経産省が「健康投資管理会計ガイドライン」作成へ~“健康投資”を見える化し、効果の分析・評価を可能に(後)
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投資対効果がわかる仕組みをつくる
では、Health(健康)に投資すると、ほんとうにProductivity(生産性)が向上するのだろうか。
この疑問に答えるため、経産省はPDCAサイクルを使って費用対効果を明確にしていくことを決め、9月27日に「健康投資の見える化」検討委員会を発足させた。検討会では、健康投資の金額(量)や内容(質)を見える化するための「健康投資管理会計ガイドライン」を作成し、健康投資を促進するためのインセンティブ措置を検討する。
ガイドラインでは、従業員が運動施設を利用する福利厚生費や、禁煙プログラムなどにかかる費用に対し、肥満率や病欠の減少などを効果として示し、こうした取り組みを行う企業の経営を投資家が適切に評価できるようにするという。
PDCAとは「Plan(計画)」「Do(実行)」「Check(評価)」「Action(改善)」の頭文字をとったもので、業務効率化を目指す1つの手法。これを健康投資管理会計に当てはめると、まず健康経営に取り組むことで解決したい経営課題を定め目標を設定する。次にそれを達成するための健康課題を洗い出し、実践して健康投資額を把握する。そして、健康投資額と照らし投資対効果を分析する。
ここでいう投資とは、産業医や保健師などの人件費や健康セミナーの開催費、仮眠室などの設置費などが該当する。一方、効果は、労働生産性向上、組織パフォーマンス向上、外部評価向上などをアウトカムに、株価や売上高、利益率の向上につながったかを評価していく。つまり、企業が社内で健康経営の投資対効果を分析・評価できるようにすることが、ガイドライン策定の目的といえる。
健康関連産業の需要増で新たな雇用が生まれる
2008年にメタボ健診が導入された際、健診と保健指導の達成度合いによって、健保組合などに高齢者医療費の拠出金を加減算するという制度が設けられた。ところがこれが裏目に出て、企業の間には、保健指導の対象者を少なくしたり、車の車検を通す感覚で健診さえクリアすれば良いとしたりする風潮が広まった。
健診は、受診者の健康状態を把握するとともに、疾病予備群を洗い出す手段であり、目的は保健指導によって予備群に行動変容を促し、発症を防ぐことにある。健康経営においても、その構図は同じだ。
アウトカムが明確にならなければ、「福利厚生費が増えて、無駄な時間がとられるだけ」と捉えてしまう経営者は少なくない。反対に作業手順がわかり経営効果が明確になれば、企業自らが主体的に健康経営に取り組むようになるだろう。
健康経営を推進する経産省の狙いは、(1)国民の健康増進、(2)医療費の適正化、(3)企業業績の向上と新産業の創出という、いわば一石三鳥を達成することにある。
経営者が健康に投資すれば生産性も上がり、ブランドイメージも向上すれば、そこに投資対効果が生まれる。さらに波及効果として、健康関連産業の需要が高まり、新たな雇用が生まれる。経産省はこんなイメージを描いている。
他方、企業サイドは、従業員の個別の取り組みや職場環境などが複合的に絡み合い、投資効果も個別に発生するので、課題への取り組み方と目的は企業によってマチマチだ。
メタボ健診は、まだまだお上から言われたからやるといった受け身の姿勢が見られるが、健康経営においては、企業が「健康経営はコストではなく投資である」ことを理解し、自走できるような仕組みをつくることが欠かせない。この青写真を描くことが「健康投資の見える化」検討委員会に課せられたミッションでもある。
(了)
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