2024年12月29日( 日 )

最も大事なのは一次予防の養生「生活習慣の改善」である!(4)

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(社)日本統合医療学園 理事長・学長 吉村 吉博 氏

旬のものを食べ、身体を正常化し、健康な身体をつくります

 ――中医学というとどうしても「医食同源」という言葉が浮かびます。

 吉村 「薬と食べ物は元を質せば同じ」という意味の「医食同源」という言葉は、日本語由来の新しい言葉と言われ、中国では古来より、「飲食薬食同源」または「薬食同源」という言葉があります。中国では、医学の歴史が食事の歴史であるように、古代から食事学が発達してきました。

 本来の薬膳(中医学の陰陽五行論に基づいた健康追求の料理)は、4段階にわかれていました。食用(季節・環境・年齢・性別により食材・食事時間・調理方法を変える)~食養(食材を用いて体を養う。美肌・老化防止の目的に食材を選ぶ)~食療(食材の効能により疾病を改善する)~薬膳(食療の上に生薬を加えて、病を改善する)です。

 現在は食用、食養、食療をまとめて薬膳と称しています。しかし、日本では日本式薬膳(和薬膳)が推奨されています。すなわち、季節・旬の食材を用いた養生薬膳、体質改善を目的とした未病薬膳、疾病を改善する疾病薬膳の3つのタイプです。いずれも日本のスーパーで入手できる食材を用いて、健康を維持あるいは改善を行います。

食事・運動・精神を生活習慣と休養で支え、5養生となる

 ――読者にメッセージをお願いします。

 吉村 2つのことを申し上げます。1つ目は日本人の薬漬けはほかの諸外国に比べても比ではありません。日本の人口は世界の人口の2%に過ぎないのですが、日本の薬の使用量は世界の薬の30%を占めます。

 これから「人生100年」時代を迎え、年をとればとるほど薬を飲むことが増えてくると思いますが、(75歳以上の場合、1つの薬局で7種類以上の薬を受け取っている割合は26%)、一方で、“薬は毒であるという認識”も忘れないでいただきたいと思います。西洋薬が6種類以上を超えると、副作用を起こす割合が10%~15%にまで高まることがわかっています。

 もう1つは、薬に頼らず、病気にならない方法は食事・運動・精神が3本柱ということを再認識してください。そしてこれを支えているものが生活習慣と休養で合わせて5つの養生を構成しています。私の好きな言葉の1つに「健康で長生きすることが人生の目的でなく、健康で活動できることが人生の目的である」があります。

 ここに私が大学で教鞭をとりはじめ30年以上にわたって学生や患者さんに配布している「125歳への挑戦」へのチェックシート(20項目)をご紹介します。人の寿命は、遺伝子によって125歳(成人年齢25歳×5)までプログラムされています。読者の皆さまも、ぜひ自己判定(優秀:16項目以上、普通11項目~15項目、要注意5項目~10項目、要改善4項目以下)してみてください。

○ 1日5色(白・青・黒・黄・赤)一汁三菜のバランスの良い食事をとる。
(穀類・芋類・野菜・豆類・茸類・果物・海藻・発酵食品・魚介類は多く、
植物油・香辛料・卵・乳製品は嗜好、肉類・動物脂・塩は少なく)
○ 旬のものを丸ごとよく噛んで食べ、偏食、早食い、間食は避ける。
○ 脂濃いもの、甘い物、味濃い物、冷たい物、辛い物のとり過ぎに注意する
○ 食事は腹八分目で暴飲暴食を避け、朝は快食・快便を心がける
○ 食品添加物・農薬・水・大気の汚染を避け、自然と触れ合う
○ 適度な水分・お茶の補給と腹式呼吸を心がける
○ 有酸素運動(速歩)・ストレッチ・筋トレ・体幹運動習慣にする
○ 正常体重(BMIが18‐25)になるよう心掛け、良い姿勢を保つ
○ タバコは吸わない、酒は飲み過ぎない、サプリや薬は服用しない
○ 身体を冷やさない工夫(熟睡・風呂・温性食・服装・運動)を心がける
○ 規則正しい生活、よい習慣を身につけ、歯のケアをしっかりする
○ 頭を使う(新聞・本を読む、日記を書く、パソコンをする)
○ 打ち込める仕事と趣味をもち、毎日充実した日々を送る
○ 12時前には就寝し、十分な睡眠をとり、早起きして朝日を浴びる
○ 過労を避け、1日30分は自分の時間をとる
○ いつまでもおしゃれをして、時々旅に出かける
○ 愛する人あるいは良き友達と明るく語り合い、大いに笑う
○ ストレスを緩和し、マイナス指向からプラス志向へ転換する
○ 生きがいや目標を見つけ、道徳意識を高め、強い欲を出さない
○ 先祖、親族、周りの人に感謝し、人に親切にして幸せを願う

(了)
【金木 亮憲】

<プロフィール>
吉村吉博氏(よしむら・よしひろ) 

 日本統合医療学園学長、星薬科大学大学院博士課程修了、星薬科大学助教授、日本薬科大学漢方薬学科教授、アメリカ合衆国疾病対策センター(CDC)にて研究、漢方吉村薬局顧問、東京農業大学・東京家政大学・星薬科大学非常勤講師。

 著書として『中医漢方医学の基礎』、『中医漢方医学の生薬と処方』、『中医漢方医学の治療と症例』、『予防は最大の治療なり』、『登録販売者攻略テキスト』、『登録販売者根底300題』(以上、日本統合医療学園)『基礎薬学(必須講座薬剤師国家試験対策)』(日本工業技術連盟)、『分析化学〈2〉』(南江堂)、『わかりやすい機器分析化学』(広川書店)ほか多数。メディア出演として「発掘あるある大辞典」(フジテレビ系)、読売新聞、日刊ゲンダイほか多数。

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