危機管理能力欠如を露呈する安倍内閣
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NetIB-Newsでは、政治経済学者の植草一秀氏のブログ記事から一部を抜粋して紹介する。今回は新型コロナウイルスにおける安倍内閣の対応を批判した2月10日付の記事を紹介する。
安倍内閣が危機管理能力欠如を露呈している。横浜から出港し、横浜に帰港したクルーズ船の乗員、乗客の入国を認めない。船内で足止めされた乗客、乗員約3,600名が船内に閉じ込められている。
船内での感染の可能性が発覚して、検疫を強化したのは当然である。しかし、なぜ迅速に全員の検体検査=PCR検査を実施しないのか。検査を実施して、まずは感染者を船外に出して対応するのが先決である。
政府がPCR検査を実施したのは273人だけだった。乗員、乗客3,711人の10分の1にも満たない。ここから60名以上の感染者が確認された。さらに、その後も発熱症状などを訴える乗客が現れ、追加的に検査をして五月雨式に感染者が拡大している。
船内に残された乗客は閉ざされた船内で新たに感染するリスクを負う。感染者を完全に船外に搬出したとはいえないから、いつまで船内にとどまっていても、これで安全、安心ということにならない。
まず実行すべきは全員に対するPCR検査である。PCR検査の対応能力は数日前の段階で一日当たり7,000件であるとされていた。したがって、この検査能力を生かせば、一気に全員の検査を実行できたはずである。
感染者を船外に搬出して、非感染が確認された者を上陸させて経過観察を行う。この手順で対応するべきであると考えられる。船内では移動が制限され、乗客のストレスが拡大する。乗員の義務も過大になる。
安倍内閣は「観光立国」を謳っているのではないのか。観光立国を謳い、クルーズ船での旅行を奨励してきたのではないのか。いざというときに、信頼される対応を示さないのなら、日本に観光で訪問する意欲は削がれることになる。
そもそも論からすれば、日本政府が観光に巨大な税金を投入することの是非を論じる必要がある。
訪日客の拡大で利益を得るのは観光産業である。訪日客の拡大で国民に新たな負担が生じていることも事実である。観光産業に巨額の税金を投入する。その観光産業は自公の与党に献金し、選挙の際に票集めを担う。こうした業者と政治勢力の癒着が観光産業への巨大な税金投入の背景になってきた。
観光に巨大な税金を投入する前にやるべきことがある。社会保障制度を拡充することが先決だろう。フクシマ原発事故の被災者に適正な補償をすることが先決だろう。
この問題を今後論議するべきだ。とはいえ、安倍内閣はクルーズ船の寄港を奨励してきた。
そのクルーズ船に災難が降りかかっている。
安倍内閣は武漢からの邦人帰国を実行した。その際には、全員にPCR検査を実施した。クルーズ船はこれと異なるから、全員に対するPCR検査は行わないとされるが、クルーズ船は状況が特殊である。
船内に高齢者が閉じ込められている。高齢者の健康状態に異変が生じるリスクは低くない。クルーズ船への対応に世界が注目している。
迅速かつ適正な対応が示されなければ、世界の日本に対する評価が変ますます悪化する。それにもかかわらず、安倍内閣の対応はあまりにも遅い。緊急事態であるとの認識が不足しているのだ。
※続きは2月10日のメルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」「日本国内での新型肺炎感染拡大の可能性」で。
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