2024年11月24日( 日 )

「これでいいのか北九州市」発売記念~出版社のマイクロマガジン社を直撃取材(前)

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 2月18日、(株)マイクロマガジン社(東京都中央区、武内静夫代表)の人気シリーズである地域批評シリーズ「これでいいのか北九州市」が発売された。同社が北九州市を取り上げるのは、今回で3回目となる。記者は発売を機に「これでいいのか北九州市」出版社を直撃取材。これまで何度も現地取材を重ね、北九州市変遷の様子を見てきたという、同社第一編集部部長・髙田泰治氏(福岡県筑紫野市出身)に話をうかがった。

 

3回目となる「これでいいのか北九州市」を担当した、第一編集部取材チームの面々(左から清水龍一氏、岡野信彦氏、髙田泰治氏、広報担当・菅朗氏、中村玖見氏)
3回目となる「これでいいのか北九州市」を担当した、第一編集部取材チームの面々
(左から清水龍一氏、岡野信彦氏、髙田泰治氏、広報担当・菅朗氏、中村玖見氏)

面白くてためになる地域分析本「地域批評シリーズ」

 ――まずは同シリーズについて教えてください。

 髙田 本シリーズの特徴は、地域のおいしいお店や観光スポットなどを紹介する地域ガイドではなく、各地域のイメージやレッテルがはたして本当なのか、実際のところどうなのかを、各種統計データや現地取材などを通じて検証し、地域の本当の姿、本当の魅力を明らかにすることをコンセプトに掲げています。

 当初は都内の書店などを中心に半年に1本くらいのペースで発刊しておりましたが、今では全国の書店やコンビニなどにも置かせていただいており、毎月のペースで発刊を続けております。おかげさまで通巻100号、累計100万部を超える超ロングランシリーズに成長しました。

 ――発刊に至るまでのプロセスを教えてください。

 髙田 まずは取り上げる地域の企画立案から始まります。企画が決定したら、その後打ち合わせを行います。ほかの地域も並行して進めているので、後になってからあれもやっていないこれもやっていないでは取り返しがつきませんから、事前の打ち合わせは慎重に行っています。

 打ち合わせが終わったら、事前の下調べなどを入念に行ったうえで現地取材に取りかかります。だいたい1チーム2、3人体制で各地域を周っていますが、たとえば1つの県を取り上げる場合だと、(地域によって異なりますが)だいたい1週間くらいかけて県内全域の関係各所を周ります。

 取材が終わったら、事前に下調べした資料や現地の方から得た情報、現地写真などを基に原稿を作成します。その後、編集作業を経てレイアウトなどを制作、発刊します。ここまでで約3カ月。これを地域ごとに同時並行して進めています。

なんだかんだダントツで「地元愛が強い」北九州市

 ――これまで北九州市は2回取り上げられていました。

 髙田 初めて取り上げたのが2013年でしたが、取り上げた理由として、その年はもともとあった5つの市(門司、小倉、若松、八幡、戸畑)が合併して設立された「市制50周年」の年だったというのがあります。詳細は本を読んでいただければおわかりいただけると思いますが、合併前の5市はそれぞれ特徴をもっていましたので、合併に際していろいろと揉めたりしたわけですね。いろいろな思惑の上で合併してできたのが北九州市なのです。1回目では、合併前の5市、合併を経て、現在に至るまでの北九州市の変遷についてや、それを間近で見てきた市民の反応・様子などを、資料や現地取材で得た声などを基にまとめました。

 2回目に取り上げたのは2016年ですが、これは文庫版というかたちでの出版でしたので、1回目の内容をベースに、その後追加で取材したものを加えました。北九州市はかつて九州で一番栄えた都市で、福岡市よりも先に政令指定都市に指定されたという事実があるのですが、当時から人口減が止まらないという深刻な問題を抱えておりました。また、「北九州がこのまま政令指定都市でいいのか」という声も囁かれていました。こうした声を踏まえ、「この先の北九州市は一体どうなってしまうのか」と投げかけました。

 ――北九州市はほかの自治体と比べて何がどう違いますか?

 髙田 一言でいえば「独特」なところですね(笑)ひとくくりでは言い表せません。

 近隣自治体との関係性だと、商業の街(サービス業)としての“福岡市”、企業城下町(製造業)としての“北九州市”の関係性が例えとして挙げられますが、そもそもの成り立ちやそこに至るまでの経緯はまったく違いますし、両市の関係性も異なります。

 私自身が筑紫野市出身ということもあり、たしかにそうだと感じているのですが、北九州市の場合、かつての歴史的経緯からどこかしらで福岡市を意識している傾向があるように感じます。逆に福岡市も常に北九州市を意識し、何かしら比べたがる傾向があるように見受けられます。この関係性はほかの自治体ではあまり見られません。

 ――これまでの売れ行きはどうですか?

 髙田 おかげさまで1回目2回目ともに初版の発行部数を上回る「重版出来」となりました。3回目の今回はまだ発売したばかりなので現時点での正確な販売数はわかりませんが、すでに多数の追加注文がきております。

 ほかの自治体の時と比べても北九州市の売れ行きは非常に多いのが特徴です。福岡県だけで見ても、県をはじめ県下の自治体もいくつか取り上げましたが、売上部数はダントツに多いですね。売上が好調な要因は様々あると思いますが、1つ挙げるとしたら「地域住民の地元愛が強い」からではないでしょうか。そういう意味では、今回の号もぜひ地元の方々に手に取って読んでいただきたいです。

紀伊國屋書店新宿本店では既に売り切れとなっていた
紀伊國屋書店新宿本店では既に売り切れとなっていた

(つづく)
【聞き手/文:長谷川 大輔】

(後)

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