トランプ大統領もかなわないインドの強かな国際交渉力(前編)
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NetIB-Newsでは、「未来トレンド分析シリーズ」の連載でもお馴染みの国際政治経済学者の浜田和幸氏のメルマガ「浜田和幸の世界最新トレンドとビジネスチャンス」から、一部を抜粋して紹介する。今回は、2020年2月28日付の記事を紹介する。
このところモディ首相率いるインドの台頭が目覚ましい。中国を人口の多さでも経済発展の速度でも追い抜く勢いを見せている。何しろ、人口は数年以内に17億に達するというし、経済成長率も近年、7%台を維持する勢いだ。「華僑」と並び称される「印僑」の存在も大きく、世界で活躍し影響力を増しているのがインド出身者である。アメリカでは440万人のインド系アメリカ人がITや医療の分野で際立った存在感を示している。
そうしたインド系アメリカ人を自らの大統領選挙戦で味方に付けようというのがトランプ大統領である。2020年2月24日と25日の2日間、メレニア夫人のみならず娘のイバンカ夫妻もともない、大統領就任後初となるインド訪問を行った。自国内では新型コロナウィルスの感染拡大が懸念され、株式市場にも陰りが見える時期に、あえてインドを訪問するというのはよほどのこと。それだけトランプ大統領自身が危機感を抱いていることの表れであろう。
実は、アメリカとインドの間では貿易摩擦が深刻化していた。両国間の貿易額は1,600億ドルであるが、アメリカが230億ドル以上の赤字に苦しんでいる。そのため、トランプ政権では関税を強化し、インドに対してはGSPと呼ばれる貿易上の優遇措置を外す決定を下した。対抗するように、インドはアメリカ産の農産物や製品への関税を拡大。いわゆる「関税合戦」が勃発しているといっても過言ではない。
双方とも妥協策を探ってきたが、交渉は暗礁に乗り上げてしまい、通商代表のライトハイザー氏もお手上げ状態だ。結局、トランプ大統領の前にインドを訪問する予定であったが、直前にドタキャンしてしまった。何とか、トップ同士の交渉で事態の打開を目論んだわけだが、今回、トランプ大統領が自慢する得意のディールは成立しなかった。
もちろん、モディ首相はアメリカの大統領一行を最大級の歓迎でもてなした。地元アーメダバードでは11万人収容のクリケット場を満員にし、「ナマステ、トランプ」の標語を掲げ、歌や踊りで歓迎ムードを盛り上げた。昨年、アメリカを訪問したモディ首相をトランプ大統領はテキサスの野球場で5万人参加の歓迎集会を開催したが、その倍となるインド式接待攻勢に他ならない。加えて、アメリカ製の対潜哨戒用のヘリコプターなど兵器を購入することでトランプ大統領に花をもたせた。とはいえ、その額は30億ドル。貿易赤字の解消には程遠いものであった。しかも、トランプ大統領がインドの進める次世代通信5G構想に関し、中国のファーウェイ製を使わないようにと働きかけたにもかかわらず、インドが出した答えは「ノー」であった。
※続きは2月28日のメルマガ版「トランプ大統領もかなわないインドの強かな国際交渉力(前編)」で。
著者:浜田和幸
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