医療分野でもAIの導入が加速(前)
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日韓ビジネスコンサルタント 劉 明鎬 氏
米国の市場調査機関であるジオンマーケットリサーチ(Zion Market Research)の報告書によると、医療分野の人工知能(AI)市場規模は、2018年は約14億ドルだったが、今年から2025年にかけて、市場規模は年平均43.8%で成長し、2025年には約178億ドルに達するという。
なぜ医療分野でAIの導入が進んでいるのだろうか。医療現場における問題の1つに、人による判断ミス、すなわち医療ミスがある。医療ミスが起こるのは、医師や看護師の技術不足、知識不足というよりも、ほとんどは、医療現場の深刻な人材不足からきている。
医師数が足りないので、医師は長時間勤務せざるをえず、そのために疲労がたまり、結果、判断ミスや作業ミスを起こしている。先進国だけでなく、開発途上国でも、医療分野における人材不足は、大きな課題となっている。
世界保健機構(WHO)によると、世界57カ国で2,300万名の医師・看護師が不足しているという。医療分野にAIが導入されるようになると、医療サービスの基本的な部分は、AIによって自動化され、人材不足の解消につながる。データ入力、検索、画像の判読など、繰り返し発生する業務をAIに補助させることによって、医師は診断や患者との時間に割くことができるようになるからだ。
病例データや論文データを学習したAIが、医師の診断・治療方針を決定する際に、補助するという行為は、すでに現実化しつつある。また、医療関係の論文は量が膨大で、医師がそれをすべて読むのは大変である。大量のデータを蓄積することが得意なAIが、症状と関係する論文を読んで医者を補助すると、診察の精度が大きく上がることになるだろう。
AIは創薬にも貢献しようとしている。膨大な実験データ、過去の論文データなどをAIに学習させることで、製薬会社では新薬開発の効率を上げようとしている。このようにAI技術は診断の精度を上げるだけでなく、その他いろいろとメリットがあるので、今後、医療分野への導入が増えていくだろう。なお、多くの診断アプリにもAI技術が活用されている。脳溢血の診断、管状動脈の診断、血流測定を診断するアプリなどがすでにある。
今後10年間で医療分野におけるAI技術の導入はますます増えていくものと予想される。先進国にある多くの人工知能を専門に研究・開発する会社では、医療分野でのAI技術の重要性を痛感し、その技術開発に全力を尽くしている。
今後は大きく3つの分野でAI技術の導入が進むだろう。1つ目は画像を人工知能に分析、判断させ、迅速で精度の高い診断を行う分野である。2つ目は、医療現場で大きな負担となっている業務である患者の診断結果の記録と、それをコンピューターに入力する作業。このような作業を意識しすぎて、医師が患者の顔は見ずに、パソコンばかりを見ているという苦情が患者から出るほどだ。しかし、音声自動認識の技術を活用し、このような作業をAIに任せれば、医師の業務負担はかなり軽減される。
最後に、患者の画像、音声、データなど総合的な医療情報の活用に、AI技術を導入することで、医師の診療を補助することだ。
(つづく)
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