2024年11月18日( 月 )

名門ゴルフクラブの株主権確認訴訟~法務過誤

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 (株)ザ・クイーンズヒルゴルフ場の創業者・田原學氏が亡くなった後、同社の株式をめぐる裁判が行われている(関連記事:曖昧な株式管理が生んだ名門ゴルフクラブの経営権争い(前))。本件に関し、「町の法律好々爺」凡学一生氏が解説する。

 国民は本件事件で、現在の司法サービスがまったく国民には無益有害となっている実態を学ぶことになった。第一審判決は勝訴した長男に遺産の全額の帰属を認めたが、それは長男に膨大な贈与税の負担をもたらすものであり、一方、妻と弟の遺産相続分を不条理にも奪うものであった。何が法的正義かと誰しもが疑うものである。
 この醜悪な結果は「消極的」法曹談合の結果であることは明白である。弁護士も裁判官もだれも依頼者市民の幸せ・正当な権利の保護など眼中にない結果である。

 先に被告弁護人弁護士が被告会社顧問弁護士として委任の本旨に反する業務執行をしてきた結果が本件紛争の主たる原因であることを指摘したが、原告弁護人弁護士も真の意味で原告にとって最適の訴訟目的を設定しなかった。

 仮に、本件事件が第一審の結論で確定したら、理不尽に相続財産を奪われた妻と弟は不当な裁判結果としてその結果を争うことになるのは必定である。これは法理論的にもまったく正当な主張となる。なぜなら、妻と弟は本件裁判の当事者となっておらず、裁判の既判力がおよばないためである。結局、本件裁判は何の解決もしなかった、無駄な裁判となる。
 これは原告弁護士が紛争の本質を理解しなかった結果であることは明白である。では原告弁護士はいかなる訴訟遂行をすべきであったか。それは本件裁判の主位的請求である400株全額の所有者であることを求めるより、本来の無理のない100株の所有者であることの確認を求めるべきであった。そうであれば、裁判所も判例を超え、論理を無視した無謀な判決を出す必要もなかった。

 控訴審が第一審の無謀な論理を是正しても、原告の100株の所有を認めたことにはならない。原告が予備的請求で100株の所有者としての確認を求めていないからである。
裁判所は当事者が請求していなければ判断しないため仕方のないことである。当然、狡猾な被告弁護人は原告敗訴の場合はおそらく答弁書でみとめた原告の100株すら認めないであろう。この予備的請求を行っていないことと、無意味な株主総会決議無効確認を求めたこと、無駄な訴訟費用を発生させた責任は無論、重大な法務過誤である。
 法務過誤とはまだ世間に認知された術語ではないが、医師が業務遂行で過失・過誤があれば民事責任・刑事責任・行政責任等の厳しい専門家、独占的専門業務者として責任を追及されるのに、弁護士はまったくその責任が問われない。これは法曹談合と称される日本の醜い現実である。本件事件が、見事な法務過誤事件であることはいうまでもない。

 残された道は何か。
 1つは被控訴人(勝訴原告)が100株の株主であることを予備的に確認請求する訴えの追加的変更の手続きをとることであり、弟と妻が訴訟参加することである。本件裁判はその実質が遺産分割争訟であるから必要的共同訴訟でなければ違法となる疑いがある。こんな本質的なことを無視した裁判遂行が現実に「専門家」が行う裁判である。

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