国際未来科学研究所
代表 浜田和幸 氏
7月31日の「国家情報局」の発足に向けて、高市政権は米国・英国といった英語圏の諜報同盟「ファイブ・アイズ」や、韓国などの同盟国・同志国と、従来の『限定的な情報交換』から『システム統合による共同分析』への格上げ(多層的連携)を構想し、各国との実務レベルでの打ち合わせを進行させています。背景には中国・ロシア・北朝鮮による軍事活動の活発化や認知戦に対し、同盟国側も日本の情報力強化を強く歓迎・支援し、具体的な連携構想の必要性が強く認識されるようになったことがあります。
ファイブ・アイズとの
情報共有を格上げ
これまで日本の情報共有は「日米」などの2国間が主軸で、しかも提供される情報は一部に限られていました。新設される国家情報局は、「情報の縦割りを排したハブ」として、高度な連携を構想しているのが新機軸です。
具体的には、米・英(ファイブ・アイズ)とのシステムとデータの統合による「シックス・アイズ化」です。米国の国家安全保障局(NSA)やイギリスの政府通信本部(GCHQ)をモデルに、国家情報局内にAIを活用した次世代のOSINT(公開情報分析)やシギント(通信・電磁波の傍受情報)の共通データベースシステムを導入します。米英などが持つ世界規模の通信傍受データと、日本が持つ東アジア(中国・北朝鮮)の地政学データをリアルタイムで結合して共同分析できる体制を目指すものです。
韓国との間では中朝をにらむ「日米韓インテリジェンス共有」の即時化を目指します。相次ぐ中国と北朝鮮の要人往来やミサイル発射に対抗するため、韓国の国家情報院(NIS)とも、これまでのミサイル追跡データの共有から一歩進め、「人的情報」の統合や、サイバー攻撃・認知戦の防諜情報を迅速に共有する3国間メカニズムへの組み込みを想定。
豪・欧州・NATOとの間では多層的な防衛ネットワークの構築を念頭に入れています。オーストラリアやフィリピンとの相互アクセス協定(RAA)に基づく海上ルート情報の共有に加え、NATO(北大西洋条約機構)ともサイバー防御やAI先端技術の協力接点を広げる「多層的な防衛網」の一部として機能させる狙いがあるからです。
各国との実務協議と情報保全の条件
水面下での調整を含め、すでに各国の情報機関幹部との実務的な打ち合わせが始まっています。たとえば、ファイブ・アイズからの公式な支援申し出があり、協議がスタート。去る6月初頭、ファイブ・アイズを構成する米英など5カ国が、日本政府のインテリジェンス強化に対する「公式な支援」を申し出ました。
これを受け、新設される国家情報局の設立準備チームが、米NSAや英GCHQの実務者を交え、「どのような規格で機密データシステムを構築し、相互接続するか」というシステムインテグレーションの具体的な打ち合わせを行っています。
日米韓の外相・安保高官レベルでの確認作業も進行中です。直近の7月も、中朝の動きに対して「米韓などと緊密に連携していく」ことが確認されており、国家情報局の発足とほぼ同時に開かれる「国家情報会議」の初会合に向けて、米国の国家情報長官(DNI)室や韓国側との間で、局長級のホットラインを開設するための実務協議が完了。
同盟国との打ち合わせが進む一方で、各国から日本に対して「情報漏洩対策を早く完成させよ」という強い圧力がかかっており、これが打ち合わせを真の機密共有に進めるうえでの障壁(条件)となっています。
日本が求められているのは「セキュリティ・クリアランス(適性評価制度)」の早期運用です。経済安保法が成立したものの、民間人や官僚が海外の最高機密にアクセスするための厳格な身辺調査・資格付与制度が完全に機能しなければ、米英は本当のトップシークレットを日本に提供しません。
また、次なる要望としては「スパイ防止法」の早期法制化が出ています。ファイブ・アイズ側からは、中国などの激しいスパイ工作を防止・処罰するための「スパイ防止法(外国不正干渉防止法)」の制定が日本に強く求められており、高市政権が今夏以降に設置する専門家パネルでの法制化のスピードアップを意図しています。
今回の国家情報局の設立は、日本が「自分の国の情報だけを扱う組織」から、「米欧の巨大なスパイネットワークにプラグイン(接続)して共に戦う組織」へと脱皮するための、歴史的な第一歩として位置付けられています。
初代局長・原和也氏に託される役割
初代局長には原和也氏(現・内閣情報官。58歳、一橋大学経済学部卒)の就任が決定。防諜と国内治安のプロとして評価され、ほぼ毎週、首相に直接ブリーフィングを行ってきた実績があります。
原氏の最大の強みは国際経験の豊富さです。在ロシア日本大使館、在アメリカ日本大使館の双方で一等書記官や参事官を務めており、米露のインテリジェンス事情に深く精通しています。
2019年からは安倍晋三首相(当時)の事務担当の首相秘書官を務め、官邸中枢での政治・外交決定を間近で支えました。高市首相からの信頼も極めて厚く、高市政権発足後は内閣情報官として「国家情報局」の創設準備を自ら現場で主導してきたほどです。
また、26年5月には自ら訪米し、米国の情報機関(CIAやDNIなど)の幹部と直接会談を行っています。日本がどのようなインテリジェンス機関を目指すかを事前に説明し、信頼関係を構築してきた張本人でもあります。
(つづく)
浜田和幸(はまだ・かずゆき)
国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鐵、米戦略国際問題研究所、米議会調査局などを経て現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選をはたした。11年6月自民党を離党、無所属で総務大臣政務官に就任し震災復興に尽力。外務大臣政務官、東日本大震災復興対策本部員も務めた。著作に『イーロン・マスク 次の標的』(祥伝社)、『封印されたノストラダムス』(ビジネス社)など。









