2024年11月13日( 水 )

ダブル大臣辞任は「菅官房長官と岸田政調会長の代理戦争」第二弾か――漂い始めた政権末期(レームダック)感(前)

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 週刊文春の香典報道で菅原一秀・経産大臣が辞任した6日後の10月31日、またもや「文春砲」直撃で河合克行・法務大臣が辞任をした。わずか一週間足らずの間のダブル辞任。すぐに永田町関係者の間では「ポスト安倍を巡る跡目争いが本格化、森友加計問題以上の政権末期感が漂い始めた。『令和おじさん』として人気が急上昇、岸田文雄政調会長と並ぶ有力後継候補となった菅官房長官の影響力が一気に低下、永田町の力関係が変わる兆しが出てきた」という見方が広まっていたのだ。

 「『菅官房長官 対 岸田政調会長』の代理戦争第二幕「秋の陣」の火蓋が切って落とされたのだろう」と見立てる永田町ウォッチャーは、こう解説する。

 「夏の参院選広島選挙区(改選定数2)は与野党が1議席分け合う構図が、現職の溝手顕正・元防災担当大臣(岸田派重鎮)に加えて河合前大臣の妻・案里参院議員を擁立することで激変。建前上は『自民二議席独占を狙う』でしたが、実態は『菅官房長官 対 岸田政調会長のポスト安倍代理戦争』(7月9日の毎日新聞などが報道)。実際に菅氏は案里氏の応援演説で二回も広島入りし、溝手氏落選に一役買った。『菅氏、広島“代理戦争”制し勢い』(7月24日の夕刊フジ)と報じられたのはこのためです。10月31日発売の週刊文春のスクープ記事『法務大臣夫婦のウグイス嬢“違法買収”』は、案里氏が初当選した参院選広島選挙区で起きたことです。代理戦争に敗れた岸田氏本人か周辺が“リベンジ”を仕掛けて、菅氏側近の河合法務大臣のクビを取ったように見える。『ポスト安倍の跡目争いが激化、政権末期(レームダック)状態に陥り始めた』と受け取る永田町や霞が関関係者は少なくないでしょう」

 この永田町ウォッチャーが注目するのが、「官邸のアイヒマン」とも呼ばれる安倍首相の側近である北村滋・国家安全保障局長(前・内閣情報官)が岸田氏と同じ名門・開成高校卒で、一年違いの先輩後輩であることだ。

 「菅官房長官の側近の大臣が二回連続で“文春砲”が直撃した。取材力に定評がある週刊文春を持ってしても何らかの警察情報がないと、二大臣を相次いで辞任に追い込むのは難しかったのではないか。岸田氏が指示を出したとは思えないが、岸田シンパの官僚が首相の意向を忖度して動いても不思議ではない。そう考えた時に真っ先に思い浮かんだのが北村氏でした」(同)。

 この見立てに「たかが同じ高校出身くらいで」と違和感を抱く人にお勧めなのが「霞が関で『開成官僚』VS.『麻布官僚』大戦争が勃発中 受験エリート『トップ2校』が罵り合い」(2017年9月16日号の週刊現代=ネット配信記事も有)。この記事では、独立独歩型の麻布に対して「群れるのが好き」で同窓会活動が盛んな開成の違いを説明、岸田氏が2017年8月に開かれた「永霞(永田町・霞が関開成会)(仮称)設立総会」で発起人代表を務め、一方の北村氏が「内閣情報調査室開成会」の主宰者を務めたと紹介していた。なお開成高校出身の国会議員とキャリア官僚は総数600名以上なのだという。

 「前川喜平vs.北村滋」という小見出しの中には、北村氏について次のような政治部デスクのコメントもあった。

 「頭脳明晰で、安倍総理から絶大な信頼を得ている。内調を牛耳り、メディアも使って数々の情報戦を仕掛けている人物です。前川前文科次官の『出会い系バー通い』報道を読売にリークしたのも北村氏のラインだ」

 この指摘が事実であれば、今回のダブル大臣辞任においても、「北村氏ら開成出身者が永田町や霞が関に張り巡らされた同窓会ネットワークを駆使しつつ、菅氏側近大臣辞任につながる極秘情報を週刊文春にリークした」といった情報戦を仕掛けていたとしても全く違和感を抱くことないのだ。

 ちなみに9月19日号の週刊文春には、国家安全保障局長になったばかりの北村氏が尾行に気づいて警察に通報という内容の記事が出ており、米田壮・前警察庁長官に呼び出されて「お前、いつまで官邸にいるんだ。いつまで(内閣)情報官をやっているんだ」と詰めれられたという北村氏の暴露もあった(米田氏は面談を否定)。北村氏は週刊文春への情報提供を、ダブル大臣辞任の前月発売号でしていたのだ。

 永田町ウォッチャーは安倍首相の意向を忖度している可能性にも触れた。
「推測の域を出ない見立てだが、『令和おじさん』として人気急上昇、ポスト安倍の有力候補となり、しかも霞ヶ関の官僚のほとんどが菅官房長官にひれ伏している。岸田幹事長誕生を連携して阻止したとされる二階俊博幹事長とも手を組んでおり、『菅政権誕生の場合、二階派はすぐに菅派に変わるだろう』さえ与党議員の間では囁かれている。しかし永田町と霞が関で絶大な力を持ち始めた菅氏に対して『力が強くなりすぎている』という反発が生まれている。内閣人事局を背景にしたゴリ押し人事で霞ヶ関の官僚から『やりすぎだ』という声が漏れ聞こえている。

 安倍首相も表立って口にしなくても、恐らく菅氏の力を削ぎたいと考えている。岸田氏への禅譲にした場合は“院政”を敷いて改憲に邁進させるなどコントロールすることは可能だろうが、菅氏が絶大な力を持ったまま首相になった場合は自らの影響力を及ぼすことが難しくなるに違いないからだ。安倍首相が望む展開を“忖度官僚”が思い描き、ポスト安倍のライバルである菅氏の力を削ぐ情報を自主的にリークすることは十分に考えられるだろう」

(つづく)
【横田一/ジャーナリスト】

 

(後)

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