世界経済危機の引き金になりそうな世界の負債状況(前)
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日韓ビジネスコンサルタント 劉 明鎬 氏
全世界の累積負債は世界のGDPの3倍以上となり、膨張し続ける負債に対し、警鐘が鳴らされている。世界金融危機以降、低金利化が進んだことで、潤沢な資金が市中に供給されるようになった結果、資金が調達しやすくなり、それが各国の負債の増加をもたらした。
低金利のなかでも低成長に陥った世界経済が、その間に増やしてきた累積負債が、大きなリスク要因として浮上しつつある。ブルームバーグ通信などによると、全世界の負債総額は、2007年には167兆ドルだったが、現在は247兆ドルまで膨れ上がったという。累積負債の全世界のGDP対比は、何と320%の水準に達しているようだ。
全世界の負債は、今年の上半期だけでも、7兆5,000億ドルも増加しているという。19年6月基準で、全世界の累積負債は250兆9,000億ドルで、過去の最高記録を更新し続けている。ちなみに、今年増加した全世界の負債額の60%は、米国と中国の負債で占められている。米国の政府負債は2001年には7兆ドルだったが、現在は20兆ドルを上回るような水準となった。
米国だけでなく、中国を含んだ新興国の負債も、膨らみ続け、史上最大の71兆4,000億ドルを記録している。とくに、新興国の累積負債は、新興国全体のGDPの220%に達していることが明らかになり、金融界で大きな懸念材料となっている。
世界各国が抱えている負債の大きさはもちろん、負債の質についても、専門家から問題が指摘されている。債権のなかに、投資不適格の1つ上のランクのBBB債権や不良債権になる寸前のCCCランクの債権の比率が大きく増えているからだ。
IIF(世界金融協会)は、全世界の累積負債が、このままのペースで推移すると、負債総額は255兆ドルを上回ることになるだろうと予想した。何よりも問題なのは、世界経済の体力がかなり弱っており、負債の重荷に耐えられるかどうかが心配されていることだ。
それでは、世界負債の内容について少し深堀りしてみよう。新興国の場合、企業負債を中心に負債が大幅に増加している。新興国のGDP対比の企業負債の比率は、2009年の68%から、2018年には92%に増加している。
新興国のなかでも、中国の企業負債に全世界の注目が集まっている。中国の企業負債は、中国の負債全体の61%を占めており、GDP対比で166%(2019年)という高い水準となっている。中国政府は景気低迷のリスクがあるにも関わらず、負債縮小に取り組んでいる。その結果、中国企業の債務不履行が急増している。
中国政府が過剰生産問題を抱えている企業を対象に、負債の縮小を図っているため、財務構造が脆弱な企業を中心に債務不履行が発生しているわけだ。2018年に債務不履行を宣言した企業数は120社以上で、債務不履行の総額は1,200億元に上った。今年に入って発生した債務不履行の件数は、前年同期対比で40%も増加している。それに、来年は2兆ドルの債権に満期が到来することになっているので、中国企業発の経済危機の発生すら噂されている。
(つづく)
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