2024年11月05日( 火 )

シリーズ・コロナ革命(10)~【座談会】一斉休校って本当に必要?~そげんこつあるかい!(データ・マックス社員編)

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 新型コロナウイルス感染拡大にともない、安倍首相は2月27日夕、突然全国の小中学校、高校、特別支援学校に対して臨時休校するよう要請した。これを受けて、早い学校では翌28日午前までの登校を最後に休校に入った学校もあり、全国の家庭に波紋が広がっていた。データ・マックスでは4日、子育て中の家庭から6人を招集して急遽座談会を実施。休校措置にとまどう親のリアルな声をまとめた。

■高齢者にうつすのでは、と疑心暗鬼

 ――2月27日に安倍首相から小中高に対する休校要請が出ました。子どもがいる家庭の社員に集まってもらいましたが、まずは現状を。

 I 県立高校2年生の息子がいます。3月2日に休校の通知が来て、4日から休校となりました。

 M 市立中学に通う2年生の娘がいます。2日から休校となっています。

 G 下の子どもが市立中学2年です。27日時点で28日が最終登校日といったん決まったのですが、あまりに急で準備が間に合わないということで、3月2日まで学校に行き、3日から休校となりました。

 K 県立高校3年と市立中学3年の子どもがいます。2人とも2日から休校です。

 N 私立高校2年と市立中学2年の子どもがいます。中学は2日から休校となっていますが、高校は私立ということもあって、休校になっていません。

 O 県外に高校1年の子どもがいて寮生活しています。翌28日午後から休校となり、15日まで休校で、部活動も禁止となりました。3月に出場予定だった大会も中止になり、子どもは落ち込んでいますね。寮から帰省してからは友だちと遊びまわっているようです。

 I うちの子どもが通う高校は、本来は長期休み中も課外授業が行われていたのですが、それも中止となったため、ずっと家にいるようです。

 ――それぞれの家庭で事情は違うと思います。率直な感想を聞かせてください。

 O Kさんのとこは大学受験生と高校受験生を抱えているので、とくに心配ではないですか。

 K 大学受験のほうはあまり問題ないというか、高校は休校以前から自主学習ということで授業はなくなっていたので、あまり影響はなかったようです。

 ただ、卒業を控えた思い出づくりという点では物足りなさが残ると思います。休校という措置は、個人的には良かったと思っています。というのもコロナウイルスが広がり始めたころ、社会全体もそうですが学校にも「悪者探し」という雰囲気が広がっていたようで、子ども自身は自分が感染して友だちにうつしてしまうことを過剰に警戒していたんですね。大学受験はただでさえ大きなストレスなので、神経質になっていたようです。

 O 別のご家庭でインタビューしたんですが、小学校6年生のご家庭は卒業式まで臨時休校になったため、子どもさんが寂しがっているそうです。

 N うちの子どもは当初、「学校に行かなくてよい」「勉強しなくていい」と喜んでいたのですが、宿題を山ほどもらってきて、今は喜びも半減したようです(笑)。

 M 娘は、学校が休みになることに関してはそれほど動揺しなかったのですが、部活動が休みになったことと、最後の活動に参加できなかったことは残念がっています。顧問の先生の異動も決まっていたため、どたばたと落ち着きがなかったですね。娘は「部活命」なので、休みの間も自主練をすると思います。

 N 自主練っていうのは、学校でやるんですか?

 M 学校に出てきてはいけないので、自宅とか外でやっていますね。

 N うちは学校の部活ではなく週末にクラブでラグビーをやっているのですが、そちらも休みになりました。毎年この時期に卒業フェスタというのが行われて卒業生とお別れ試合を行うのですが、それがなくなり子どもは寂しそうにしています。

 I 子どもは軽音楽部でして、自主練を決め込んで自宅でギターを弾いていますよ。

 G うちの子どもは吹奏楽部で、卒業式で卒業生を送るための練習をしていましたから、気の毒ですよ。そういえば、2月に子どもが修学旅行で京都に行ったのですが、直前まで実施するかどうかはっきり決まりませんでしたね。現地では班に分かれて行動する予定だったのが、班別行動はしないということになり、全体での行動のみ。食事はすべて弁当に変更になりました。

 私も先日ベトナムに行ったのですが、ベトナム出張のお土産と、子どもが買ってきた京都土産を祖父母にあげようと思っても、自分たちがもしかしたら菌を持っているかもしれない、高齢者にうつしてしまうのではと疑心暗鬼になって、結局郵送しました。感染しているのかしていないのかわからないという状況が、一番困りますね。

 K 何らかの手を打つにしても、終息宣言をするなり、とにかく実態を知らせることが大事ですよね。検査できないという状況は絶対に良くない。感染者数が増え続けている韓国のことを問題視する向きもありますが、あれはきちんと検査しているから増えているのであって、日本はずいぶんと先を行かれている気がします。

 N 検査できない、検査しづらいという状況でもやもやします。

 K 息子が卒業した高校では毎年、中庭で卒業生が先生への感謝を大声で歌う恒例行事があります。最初はやらないという方向だったのですが、ある生徒が自己責任でやろうと言い出して、最後はみんなマスクをむしり取って感謝の歌を叫んでいました。結果的にはよかったと思います。

■新型コロナ禍は「世代的トラウマ」になるのか

 O みなさん、小学生以下のお子さんはいないということですね。共働きで小さな子どもがいるとなるとこの座談会もずいぶん違った雰囲気になったと思います。政府に対する恨み節がさく裂するような。

 G 私自身が感じていることなのですが、今回の休校措置を経験した子どもたちの世代が「内向き世代」になりはしないかと危惧しています。人間って、育った環境とか社会の雰囲気でその人の持つ思想がかなり影響を受けますから。私などは戦後レジームのなかで育ってきたため、実際にそのような影響を受けていると自己分析しています。今の子どもたちの世代は、グローバリズムが終わって保護主義が台頭してきた状況下で育ち、かつ今回のコロナウイルスのようなことが発生するとそれに拍車がかかるのでは。たとえば東洋人差別、入国制限などがあり、グローバリズムの反動もあってすごく内向きになっていくのではないかと危惧しています。

 O 世代的トラウマというか、子どもたちにとっては大きな体験ですよね。突然、自分たちの国の総理大臣がテレビで「こわい病気が流行っているので、明日から学校に行かなくてよい」と宣言した、という(笑)。

 G 人が世界中を自由に移動して、人種や民族の垣根が徐々に低くなっていくというグローバリズム的価値観が機能しなくなっていく面もあり、移民排斥などと相まって排他的な思想の影響を受けるのでは。

■日本帰りは出席停止~台湾のわかりやすさと日本のグダグダさ

 ――検査体制の話が出ましたが、政府に求めることはありますか。

 O 今回の休校は始まり方からして、よくわからないんですよ。期間は約2週間ということですが、どうして2週間なのか、2週間たったらなぜ学校に行っていいのか、その基準や理屈がまったくわかりません。それが混乱の原因となっています。わかりにくさが不信感を生んでいるんですよね。安倍首相自身も今回の休校措置は専門家の意見を聞かずに自分で判断したと認めているわけで、その判断の根拠は何だったのかということです。たとえば、このまま市中感染者が増え続けた頃に、「じゃあ2週間経ったので、学校に出てきてください」て言われても筋が通らないし、意味がわからないですよ。

 G 情報公開で大きなへまをやらかした感じですね。やり方が悪いです。何か隠しているという感じの情報の出し方をしているので、それが変な憶測を生み、メディアのミスリードにつながっていると思います。

 I NHKの番組で、検査をするのがいかに大変かということを報じていました。他国で採用されていて、それが信頼が置けるものであれば、輸入してでもやればよいと思います。世界中が注視しているなかで情報を公開していないというのはマズイ。日本は発展途上国のような扱いを受けていると思います。

 M 兄が台湾にいて、長男が日本人学校に通っているんですね。今春から東京に戻るため、年明けから3度ほど来日して受験していたのですが、台湾の日本人学校からは「日本に行ってきたのなら、当面は学校を休んで欲しい」と言われて、卒業式にも出られなかったということです。

 G 台湾の蔡英文総統は危機管理が評価され、支持率が上がっています。本来、台湾のほうが中国に対して日本より弱い立場にあるのですが、わりと早い段階でしっかりと中国からの入境制限を行い、感染拡大を抑えました。それに比べ日本は中国に対してふにゃふにゃした対応だったと思います。蔡英文と安倍晋三は明暗を分けたという印象です。

 M 学童保育の件で聞いた話なのですが、学童は通常は放課後の3時から夕方7時までですが、いまは朝7時からやっています。高島・福岡市長もその辺を一番気にしているようで、月曜日(3月2日)に、学童を訪問したことをFacebookで報告していました。イメージアップのためでしょうか。

 O 学童は弁当でしょうか。

 M そうです。それと、学童は人が密集していますよね。高島市長は学校の先生が学童に応援に行くということを言っていますが、どれだけ実行できているか気になります。

 G 休校の判断は、子どもの教育環境全体で考えると非常に重たいものがあります。学校が休みになると、学習塾も感染源となることを恐れて休まざるを得なくなります。かといって、ネットでの勉強は現状、あまり環境としてはよくない。

 N 授業が終わっていないという話ですもんね。

 G 塾が倒産したり合併したりするところが出てくると、子どもが本来あるべきものとは違ってくるという影響を結果的に受けるでしょう。単なる学校の休校という話ではないと思います。

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