豊洲市場における設計偽装 政商・日建設計(2)
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豊洲市場の設計偽装・建築基準法違反をめぐる訴訟
杭の高止まりは施工の問題であるが、豊洲市場6街区水産仲卸売場棟の設計(設計者は日建設計)における耐震偽装をめぐり、2018年6月29日、仲卸業者が提訴した(豊洲市場違法建築物除却命令等義務付け請求事件裁判)。
豊洲市場6街区の水産仲卸売場棟における設計偽装(設計は日建設計)に関しては、2017年11月、構造設計一級建築士の仲盛昭二氏が東京都を相手取り、違法建築物の是正措置を求める訴訟を起こしていた。仲盛氏の訴訟について東京地裁は、「豊洲市場の違法性に関して東京都に在住していない(仲盛氏は福岡県在住)者は当事者と成り得ない」との理由で仲盛氏の訴えを却下した。
仲盛氏の訴えは徒労に終わったかに見えたが、築地市場の廃止・豊洲への移転に反対をする立場である築地市場の仲卸業者の代表は、仲盛氏の協力を得て2018年6月、東京都に使用禁止を求める訴訟を提訴するに至った。彼ら仲卸業者は、豊洲市場の除却を求める訴訟と並行して、市場が豊洲へ移転した後も築地市場での営業権を主張し、東京都の圧力に耐えながら営業を続けてきた。
仲卸業者が提訴した裁判の内容を端的にいえば、「豊洲市場水産仲卸売場棟が建築基準法に著しく違反しているためこの建物を除却せよ!」という訴えである。
この豊洲市場の建物の所有者は小池東京都知事であり、建物が法に則り適切に建築されているかを管理監督するのも小池東京都知事である。従って、この裁判は「小池都知事が小池都知事に対して違法に建築された建物への除却命令を要請し、小池都知事自身が違法な建物を取り壊す命令を発すること」の義務付けを求めるという訴訟である。
この裁判の本訴訟を提訴した場合、建築基準法に違反している建物の使用禁止命令を義務付ける「仮の義務付け」を申し立てることができるので、仲卸業者5名は「豊洲市場違法建築物使用禁止要請仮の義務付け申立事件」(仮の義務付け申立)を申し立てた。仮の義務付け申立は仮のものなので、「建物を除却せよ」ということにはならず、「建物の使用禁止」を求めたものである。
本訴訟提訴の後、2018年7月9日に仮の義務付けの申立が行われた。これは口頭弁論といった公開の裁判ではなく、書面と審尋という面談により手続きが進行した。そして、築地市場閉場の1日前の10月5日に「仮の義務付け申立却下」が決定された。この仮の義務付け申立を担当した裁判官は本訴の裁判官とまったく同じ民事51部の清水知恵子裁判官他2名であった。
この却下決定に対して、申立人(本訴訟の原告=仲卸業者5名)は東京高裁に即時抗告を申し立てたが、その後、却下された。
仲卸業者が提訴した本訴の方は遅々として進まなかったが、2019年1月24日の口頭弁論においては、東京地裁民事第51部・清水知恵子裁判長が、建築基準法違反をめぐる実質審理に一切入ることなく「審理終結」を図ったため、原告側(原告と弁護士)が「裁判官忌避」を申し立てるに至り、長期間審理が中断する事態となった。東京地裁清水裁判長の暴挙の背景には、本訴と並行していた仮の義務付け申立が高裁の特別抗告許可により、すでに最高裁に審理の場(土俵)が移っていたことが考えられる。
原告が申し立てた裁判官忌避は最高裁まで争ったが、2019年8月28日最高裁は抗告拒否とし、原告の抗告を棄却した。最高裁が裁判官忌避を棄却したことにより、令和2年2月20日に本裁判の審理が再開することとなった。
以下の図は、今回の訴訟における東京都および小池都知事の立ち位置を示したフロー図である。
【桑野 健介】
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