縄文人とアイヌの関係
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縄文アイヌ研究会
主宰 澤田健一 氏多くの学者は「アイヌは12~13世紀頃に北から北海道にわたってきた北方民族」だと説いていました。アイヌ語と現代日本語はまったく別物であると説明する人もいました。そうしたなかでも、アイヌは縄文人の子孫であると考えております。
それを平成末から書き始めました。縄文からアイヌへと引き継がれている技術に編布(あんぎん)という織物があります。これは縄文時代に日本全国で使用していたものですが、弥生時代に入ると編布は日本全国から姿を消します。その縄文の技術を現代アイヌは引き継いでいるのです。
また、南の島々にはアイヌ語の名称が残っています。八丈島で真田織を織る道具を「カッタペ」と呼びます。これはアイヌ語で「織るヘラ」という意味になります。また西表島には「ピナイサーラ」という55mほどの滝があります。アイヌ語で「ピナイ」は谷川、「サーラ」はお年寄りの白く長いひげです。長いひげのような滝のある谷川なのでしょう。さらに西表島と与那国島には「ソナイ」という川がありますが、これも滝のある川という意味になります。
そうは言っても、北海道のアイヌが南の島々に行って名称を付けて歩くわけがありません。それは縄文時代から話していた夷言葉(えびすことば)の名称がそのまま残ったのでしょう。実際に比較言語学によって復元された弥生言葉を聞くと、アイヌ語を話せない私たちには、まるでアイヌ語のように聞こえます。おそらく縄文語まで遡ることができれば、それはほとんどアイヌ語になるのでしょう。
そして日本全国にアイヌ語地名が残っているのです。指宿「イープシーキ」=爆発のあった場所、四万十「シマント」=澄んだ水、富士「フチカムイ」=火の神、利根川「トネ」=もっとも長い、遠野「トーヌップ」=高原の湖、花巻「パナマキ」=川の中流にある平野、などです。極めつけは大和です。「ヤマト」を大和言葉では読み解けないのです。ウィキペディアでは語源を、山のふもと、山に囲まれた地域、山門、山跡、などですが、どれも陳腐に感じます。「ヤマト国」とは夷言葉(今でいうアイヌ語)で理解すると「この尊き国」あるいは「栄える尊き国」となります。とても誇り高い国名なのです。
ところで縄文集落の埋葬方法として大人は集団墓地に葬るのですが、幼児や乳児が死んだときには、かめに入れて竪穴住居内の入り口の下に埋めるという習俗がありました。つまり出入りするたびに死んだ子どもを踏んづけて歩くのです。なぜそんな罰当たりなことをしていたのか、考古学者は誰1人として理解ができませんでした。ところが、その特殊な習俗がアイヌに残っていて、その意味まで伝えているのです。
梅原猛さんがアイヌのおばあさんから聞いた話によると、アイヌは輪廻(りんね)転生を信じていたようです。死んだご先祖さまが遠い所から戻ってきて次の赤ちゃんとなって生まれてくるのだと考えていたそうです。それなのに生まれてすぐ死んでしまったら、また遠い所へ帰って行かなければならない。それでは、せっかく戻ってきてくれたご先祖さまに申し訳がない。だから人通りの一番多い入口の下に埋めて、次だれか女性が妊娠したら、そのおなかに入って次の赤ちゃんとなって生まれてきてください、そういう願いを込めて埋めるのだそうです。つまりアイヌは縄文の習俗を引き継いでいるだけではなく、その意味まで伝えているのです。
こうした事例をいくつも挙げながら、アイヌは縄文人の直系の子孫なのだと説いてきました。すると令和に入ってすぐ、重要な研究成果が公表されることになりました。2019年5月に、国立科学博物館、国立遺伝学研究所、東京大学などの7研究機関が合同で研究した結果によると、現代のアイヌは縄文人の遺伝子を約7割も保有しているというのです。
それを『古代DNA展』で明確に説明しています。国立科学博物館が開催する25年3月15日(土)から6月15日(日)までの特別展であり、連日大勢の来館者で賑わっています。そこに『DNAが語るアイヌへの道すじ』という説明があり、全文をご紹介します。
【アイヌは12世紀には成立したとされているが、それ以前の集団形成の過程は、文献資料がないために明確ではない。しかし、DNA分析が進んだことで、彼らは北海道の縄文人をベースとしながら、その後の歴史のなかで、本土日本や沿海州の集団からの影響も受けつつ誕生したことがわかってきた。これまでアイヌは日本列島の周辺で孤立して成立した集団という見方をされてきたが、それは誤りであることも明らかとなった。アイヌ集団には、現代の本土日本人に10~20%ほどしかない縄文人の遺伝子が70%近く伝わっており、最も縄文人に近い集団である。】
これまでのアイヌ成立過程の考え方が誤りであったことを認めたうえで、「アイヌは縄文人に最も近い集団である」と結論付けているのです。これが正しい認識であって、『縄文アイヌ研究会』ではアイヌを通して縄文を読み解くという試みを行っています。いま縄文に学ぼうという機運が醸成されつつあると感じますが、それはつまりアイヌに学ぼうということになるのです。
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