公民連携、ふるさと納税を巧みに活用し「健幸長寿のまちづくり」を推進(後)
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佐賀県三養基郡みやき町 町長 末安 伸之 氏
――そうした施策が町民の「健幸長寿」につながるとうかがいました。どのように関わってくるのでしょう。
末安 みやき町では「健幸長寿のまちづくり」とともに「統合医療」を掲げ、町民の健康をいかにして守っていくかを大きなテーマとしています。口から入る日々の食事がすべて良薬であればよいのですが、そうではないからガンやアトピーといった病気になる。とくに町民が幼いときから摂取する食べ物については、徹底的に安全を図ろうということで取り組んでいます。
いくつかの例をお話ししますと、各メディアからも注目されていますが、「凍結解凍覚醒法」という手法を用いた完全無農薬、皮ごと食べられる国産バナナ栽培を開始しています。バナナをみやき町の特産品として収穫し、子どもからお年寄りまで安全・安心な物を食べてもらうことは町民の健康づくりになりますし、ゆくゆくは町内の小中学校にバナナハウスを建て、児童が栽培、収穫、そして食べることで食育にすることを考えています。
また、茨城の企業がつくる「洗たくマグちゃん」というマグネシウムを使った洗剤補助用品の活用があります。これを使うことで排水が環境に負荷を与えないどころか、マグネシウム不足を補うことができるというスグレモノです。
マグネシウムは植物の光合成に欠かせない葉緑素の主要構成要素ですが、「マグちゃん」で洗濯すれば排水には衣類に付着していた皮脂や老廃物などに含まれる窒素・リン酸・カリウムという肥料の三大要素が加わることになります。マグネシウムは骨を形成するほか、代謝を助けたり体温・血圧を調整したりする必須ミネラルですが、体内では生成できないため日々の食事から摂るしかありません。でも、マグちゃんの排水ならばマグネシウムが含まれた栄養価の高い作物が育てられる。洗濯排水を農作物に散水するという大胆な発想で、地球環境保全活動にも一役買うものです。
このほかにも町を上げて取り組む大型事業として「メディカルコミュニティセンターみやき」をPFI方式にて21年に開設します。「健幸長寿のまち」の核となる施設です。西洋医学による対処療法とアロマ・ヨガ・鍼灸等の東洋医学を用いた予防医学を併せもつ施設を自治体主導で整備することで、センターは私たちが目指す統合医療のシンボルとなるでしょう。子どもからお年寄りまで健康で幸せに暮らすことのできるまちづくり。その大きな一歩になると確信しています。
――「健幸長寿」をとくに「幸」としているところには強い想いが込められているのでしょう。また、労働力の不足の解消についてもユニークな取り組みをされているそうですね。
末安 何をやるにもまず必要なのは人の力です。フルタイムで働く人材を確保するのはとても難しいのですが、フルタイムでなければ思いのほか労働力はあるものです。みやき町では法人を立ち上げ、希望する人が社員になって働ける場づくりを行ってまいります。この法人では農業分野や高齢者のサポートなど人手が足りないところに人材を提供していくサービスを進めていく予定です。社員の皆さまには「働ける分だけ働いていただき、対価は保証する」というスタイルで事業を行ってまいります。
実際、1時間とか2時間で働ける人、週に3日なら働ける人…そういう人は80歳、90歳を過ぎてもいらっしゃるんですね。自分が働きたいと思った時、近隣の親しい仲間たちと一緒にほんの少しだけ汗を流す。こうしてやりがいや生きがいを感じることができれば、それもまた健幸寿命につながります。
そしていまホットな話題がいちごの新たな生産方法です。「さがほのか」「いちごさん」といったブランドいちごの需要はぐんぐん伸びているのに、肝心要の生産従事者がいないという問題に直面しているからです。これを解決するために農機メーカーのヤンマー、そしてJAと協力し、「いちご移動栽培装置」を設置しています。いちご栽培プランターが回転寿司みたいに回る。これなら誰でも楽に作業ができます。たとえばお茶を飲みながら仕事ができるなら、人は自然に集まるでしょう。労働力は潜在的にありますから、あとはどう活用していくかが知恵の絞りどころです。
――本当に面白いです。これからもそうした民間企業とのコラボレーションは広がっていきそうですか。
末安 今後は高齢者や身障者、子育てする女性たちについても活躍の場を広げ、さらなる生産者の確保につなげていきます。こうした取り組みが、荒廃した農地を有効活用するための耕作放棄地解消対策になることはもちろん、雇用対策にも大きく寄与できると考えています。そして潜在的な労働力を掘り起こすだけでなく、町民が社会に役立つという喜びを得ることができれば、免疫を強くすることになりますから、より「健幸長寿のまちづくり」に近づけるでしょう。私たちの取り組みの目指すところが、すべて町民の健康と幸せのためにあることがご理解いただけましたでしょうか。
最後になりましたが、企業の皆さまにお伝えしたいことがあります。何かやりたいことがあればどんどん言ってきてください。ぜひ、みやき町とコラボレーションしましょう。ここで成果を実証していくことで、きっとWin-Winの関係を築いていけます。
(了)
【文・構成:天野 祐次】関連記事
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