トランプ2.0崩落回避の二条件

 NetIB-NEWSでは、政治経済学者の植草一秀氏のメルマガ記事を抜粋して紹介する。今回は「トランプに正しい指摘をする優れたブレインが存在するかどうか。そして、そのアドバイスを受け入れる器量がトランプにあるかどうか。この二点が『トランプ2.0』の行方を左右する」と論じた4月24日付の記事を紹介する。

 トランプ2.0が始動し、世界が振り回されている。米国の衰退は進行しているが米国の影響力は依然として大きい。

 トランプ大統領に常識は通用しない。前例に捉われることなく新基軸の政策を示す。そのなかには誤りも多い。誤った政策を提示して世界が混乱する。このコストは馬鹿にならない。

 ただし、一つだけ救いがあるとすれば、トランプ大統領が朝令暮改であること。よく言えば君子豹変。打ち出した政策が期待通りに機能しない場合、速やかに路線を修正する。これは美点と捉えておくべきだろう。誤った政策を無理やり押し通すよりははるかにダメージが小さい。

 トランプが提示している二つの政策。高率関税政策とFRBへの介入。想定を超える高率関税を提示した。世界の株式市場は大きく反応した。また、利下げを好むトランプ大統領は慎重に政策運営を進めるパウエルFRB議長に罵詈雑言を浴びせた。

 しかし、これらのトランプ政策に対して金融市場はNOを突き付けた。2016年11月の大統領選。メディアはトランプが勝利すれば米ドルと米株は暴落すると予言した。私は真逆の見解を示した。

 大統領選直後に上梓した
『反グローバリズム旋風で世界はこうなる』(ビジネス社)
https://x.gd/sZe10
表紙帯に
〈日経平均2万3000円、NYダウ2万ドル時代へ!〉
と明記して、内外株価の急騰を予測した。

 実際に内外株価は大統領選を契機に暴騰した。金融市場が〈反トランプ〉というわけではない。2016年はトランプ勝利を受けて株価は1年3ヵ月間の急騰を演じた。しかし、今回、トランプ大統領が提示した高率関税政策とFRBへの介入に対して金融市場は〈NO〉を突き付けた。米ドル、米株、米債券、のすべてが下落する反応を示した。いわゆる〈トリプル安〉。〈トリプル安〉が意味するのは〈キャピタルフライト〉=〈資本逃避〉である。

 経済運営上、最大の警戒を払う現象が〈キャピタルフライト〉である。米国経済に対する信認の崩壊を意味する。とりわけ深刻になるのは経常収支赤字国。経常収支赤字国は海外からの資本流入によって経済が成り立つ。米国は巨額の経常収支赤字国であるから海外からの資本流入によって経済が支えらえている。この経常収支赤字国における資本流出=〈キャピタルフライト〉は惨事を招く。この兆候が表れたためトランプは路線を修正した。

 貿易収支不均衡国に対する〈上乗せ関税〉実施を90日間凍結した。中国に対して145%の上乗せ関税率を提示したが、これについても引き下げる方針を提示した。他方、パウエルFRB議長に対して利下げを直ちに実施するよう求め、パウエル議長を「ミスター遅すぎ(Mr. Too Late)」と呼んだ。

 トランプ大統領によるFRB介入に対して金融市場はやはり〈キャピタルフライト〉の反応を示した。この市場反応を受けてトランプ大統領は「FRB議長を解任する考えはない」と軌道修正した。トランプ大統領は間違いを演じる。しかし、間違いを直ちに修正する柔軟性を有している。この柔軟性があるかないかは決定的に重要な点だ。

※続きは4月24日のメルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」「トランプ2.0崩落回避の二条件」で。


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