曖昧な株式管理が生んだ名門ゴルフクラブの経営権争い(後)
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ゴルフ場創業者の死後、株式の所有をめぐり、裁判が続いている。舞台は、福岡県糸島市にある「ザ・クイーンズヒルゴルフクラブ(以下、クイーンズ)」だ。
地場屈指のマンションデベロッパー・ソロンが手がけたのはよく知られているが、創業者亡き後、株式をめぐり、争いが生じていることはあまり知られていない。裁判記録からわかったのは、中小企業経営者に警鐘を鳴らすものでもあった。
議論が終盤を迎えつつある平成30年12月、原告側が和解案を提出した。ゴルフ場再建のためには、早期に問題を解決する必要があり、現経営陣の協力が必要だというもの。原告の和解案は「株主は原告として認めなさい。そうすれば、現経営体制を維持する。賠償もしない」というもの。
それでも被告は和解しなかった。ゴルフ場が司氏の手中に収まれば、先に見えているものは「身売り」しかないと考え、判決を待つことにした。そして、今年5月30日に第一審の判決が言い渡された。裁判所は原告の主張を概ね認め、司氏が株主であること、また過去の株主総会が存在しないことを言い渡した。被告は即刻上訴し、現在、高裁で係争は継続中である。
ここで「なぜ多額の借金を抱える原告はゴルフ場を手にしたいのか?」という疑問が湧いてくる。クイーンズをよく知る業界関係者はこう語る。
「経営権を手にして、ゴルフ場経営を継続しようという思いはないはずだ。売り出して、買い手が付けば、買い手はすぐに民事再生法の手続きを行い、自主再建する流れは目に見えている。売値は、噂では4~5億円。それぐらいの値段なら買いに来る会社はある。原告・被告どちらも経営権を握りたいはずだから、最高裁まで裁判は続くのではないか。」
身売りの話は、今に始まったものではない。裁判資料でも、「平成27年10月以降は利息のみの返済となっており、銀行の管理下にある」という旨の記載もある。同時にスポンサー2社と交渉という記載もあることから、方向性は間違っていないだろう。
とはいえ、裁判が続く限り、身売り交渉も進むわけはない。「どちらになってもそれほど明るい未来は待っていない」――豪傑の残したバブルの遺産に対し、ある業界関係者はこう言って、話を締めた。高裁での判決は年内に言い渡される予定である。
(了)
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