九電工が役員人事の変更を発表~失われた信頼を取り戻せるか
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(株)九電工(福岡市南区)は2月26日、代表取締役と役員人事の変更を発表した。代表取締役社長には佐藤尚文氏(現・取締役会長)が就任。西村松次・現代表取締役社長は取締役会長に就任する。
また、代表取締役副社長執行役員として、武井秀樹氏(現・専務執行役員)が新たに選ばれたほか、今回の取締役人事では、山本泰弘氏、外堀隆博氏、陶山和浩氏が新たに取締役として名を連ねた。いずれも高卒もしくは大卒後、九電工に入社した生え抜き組となる。なお、現・代表取締役副社長・猪野生紀氏と檜垣博紀氏、取締役常務執行役員・北村邦彦氏は退任予定となっている。
同社は福岡県築上町のし尿処理施設建設工事をめぐる談合事件で、昨年3月に元行橋営業所長ら社員4人が贈賄や談合などの罪で逮捕。同年9月に判決が言い渡され、有罪が確定していた。
また、福岡県や県下自治体、近隣県などから指名停止措置を下され、公共工事の受注が減少。2020年3月期における公共工事の受注高はおよそ120億円程度減少する見通しと試算されている。しかし、この金額は売上高に占める割合で見ると僅か4%程度にとどまり、業績に与える影響はそこまで大きいものとはいえない。こうしたことが同社の企業体質を助長することになってはいないだろうか。
同社は談合事件を受けて、「すべての事業活動において法令遵守(コンプライアンス)を徹底し、皆様からの信頼の回復に努めていく」とし、全社一丸となって再発防止に取り組んでいくことを表明した。
しかし、これについては懐疑的な意見が多い。同社の下請を務めている業者は、「これまでも複数回、不正が起こる都度、今後は加担しないよう同社から要請はあった。しかし相変わらず不正は繰り返し行われていた。ほかにも他社では考えられないような対応をされたこともあった」と証言。
「人も企業もそれほど簡単に変わるものではない。今まで甘い汁を吸ってきた社員はもっと巧妙になるのではないか」と述べていた。
また、昨年10月には、同社が水面下で事業を進めている長崎県佐世保市の「宇久島メガソーラー事業」では、現地の九電工関係者が市や住民に無許可で安全祈願を執り行なっていたことが判明。住民からは怒りの声が上がるとともに、同社の企業コンプライアンスの低さを露呈するかたちとなっていた。
長年にわたり染みついた企業体質は一朝一夕に改善されるものではない。加えていまだに同社から「無許可でわざわざ安全祈願を行った真意は何なのか」という質問に対しての回答が来ていないことを、改めて申し添えておく。
会長と社長が入れ替わるのは異例の人事だが、これが信頼回復に向けた会社としての決意表明と見てよいのだろうか――前述の業者は今回の人事に関して、「正直なところあまり期待はしていない」とし、「これまでの待遇が多少マシになればいいが…」と述べるにとどまった。佐藤氏による新体制下、信頼回復に向けてどのような施策が講じられるのか、その手腕が注目される。
【長谷川 大輔】
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