「建物は人がつくるもの」人を育て、技術を磨き続ける(中)
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照栄建設(株) 代表取締役社長 冨永 一幹 氏
照栄建設(株)は自前での設計・施工技術を磨くことにこだわり、地場でトップクラスのゼネコンとして高い競争力を維持している。建築のみならずまちづくりにも高い意識をもち、福岡のまちの発展にも大いに貢献してきた。この数年、建築業界に吹いた追い風のなかで財務を立て直し、10年、20年先を見据えて、同社の理念に基づいた教育を行っている。同社代表の冨永氏に今後の展望について話をうかがった。
(聞き手:(株)データ・マックス 代表取締役社長 児玉 直)
福岡の建設業界
――2019年期の決算はいかがでしたか。
冨永 18年期の決算は株の売却益で利益を大きく計上しましたが、19年期の利益は通常通りです。売上高は142億7,847万円です。無借金経営ができていることと、アベノミクスの景気により、このくらいが通常かと思っています。
――売上について、福岡の建設会社で150億円以上を記録するところが何社か出てきています。
冨永 そうですね。売上について、150億円を超えてさらに増やしたいとは思っています。
――マンションの市況について、今後も好況は続くのでしょうか?
冨永 マンションは全体としては少し落ちていくでしょうね。分譲マンションは減っていくと思います。ただ、そのなかでも良い物件および価格がちょうどフィットしたところはよく売れると思います。
私たちがお相手をしている顧客は地元のお客さまです。これが当社の強みです。私たちが売れる価格帯で提供できるのは、設計および施工を自分たちでできるという強みがあるからです。それでコストも吸収できます。デベロッパーであれば、販売価格でコストを吸収することはできないと思います。その点、当社はコストを圧縮してリリースできます。
――それには、企業努力もあったかと思いますが、下請としてではなく、ご自身で建設することの成果でもあると思います。
冨永 資材の原価は値上がりする傾向にあります。環境問題への対応などもあり、建築の設計基準が厳しくなっており、建物はまったく違うものになっているといえるほどです。サッシのレベルや断熱性能などの品質が向上していますし、設計基準は今後もさらに厳しくなると予測されます。それが将来的に建物の売買にも影響していくと思います。
ただ、この辺は見えない単価ゾーンです。そのため、たとえば10年前にこの金額で建てられたから今回も建てられるだろうと思われる方は多いのですが、実際には現在では同じ予算では建てることができないという状況になっています。賃貸マンションに関しては、福岡市は珍しく賃料がほとんど上がっていない都市なのですが、このように建物の建築コストは高くなっているわけです。
今後、純粋に請負だけでは建設会社としてやっていけなくなると思います。インフラ建設はこれからPFIになっていくと思います。PFIで自治体に提案していくということになるでしょう。
また、災害に関する事業は非常に大事であり、私たちも災害に対する意識を強化しなければいけないと思っています。ただ、災害時の現場には、現地の社員に行けとも行くなともいえず、指示は難しいです。現場に行って何かあると労災になってしまいますしね。災害に関する危機感は大事であり、他人事と思ってはいけませんね。台風、地震などの災害からの復興のほか、朝倉市も大雨で被害を受けています。
(つづく)
【文・構成:茅野 雅弘】<プロフィール>
冨永 一幹(とみなが・かずもと)
1969年6月14日生まれ。福岡県春日市出身。福岡大学大学院人文科学研究科教育臨床心理学専攻修士課程修了。2005年4月に照栄建設(株)入社。取締役社長室長、総務部長を経て17年8月1日に代表取締役社長に就任。<COMPANY INFORMATION>
代 表:冨永 一幹
所在地:福岡市南区向新町2-5-16
設 立:1972年6月
資本金:7,000万円
売上高:(19/5)142億7,847万円法人名
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