2024年12月23日( 月 )

検察の闇? 不正放置の日本郵政と東芝に 検察OBが続々と天下り!(4)

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 かんぽ生命の不正販売をめぐる情報漏洩問題が発覚した日本郵政グループや、2,000億円超の粉飾決算が判明した東芝に、なぜ捜査のメスが入らないのか。その謎を解明すべく調べを進めたところ、元検事の弁護士たちが続々と両社で社外取締役などの要職に就いていたことがわかった。

取材に対する検察OBたちの見解は・・・

 筆者はこうした事実関係を踏まえ、別掲の表に名前を挙げた「日本郵政グループと東芝で要職に就いた元検事の弁護士たち(故人は除く)」および日本郵政グループ、東芝の両社に書面で取材を申し入れた。書面では、両社の不祥事が刑事事件化されず、世間に不満を述べる声などが少なくないなか、元検事の弁護士たちが両社で要職に就いていることは公正さを疑わざるを得ない事情だと指摘。異論や反論があれば、聞かせてほしいと求めた。

 その結果、回答期限までに東芝および同社の現社外取締役である古田佑紀氏から回答があったほか、1人から匿名を条件とする回答があった。回答内容はそれぞれ次の通り(匿名を条件とする回答については、回答者を特定し得る情報は割愛した)。

● ● ●

〈東芝〉
 調査・法律の高い識見を有した方に参画いただくことは公正さの維持に資することになると一般に認識されているものと理解しております。

 また、元検事の弁護士が第三者委員会の委員となったり、社外取締役、社外監査役に就任している会社は多数あると認識しており、元検事という職歴があることが一律に独立性を失わせる・調査の公正さを欠くといったことにつながるとは考えておりません。

〈古田氏〉
 お尋ねの件については、検察当局においては、いかなる事案に関しても法律と証拠に照らして刑事事件として立件することの可否を判断しているものと承知しております。

〈匿名の回答〉
 片岡さまが、日本郵政グループと東芝において、(引用者注・検察OBが)「社外取締役」や「第三者委員会委員」などの要職に就いていることが、公正さを疑わざるを得ない事情であると主張されることに関して、片岡さまの感じ方自体に対する特段の違和感はありません。

 世間一般の方々のなかにも、検察OBの検察等の捜査・調査機関に対する従来の地位を背景とした働きかけの存在を疑われる方が、少なからずおられるということは紛れもない事実であろうと思います。

 見え方として、世間には、そう見えてしまいがちであるということは、決して良いことではありませんね。(略)ただ、実際に、検察OBの存在が、検察等の捜査・処分に対する影響力をもちうるかというと、私自身は、OBには大変失礼ながら、そんな力は到底ないと思います。(略)検察は、OBを相手にはいたしません。検察ほどOBに冷淡な組織はないという言い方もできると思います。

 事件を起訴するかしないかは、検察自身が自己の責任において決すべきことであり、もし、その捜査・処分に問題があるとすれば、検察こそが反省すべきものと思います。

● ● ●

 このうち、東芝と古田氏の回答については、丁寧ではあるが、教科書通りと思える内容だ。とくに言及すべき点はない。

 一方、匿名を条件とする回答には考えさせられた。

 というのも、検察がOBを相手にしないとか、検察ほどOBに冷淡な組織はないという見解はにわかに首肯できないが、あながち否定もできないからだ。なぜなら、東芝の粉飾決算発覚の端緒を開き、刑事告発の意向もあったとされる証券取引等監視委員会の当時の委員長・佐渡賢一氏も福岡高検検事長などを務めた大物検察OBだからだ。

 この事実関係を見ると、東芝を摘発させようと動いた検察OBに対し、検察がNOを突きつけたようにも解釈できる。実際、現職の検事たちの心情を想像してみると、検察OBが見つけてきた大企業の不祥事を摘発したところで、自分たちの手柄にはならないから、東芝の摘発に前向きになれなかったともしても不思議はない。

 そして、もう1つ考えさせられたのは、この匿名を条件とする回答が超がつくほど丁寧だったことだ。実は引用した回答部分の前には、検察の内情などを説明した長文も綴られており、それも含めると回答の文字数は全部で3,000字強におよんでいた。社会的地位の高い年配の人から、このような対応をされると、やはり筆者も人並みに恐縮せざるを得ない。

 検察とは何の関係もない筆者ですらそんな思いになるくらいだ。現職の検事たちは、こういう大物検察OBが要職に就いている企業に捜査のメスを入れることはやはり心情的に難しいのではないか。

 いずれにせよ、検察OBが要職に就いている大企業の重大な不正が刑事事件化されなかった場合、その事情は批判的に検証されなければならないだろう。

(了)
【ジャーナリスト/片岡 健】

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