「力貸していただかないと世の中変えられない」と山本太郎氏、神対応の動機明かす
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街頭で市民との対話を重ねるれいわ新選組の山本太郎代表は、しばしば酔客などに絡まれることがある。暴言などを吐かれても忍耐強く応じる動機について12日、栃木・JR宇都宮駅西口での街頭記者会見で「そう思われている方にも力を貸していただかないと、世の中変えられないから」と吐露した。
山本氏は参院議員だった2014年ごろから、モニター画面を引っ提げて全国を回り、その場で市民とさまざまな問題について意見を交わす街頭記者会見を続けている。その際、通り掛かりの人に「おめえ、議員なんか辞めろよ」(2015年3月26日、東京・新宿アルタ前)、「偽善者だよ」(2019年10月28日、大分・大分駅北口広場)などと絡まれることもある。
山本氏の切り返しは、「神対応」とも呼ばれる。アルタ前では「ありがとうございます。そんなあなたのことも守りたい」と返したし、7月6日に東京・JR新宿駅東南口前で「くそ左翼死ね」とやじられたときは、「ありがとうございます。死にたくなるような世の中を変えたいために私は立候補しているんだ」と応じた。
なぜ、こちらの人格を否定するような暴言に対し、理性的に対応できるのか。怒りの気持ちは湧かないのか。宇都宮の街頭会見で筆者が尋ねた。
酔っ払いとはなかなか対話が成立しない。山本氏は「見た目に酔っ払いかどうかわからないし、どんな人柄かもわからない」としたうえで、「一緒にやろうという話で落としどころを見付けるのが難しい。これは恐らく、私の技量のなさと、その方のお酒の量とがいいバランスで2人の関係性を結ばせない状態になっているのかも」と分析する。
怒りの気持ちについては、「説得できなかったり、その方に政治をもう1度見詰め直すとか、政治を監視しようという思いになっていただけない自分に対しての怒りが大きい」と省察。「そのままタイムアップという状況を迎えることが多々ある」と苦笑する。
切れそうになったことはないかと問うと、「『じゃあ、おまえのやりたいことやってみろよ』と言われたとき、『やってみるためには権力が必要だから、権力寄こせ』と言い合いになったことがある」と振り返る。対話としては好ましいものでないとしながらも、「マイクを握られている方の叫びというか、苦しさが多分表現されているのだろう」と同情を示す。
この「言い合い」とは、11月27日に静岡・浜松駅北口広場で飲酒状態を自認する男性が「あなたは安倍政権をすぐ変えられれるのか」「あなたはくず」などと絡んできたことを指す。山本氏が「私が先頭に立ちたい。その権利を付与できるのはあなた」と向けると、「ああ、そうか。権力持てよ」「権力寄こせ」と押し問答になった。
2017年7月2日の東京・JR新宿駅西口では、酩酊(めいてい)状態と思われる男性に「君がやっていることは、麻生(太郎・副首相)に対していろいろ言ってるけど、多数党になってやらないと、ここでいくらしゃべったってしょうがない」と指弾された。山本氏が「民主主義というのは……」「ちょっといいですか……」と話し始めようとするが、「違うんだよ」「人の話を聞け」とマイクを離さない。周りの人が制止すると、「うるせえ、ばか野郎」と激高し、8分超、独演が続いた。
2018年10月6日の東京・上野恩賜公園階段前では、山本氏が国連憲章にある敵国条項を紹介し、外交の重要性を説いていると、男性が「やってきたんだよ」「うるせえ」などと叫ぶ。周りと小競り合いになった末、相手の顔を携帯で撮影。山本氏が写真の消去を再三求めるが応じなかった。
「偽善者だよ」と発した先の大分の男性は、「しょせん、あなたはタレント。かっこつけてんじゃねえよ」「何でこんな所で抗議の声上げてるのか。あなたは何なんだ」などと問い詰めた。周りにとがめられるとマイクをたたきつけ、去った。山本氏は「決して裕福でない者同士が石投げ合ってどうするんだ」と涙をこぼした。
スタッフによれば、大阪・なんば駅前の街宣で、発言していた男性に音声モニターを踏み付けられたこともあるという。
前11日の埼玉・浦和駅西口では、若い男性が前に歩み出てマイクを取り、「みんな、あいさつできないんですか」「私はゆとり世代の失敗作。山本太郎なんて知らない。興味もない。選挙なんて行ったことない。くだらねえ。俺はスタッフに紛れてマイクを取り返していうからな。おめえら、全然いえねえだろ」などと盾突いた。それでも、山本氏は「聞いていって」と引き止める。
しばらくすると、初老の男性がステージ前にやってきて、「おめえ、いつからこんなことやってんだい」と迫る。山本氏が「1時間半くらい前から」と返すと、「無理だよ。言ってることが」と否定。「生活楽にできるんです。政治で」とマイクを渡そうとすると、「いいよ」と拒んだ。
山本氏は、忍耐強く応じる動機について「『政治なんて全部うそだろう』みたいなかたちで、結構自暴自棄になられてる方もいらして。そう思われている方にも力を貸していただかないと、世の中変えられないから」と吐露した。高い目標がなければ、できないことに映る。
<プロフィール>
高橋 清隆(たかはし・きよたか)
1964年新潟県生まれ。金沢大学大学院経済学研究科修士課程修了。『週刊金曜日』『ZAITEN』『月刊THEMIS(テーミス)』などに記事を掲載。著書に『偽装報道を見抜け!』(ナビ出版)、『亀井静香が吠える』(K&Kプレス)、『亀井静香—最後の戦いだ。』(同)、『新聞に載らなかったトンデモ投稿』(パブラボ)。ブログ『高橋清隆の文書館』。関連キーワード
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