【西部ガス】1,000億円投資、事業の多角化とグループ基盤の底上げに邁進~ガス小売自由化などの逆境を乗り越えられるか
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西部ガス(株)の代表取締役社長・道永幸典氏は14日、福岡市の本社で記者会見を開き、グループ中期経営企画「スクラム2022」を発表した。同社は16年に策定した中期経営計画で、26年度にはガスエネルギー事業以外の売上を全体の50%に引き上げるという方針を打ち出していた。会見では取り組みの進捗と、不動産事業や国際エネルギー事業の事業拡大にむけて、約500億円の成長投資を行い、定常投資と合わせ最大1,000億円の投資を行うと発表した。
これまでの事業多角化
同社は04年に中華料理店「八仙閣」、08年に戸建の新築を主に行う建築業者の九州八重洲興業(株)(現・九州八重洲(株))などを買収してきた。16年に中期経営企画(スクラム2019)を発表して以降は、18年2月期に連結売上高139億 2,300万円を計上した大手マンションデベロッパーの(株)エストラスト、19年には地元老舗ゼネコンの(株)吉川工務店を買収するなど、不動産事業を中心に多角化を加速させてきた。
新事業進出では、グループ会社の西部ガスリビング(株)が19年7月に「&and COMFY HOTEL熊本城ビュー」を開業。また、19 年12月13日には延床面積約 2,300m2、地上2階建の温浴施設「ヒナタの杜 小戸の湯どころ」(福岡市西区)をオープンさせることも決定している。
不動産事業拡大を担う賃貸事業強化とひびきLNG基地の活用
同社は「スクラム2022」において、多くのグループ事業とのシナジーが期待できるとして不動産事業、とくに賃貸事業の強化を表明している。ガス事業との関連性の高い事業を拡大させることで17年4月から開始された「都市ガスの小売全面自由化」による顧客減少を防ぐ狙いがあるとみられる。
また、かねてより事業を推進していた「ひびきLNG基地開発」も本格化している。工場用地だけで、約32万 6,000m2と広大な敷地を有する同基地は、北九州・山口へのガス供給だけではなく、19年1月にはロシア最大の独立系ガス生産企業であるノバテク社と連携し、同基地をハブ基地としてアジア諸国向けのLNG・天然ガス販売事業を発表した。発電所建設用地として約21万5,000m2を確保しており、大型のガス発電所「ひびき天然ガス発電所(仮称)」も22年度の事業開始を目標としている。
作り上げた基盤をどう生かすか
同社は18年4月にグループ会社のグループガバナンスの浸透、シナジー効果の推進のため新たに関連事業部を設立。18年度のグループ連結売上高は目標の2,000億円を超え、2,034億円を計上、これを受けて22年度計画では売上高目標を2,400億円に引き上げた。今後はただ「売上高を伸ばす」のではなく、利益にこだわった経営も重要となってくる。
19年8月に行ったデータ・マックスの独占取材時には「今まで拡大路線をとってM&Aを積極的に行ってきましたが、ここで一度、棚卸が必要だと考えています。既存事業の強化や環境整備など、グループ各社の内部監査もきちんと行います」と話していた道永氏。一部の関連事業だけでなく、柱であるガス事業を踏まえた海外展開などとともに、グループにある多くの事業をより効率的に展開していくかがカギになるだろう。
都市ガス小売全面自由化や人口減少などの「逆風」にいかに立ち向かっていくのか、同社の今後の動向に注目したい。
【麓 由哉】
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