令の義務付けを求めた訴訟も提訴しました。久留米市を被告とした訴訟は本命である損害賠償請求を補助する目的でした。

 久留米市が建築確認において設計の偽装を見逃したことを追求することにより、設計の偽装を整理することができます。また、施工ミスにより法令に適合していない部分について行政に是正命令を求めることにより、本命の裁判の被告にプレッシャーをかけるという意味合いもありました。

 ――設計においてどのような偽装が行われていたのですか?

 仲盛 このマンションの構造は鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)です。本来のSRC造は、鉄筋コンクリートの柱・梁の内部に鉄骨を配置し、コンクリートの剛強さと鉄骨のしなやかさを併せ持つ構造です。しかし、このマンションでは、1階柱脚(柱の根元)の鉄骨が基礎に埋め込まれていない形式であるため、1階柱脚部分においては鉄骨の靭性(粘り)に期待できない構造となっています。

 1つ目の設計偽装は、保有水平耐力計算(二次設計:震度6強程度を想定)における重要な係数である構造特性係数を偽装し法令規準に反した構造計算を行ったことです。前述のように1階柱脚部分の鉄骨の靭性(粘り)に期待できない構造となっているので、保有水平耐力計算における構造特性係数(Ds)は鉄筋コンクリート造(RC造)の値を用いなければなりません。

 このDsという係数は、SRC造の場合には低減をすることができますが、RC造では低減できません。しかし、このマンションの保有水平耐力計算におけるDsはSRC造として不正に低減され、法令規準に反した設計となっていました。

 2つ目の設計偽装は、同じ構造特性係数(Ds)の偽装ですが、耐震壁を有するフレームの柱において耐震壁方向に有効な鉄骨が配置されていないので、RC造のDsとして保有水平耐力計算をしなければなりません。しかし、構造計算書を見ると、低減されたSRC造のDsで計算が行われていて法令規準違反となっていました。また、柱の帯筋も規準に満たない鉄筋量となっていました。

 3つ目の設計偽装は、1階柱脚における鉄量(鉄筋とアンカーボルトの断面積の合計)が1階柱頭の鉄量(鉄筋と鉄骨の断面積の合計)の半分しか存在していない(規定では柱頭と同量以上必要)ことです。

 4つ目の設計偽装は、地盤種別を偽装し地震による揺れを小さく仮定し小さな部材でも成り立つよう設計していることであり、悪質な偽装です。このマンションの地盤は軟弱な地盤のため地表から32mの深さを支持層とする場所に内杭が施工されています。しかし、構造計算は「強固な地盤」に採用する地盤種別としているので、地震による揺れを過少に設定し本来の地盤種別の場合よりも小さな部材でも計算がOKとなってしまいます。

 この地盤種別の偽装について久留米市の建築指導課長は、「このマンションが建っている一帯の地盤は一般的には軟弱な地盤ですが、もしかするとこのマンションの下にだけ岩盤があるかもしれません」と管理組合代表に説明し、失笑を買っていました。

 また、久留米市側は、原告が裁判所に提出した設計図面(建築確認通知書に綴られた図面)を「本物かどうかわからない」と平然と主張していました。一事が万事、久留米市の対応はこのようにふざけたものでした。

 久留米の欠陥マンションの法令違反を列記します。

建築基準法

(つづく)

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