2024年12月24日( 火 )

曖昧な株式管理が生んだ名門ゴルフクラブの経営権争い(前)

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 ゴルフ場創業者の死後、株式の所有をめぐり、裁判が続いている。舞台は、福岡県糸島市にある「ザ・クイーンズヒルゴルフクラブ(以下、クイーンズ)」だ。

 高速ICから車でわずか1分の好立地にあり、開業後すぐにプロツアーが開催されたゴルフ場だ。地場屈指のマンションデベロッパー・ソロンが手がけたのはよく知られているが、創業者・田原學氏亡き後、株式をめぐり、争いが生じていることはあまり知られていない。裁判記録からわかったのは、中小企業経営者に警鐘を鳴らすものでもあった。

 裁判は平成28年に始まっていた。訴状が提出されたのは、田原學氏が亡くなる前からである。原告はソロン創業者でクイーンズを建設した故・田原學氏の長男、司氏。被告が運営会社(株)ザ・クイーンズヒルゴルフ場。請求内容は「株主権確認等請求事件」であった。原告の田原司氏が被告のゴルフ場運営会社に求めたのは、原告にゴルフ場の経営権があり、過去の役員人事については無効であるというもの。

 株主が亡くなれば、親族を筆頭に誰かが相続しているはずだが、会社の株をめぐって、争いが起きているというのは事実。被告の法人登記を確認すると、不可解なことにいまだに故人である田原學氏が取締役として登記されたままになっている。亡くなったのは、平成29年3月10日であるから、もう2年半以上が過ぎている。取締役が死亡した場合、変更登記が必要になるが、そのままになっていることからも、異常事態であることは推測できる。

 現在の登記上の取締役を確認すると、取締役は3名。ソロン創業者故・田原學氏と代表取締役で総支配人A、取締役・副支配人Bもともにソロン出身だ。関係者から話を聞いたところ、ここ10年ほどの役員の移り変わりもわかってきた。過去10年で取締役に名前が出てくるのは、計6名。學氏は長期に渡り、闘病していたため、役員として在籍していたが、現場での指揮監督はこのA・B2人が行っていたと考えるのが自然だ。創業者の子息とはいえ、突然「株式は私のものだ」と主張されても、会社側は了承するわけにはいかない。法廷の場で、争うことになった。

 現経営陣からすれば、司氏の「乗っ取り」とも取れる行為であり、請求通りになれば、自らの立場は失われるということになる。全株式は自分のものであると主張する司氏。一方で会社側の主張は、あくまでも株主は田原學オーナー1人だけであり、100%株主であるというものだ。學氏が全株保有することになって以降、株式は誰にも譲渡されていないと反論している。

(つづく)
【東城 洋平】

(中)

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